わたしたち夫婦は、年末12月25日から31日まで、バンガロール郊外にあるヘルス・リゾート、アーユルヴェーダグラム (AYURVEDAGRAM) で過ごしていました。
朝、6時半に起床。夜が明けたばかりの、朝もやに包まれた庭を散歩する。1周を回るのに5~7分程度だろうか。ほどよい広さの敷地である。庭の緑がしんと静まり返り、肌寒い空気が心地よい。
アヒルたちの集う一画は、しかし静寂が破られ、けたたましい鳴き声が響き渡る。アヒルは蛇を寄せ付けないために飼っていると聞いた。先日訪れたとき、蛇を見た。
この緑豊かな場所にあって、蛇の一匹や二匹、いてもおかしくないだろう。
しかしアルヴィンド(夫)には秘密にしている。彼は蛇が大嫌いで、「ここ、蛇いないよね?」としきりに気にしていたのだ。蛇の存在を知ったら、来なかったかもしれない。
一方のわたしは蛇が好き、というわけではないが、干支が巳年ということもあり、ということが理由になるのかどうか定かではないが、特段嫌いではない。
子どものころは田舎の農道などで見つけた蛇を手づかみにして、放りなげたりもしていた。野蛮である。
このピンクの花は、 バナナの花 だ。食用にもなるとのことで、アーユルヴェーダ的な効能もあるらしい。夫の体質にはこれを食するとよいとのことなので、調理法を調べなければ。
ウォーキングのあと、軽く足湯をして身体を温め、ヨガのクラスへ。ヨガというよりは、やさしい体操のようなエクササイズ。
この施設には、身体を悪くした人々が治療のために訪れているため、なるたけ多くの人が参加できる体操のようなヨガを取り入れているようだ。
ゲストの8割が外国人。今は合計20数名が滞在しているとのこと。主には欧州からの来訪者が多いようである。日本人の姿も見られる。
バンガロール郊外にはサイババのアシュラムがあることから、サイババに帰依する人が、アシュラム行きの前後に訪れる場合も少なくないようである。
さて、このアーユルヴェーダグラムに滞在するにあたって、いくつかのプログラムがある。成人病対策コース、体質改善コース、高齢ケアコース、減量コースなどなど。
わたしたちは、ドクターに、最も一般的な Rejuvenation(活性/若返り)のコース を勧められたので、それを選んだ。
食事療法が必要な人は、あらかじめ食べられる料理が制限されているが、わたしたちは、特に際立った疾患を抱えているわけではないので、ブッフェで出される料理を自由に食することができる。
まずは キュミン(クミン)シードが煮出された白湯 を飲む。個性的な強い香りが特徴のキュミンは、エジプト生まれのスパイス。パウダーとシード(種)の両方がある。
食欲をそそる芳香と、かすかな渋み、苦みがあり、消化促進、下痢、腹痛、胃痛などに効果を発揮。解毒作用も備えている。
白湯をのんだあとは、数種類の新鮮なフルーツを味わい、温かな料理へ。
ブッフェには南インドならではの米粉で作られたパン 「イドゥリ」 や、さらさらとしたカレーのような野菜煮込みの 「サンバル」 、スパイシーなさっぱりスープ 「ラッサム」 などがあったが、わたしは 好物のドサ を焼いてもらうことにした。
ドサとは米粉と豆粉を発酵させたもので作られた薄いパンケーキのようなもので、ぱりっとした歯ごたえが美味である。
通常、たっぷりのオイルやギー(精製バター)で焼かれるため、油っこいのが玉に瑕なのだが、ここのドサは油脂が控えめでとても食べやすい。うれしい。
食後にコーヒーが飲めるのも、コーヒー好きなわたしには、またうれしい。
いつも飲むブラックコーヒーではないが、 南インド産の抽出コーヒー(デコクション)に濃厚なミルクが入ったミルクコーヒーは、風味がよく、お気に入りだ。
部屋は、ヘリテージ・デラックスと呼ばれる、ちょっと快適な部屋を選んだ。とはいえ、造りはシンプルで、古びている。リゾートホテルのような快適さは望むべくもないが、しかしここは療養所である。贅沢は敵だ。
わたしにとっては、 机があるのが非常にうれしい。どんな宿でも、机があると気持ちが落ち着く。
インターネットは案の定、つながらないが、ともあれわたしにとっては、ノートなり、コンピュータなりに、自分の考えを綴ることができるのは、精神衛生上、極めて大切なことなのだ。
■ドクターのコンサルテーション。セラピー、そして呼吸法のクラス
さて、10時ごろ、ドクターのコンサルテーションを受け、ここ数日のプログラムを立ててもらう。どのようなトリートメントを受け、どのような薬を処方してもらうかを、判断してもらうのだ。
前回、一日体験に訪れたときのように、延々と問診を受けたあと、脈診、血圧測定、そして触診が行われる。
触診は、額や目、鼻、舌、耳や耳の裏など頭部全体のチェックをしたあと、首筋、のど、背中、そして腕の肌の様子、手足の指の一本一本、指の付け根の具合などを細かく観察される。
その後、全身オイルマッサージを受けるべく、トリートメントルームへ。午前中は二人のセラピストが全身をシンクロナイズしながらマッサージしてくれる「アビヤンガ」である。一つの動きを11回繰り返しながら、全身をくまなくマッサージしてもらう。
その後、12時15分からは呼吸法のクラス。両方の鼻から正しく呼吸をすることによって、精神だけでなく、身体の調子をもコントロールできる、簡単にして重要なセラピーだ。
チャクラ(一番上の写真)を意識しながらの、呼吸法も教わる。身体をリラックスさせることがいかに大切かを、初日にして強く認識させられた。
いくつもある呼吸法を、この滞在期間で覚えられるとは思えないので、帰りにDVDを買うことにした。朝のヨガにせよ、呼吸法にせよ、今後も日常的に続けたいと思っている。
■アーユルヴェーダグラム滞在中の、わたしのプログラム
以下はわたしの一日のプログラムだ。プログラムはもちろん個別に作成される。これから実質5日間、このプログラムに沿った規則正しい暮らしを行う。時間に余裕があると思っていたが、意外に予定が詰まっている。
・6:00-6:45 起床、ウォーキング
・7:00-7:30 朝の簡易セラピー
・7:30-8:15 ヨガ・エクササイズ
・8:30 朝食
・11:00 セラピー(オイルマッサージ)
・12:15-1:00 呼吸法クラス
・1:00-2:00 昼食
・3:15-4:00 瞑想(メディテーション)クラス
・4:30-5:30 ウォーキング
・5:30 セラピー(局所治療)
・7:30-8:30 夕食
■充実のランチに感嘆。瞑想のクラスで睡魔と闘う。
さて、朝食をたっぷりとったはずなのに、すでにしっかり空腹だ。ランチをとるべくダイニングへ赴く。
まずはパンプキンのスープ。これが、濃厚ながらも胃にやさしい柔らかな味で、とてもおいしい!
パンプキンだけでなく、ニンジンやセロリなど何種類もの野菜が入っているとのこと。一方、クリームなどは使われていないようで、カロリーは低そうである。レシピを教わりたいくらいだ。
ブッフェの野菜料理もヴァラエティ豊か。中央のカトリ(ボウル)に入っているのは、ダル(小さな豆の煮込み)。その上にあるのがチャパティ。全粒小麦粉で作られたヘルシーなパンだ。
ダルとチャパティの組み合わせは、日本における味噌汁とごはんのようなもの。食事の基本形である。
時計回りに、米飯はケララ地方ならではの、大粒の赤い米によるごはん。粘り気がなく、さっぱりとしている。次はナスのカレー。刺激のない、マイルドなスパイシーさで、非常においしい。
次はトマトの炊き込みご飯。そしてインゲンとココナッツのソテー。料理にココナツオイルやココナツの繊維を用いるのは、南インドならではだ。
そして最後が、ニンジンやダイコンなどを小さく切った野菜煮込み。いずれも味付けが上品で、とてもおいしい。
食後はライブラリーで本をパラパラとめくりつつ過ごす。そして3時15分より、今度は瞑想のクラス。このクラスは、睡魔との闘いであった。瞑想をしに行ったのか、昼寝をしにいったのか、よくわからない。
■夕方のセラピーと、充実の夕食。満ち足りた一日の終わり
4時はティータイム。部屋にチャイ(ミルクティー)を運んで来てもらい、本を読みながらのひととき。
そして5時半からは夕方のセラピー。最近でこそずいぶんよくなったが、そもそも腰痛が激しかったことから、腰まわりの集中トリートメントだ。
うつ伏せになった腰の上に、土手のような囲いを丸く築き、そこにハーブが配合された温かいオイルを注ぐ。オイルが冷めたら取り除いて、温かいオイルをいれることを繰り返す。あっというまに爆睡してしまう。
トリートメントを終えて外に出れば、もう日が暮れている。部屋に戻って、ゆっくりと今日の出来事を記しておこう……などと思ううちにも、7時半で夕飯の時間だ。
噂では、時間を持て余す、暇で仕方がないとのことだったので、大量の本やお絵描きセットなどを持って来ているのだが、今日はそんなに時間を持て余すという印象はなかった。
夕飯はまた、想像以上に豊か。北インドのニューデリー出身の夫は、南インドの料理は口に合わないものが多いと懸念していたが、喜んで食べている。特に今日は、夫の故郷である北インド的な料理があったせいかもしれない。
まずは野菜スープ。クリアスープにコリアンダーや豆、ニンジンなどの超みじん切りがたっぷりと入ったもの。ランチのスープとはまた異なる、しかしこれもまたヘルシーなおいしさだ。味付けは極めて薄いが、野菜の風味がしっかりと味わえてよい。夫は喜んでおかわりをしている。
ブッフェは時計回りにダル、そしてカッテージチーズのコフタ(揚げ物)を煮込んだもの、野菜たっぷりのココナツカレー、ライス、そしてゴビ・マンチュリアという、インド的チャイニーズであるところのカリフラワーのスパイシーフライ。
肉類がなくても十二分に満足できる、美味な夕餉であった。これだけヴァラエティが豊かであれば、しばらくヴェジタリアンが続いても問題ない。
問題ないというよりは、これほど毎食、栄養のバランスがとれた食生活は、贅沢だとさえ、思える。
一日に数回、個別に処方された薬を飲む。主には、自分の身体のドーシャを整えるための薬だ。
ちなみに夫のドーシャは以前と変わらず「カファ」だったが、わたしはピッタが強くなっており、「ピッタ・ヴァータ」の体質だと診断された。
アーユルヴェーダの薬には副作用がないとのことなので、よほどの痛みなどがない限りは薬を好まない傾向にあるわたしも、気軽に服用している。
夜は10時に就寝。なんと健康的なことだろう。さて、明日は、どんな一日が待っているのだろう。楽しみだ。
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