大晦日。2009年も今日でおしまい。そしてこのヘルスリゾート、アーユルヴェーダグラムでの6泊7日も今日で最後だ。
きっと退屈するに違いないとの予想を裏切り、瞬く間に過ぎ去った1週間だった。
毎年のことではあるが、2009年は特に、国内外問わず旅行も多く、2、3週間おきに異なる土地へ赴くなど、一段と濃厚な年だった。そんな一年を締めくくるのにふさわしい、静かな1週間を過ごせた。
飛行機どころか車にも乗らず、徒歩以外の移動をせず、化粧もせず、(図らずも)ネット世界にも関わらず、新聞も読まず、日常から隔絶された世界に身を置けたことを、有り難く思う。
今朝もまた、朝靄の中を歩く。いつもは一人で歩いていたが、今日は夫と歩調を合わせて、木々の様子などをゆっくりと眺めながら、歩く。
7時半の簡易セラピーに来てくれる男女のセラピスト。みな、ケララ州でセラピーを学んできたケララ出身の人たちだ。
毎朝の、簡易セラピー。部屋のベッドに腰かけて、目の洗浄してもらい、鼻にオイルを数滴垂らしてもらい、手足にオイルを塗ってもらっているところ。
「よい一日を」といいながら、小さく手渡された今日の花はプルメリア。ほんのりといい香りの、かわいらしい花。
さて、最後の朝食は「ドサ」と行きたいところだが、食べたことのないものを選ぶことにした。生地はやはりドサと同じだが、分厚くパンケーキ風に焼かれた「セット・ドサ」。これはまたこれで、おいしい。
朝食のあとは、ドクターから最後のコンサルテーションを受ける。そしてそれぞれの、健康に関する診断書のようなものを受け取る。
冒頭には、わたしの性格の傾向、仕事の内容、そして身体のコンディション(腰痛あり/少々ストレスあり/体重やや重め/一部皮膚にトラブルあり etc.)などが記されている。
そしてドーシャ(ピッタ・ヴァータ)が記され、ここ1週間でわたしが受けたセラピーの詳細が記録されている。
大切なのは、今後のライフスタイルのアドヴァイス。避けるべき食品、摂取すべき食品、エクササイズの方法などが箇条書きで記されている。
最後に、「可能であれば、年に一度はこのプログラムを受けることを勧めます」とある。言われるまでもなく、1年に一度は、こうして心身をリセットする機会を持ちたいと強く思う。
多くの人々は飛行機に乗って異国から来ているが、わたしたちは自宅から車で1時間で来ることができるのだ。身近にこのような場所が存在するとは、幸運なことである。
最後に、体調を整えるための薬を数種類、処方してもらった。いずれも「サプリメント」的なものなので、気軽に続けてみようと思う。
そして最後のランチタイム。濃厚なグリーンはホウレンソウのスープ。結局滞在中、同じスープが2度出たのはコリアンダースープだけ。あとは全部、異なるスープだった。
最後まで、飽きることなく料理を楽しめた。1週間という期間はちょうどよかったのかもしれない。これが2週間ともなると、「醤油フレイヴァー」が恋しくなっていたかもしれない。
レストランマネージャーが、2枚のメモを持って来てくれた。数日前、頼んでいた料理のレシピだ。忘れずにシェフに聞いてくれていたようで、うれしい。
素材と作り方が記されているだけで、分量は書かれていないが、むしろその方がよい。お菓子作りは別だが、料理をするときはたいてい、素材の分量を勘で決めるので、このほうがアレンジをしやすい。
味を思い出しながら、近々作ってみようと思う。
そもそもは、夫の心身を案じてのアーユルヴェーダグラム滞在であった。この1週間で、少しは体調が変わっただろうか。
減量は無理だったが、少なくともお肌は滑らかになって、気持ちもずいぶんリラックスしたように見受けられる。
1週間ぶりに口紅を塗って、近影。わたしはといえば、目に見えて変わったところは特にないが、少し肌が潤い、爪がつやつやになった気がする。
髪はシロダラのあと、シャンプーをして乾かしたばかりなのでぼさぼさだが、少し滑らかになった気もする。
気持ちの面では、夫もわたしもかなりリラックスした。ヨガの広義についてを簡単だが知ることができ、呼吸法(プラナヤマ: PRANAYAMA) を学んで心身を整える方法を学べたのは、実に有意義であった。
最後に池の鯉に餌をやる夫。かなり楽しんでいる様子である。なによりである。やがて、雨が降り始めた。まもなくチェックアウトの時間だが、しばらく、雨の降るさまを眺める。
そして夕暮れどき、チェックアウト。事故で手足を痛めたスイス人男性は、ここ数日のうちにずいぶんと元気になっていて、別れの挨拶にきてくれた。最初会ったときよりも、ずいぶん速く歩いている。
変化が目に見えてわかるというのは、すごいものだ。
荷物を車に積み込んで、アーユルヴェーダグラムをあとにする。再び雨脚が強くなって来た。
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大晦日は賑やかに過ごしたい、との思いもあって、今日のチェックアウトを決めたのだが、夫もわたしも、今は大騒ぎをする気分ではない。
予約していたレストランにはキャンセルを入れ、その後、年越しのパーティを過ごす予定だったソーシャル・クラブへも、行かないことにした。
降りしきる雨。2009年のさまざまを洗い流して、新しい年を迎える。
途中でスーパーマーケットに立ち寄り、食材を買った。今夜は軽めの食事を作ろう。
そして、やさしげなわが家で、二人静かに、新しい年を迎えよう。
■アーユルヴェーダグラムについて
このようなヘルスリゾートは、本場ケララはもちろんだが、バンガロール郊外にもいくつかある。アーユルヴェーダグラムは、決して優雅でも洗練されているわけでもないが、かなり正統なセラピーが受けられる場所だと思う。
コストも比較的リーズナブルだ。参考までに、わたしたちがこの一週間のプログラムで費やしたのは、二人で日本円にして約20万円弱。一人での滞在だと、やや割高になる。
インドにしては、高いと思われそうだが、セラピーの充実度などを考えると、決して高くはない。
ただ、このアーユルヴェーダグラムは、リネン類などが古びていたので、自分たちのバスタオル、タオル、枕、ブランケットなどは持参した。
シャワールームの湯量が少ないなど(インド家庭では一般的なギザと呼ばれる湯沸かし器が使用されている)、先進国の快適な暮らしに慣れている人には、不都合に感じることも多いだろうが、それさえ受け入れられれば、心地のよい場所である。
ホームページには日本語も用意されているので、興味のある方は、下記のサイトを参照されたい。