本日、バンガロール市東部郊外にあるホワイトフィールドから、更に数キロ走った農村地にある「アーユルヴェーダグラム AYURVEDAGRAM」を訪れました。
昨年末、夫と二人で1週間滞在した、あの「アーユルヴェーダ道場」です。
本当は、母にも1週間ほど滞在をしてもらいたいと思っていたのですが、簡素で薄暗い宿泊施設であることを説明したところ、母が宿泊に抵抗を示しました。
それもあって、近場(インディラナガール)にある同系列の診療所に通っていたのでした。
しかしながら、わたしはどうしても、ドクターのマンモハン先生に母を診てもらいたく、一日のコースを予約して赴いたのでした。
朝、7時半に出発。
ホワイトフィールド周辺は、昨今、開発が進んでおり、テックパークなどビジネス複合施設やアパートメントビルディングが次々に誕生。ラッシュ時の渋滞が深刻です。
数十キロの移動に1時間以上もかけて、ようやく到着。ここは道中の喧噪が夢の如く、長閑な楽園です。
ドクターの診察まで、30分ほど時間があるということだったので、まずはカフェへ。
1日コースには朝食はつかないのですが、お腹が空いたので、別途料金を支払って朝食をとることに。
軽くフルーツを数種類と、毎度おなじみ、南インドの典型的な朝食のひとつであるドサを注文。ここのドサは油脂をほとんど使っていないので、胃にもたれずさっぱりとした食後感です。
食後はサウスインディアン・コーヒーを。コーヒー牛乳風の、濃厚ながらマイルドな飲み物。砂糖を入れなくても、牛乳のほんのりとした甘みが利いていて、おいしいものです。
コロンビア・エイジア・ホスピタルでの健康診断の結果や、先だって救急車で運ばれた際の検査結果、MRIの結果などもすべて持参し、診てもらいました。
マンモハン先生は、カルテを入念にチェックし、的確に、ゆっくりと、アドヴァイスをしてくれます。
いくらアーユルヴェーダのドクターだからといって、西洋医学の薬の処方などを否定することは決してありません。
コレステロールの薬やアスピリンの有効性についても、具体的に説明してくれました。母がなぜ、それらを摂らねばならないかという理由も教えてくれるので、非常に勉強になります。
たとえば、アスピリンは、血液を薄め、血液の流れを速やかにする効果がある一方で、血液の凝固を弱めることから、出血が止まりにくくなるといった副作用があるということも。
「アスピリンを常用している時には、出血に気をつけて」
と言われて、初めて知りました。
また、膝の不具合についても、整形外科医の立場からの意見を教えてくれると同時に、老齢の人が手術をする際のリスクについても、丁寧に教えてくれます。
彼曰く、膝が痛くて立てない、歩けない、常に激痛が走るといった、生活に著しい支障が現れた場合を除いては、外科手術は「最後の手段」と考えた方がいいとのこと。
本来人間の体内にはない「異物」を移植するに際し、それを身体に同化させるため、普段とは異なる活動が要される。
歳を重ね、免疫力が落ちている人にとって、その活動にはそれなりの負担がかかる。場合によっては、身体の機能が弱ってしまう可能性などもあるとのこと……。
そのような道理は、すでに感じてはいたことですが、マンモハン先生の理路整然とした説明を聞いていると、改めて「なるほど」と納得します。
「現代は、物事をすばやく解決することが優先されています。だからすぐに治る手術を選ぶ人も多いのです」
「歳を重ねれば、人間の身体は衰えていきます。およそ40歳を境に、自然のままに任せれば、衰える一方なのです」
「その衰えを、無理に若いままで維持しようとしても、それは難しいこと。不具合を調整しながら、劣化していく身体を受け止めて付き合うことが大切」
「化粧品は、なるたけ自然のマイルドなものを。老化した肌は、赤ちゃんの肌と同じ。繊細なのだから、化粧品を塗りたくったのでは、肌を痛めます(母が今年に入り、肌を痛めたことをして)」
「膝のためには、痩せた方が確かにいいけれど、本来は軽い運動で痩せるのが理想的。しかしそれは膝に負担をかけることにもなり、難しいところ。無理は禁物」
「脚が痛い、と思ったら、それ以上歩かない。その日その日の、自分の調子に合わせて運動をする。決して時間などのノルマを決めない。自分の身体の声に耳をすませなさい」
「痩せた方がいいからといって、急ぎの減量は禁物。歳をとったら必要な栄養を確保しなければ、身体の免疫力が落ちることになる。栄養のバランスが取れた食生活を」
「お菓子や油脂物を控え、野菜と果物をたっぷりと。冷たい物は摂らないように。冷蔵庫にある飲食物を、そのまま口に運ばない。身体を温めることが大切」
「かかりつけの主治医を確保しておくこと。定期的な健康診断を行い(ECGやMRIなど)、自分の身体の状況を把握しておくことが大切」
……といった具合に。以上は、マンモハン先生から母へのアドヴァイスの一部です。しかし、母に限らず、遍く人間に該当するアドヴァイスも多々あり、改めて勉強になります。
ライフスタイルの在り方や、普段心がけるべきことなどを、ゆっくりとわかりやすく説明してくれたあと、今日一日のプログラムを組んでくれました。
また、アーユルヴェーダの薬とマッサージオイルの処方箋も準備してくれましたので、これらは帰り際に購入します。
血圧測定などをすませたあと、まずはヨガ(エクササイズ)のクラスへ。他の参加者はありませんでしたので、インストラクターが母のために、膝によいエクササイズを教えてくれます。
その後、簡単な呼吸法についても、「マンツーマン」で丁寧に教えてくれました。自宅でも簡単にできる内容なので、日本に帰国してからも、母には励行してもらいたいものです。
そのあとは、お待ちかねのオイルマッサージ。二人の女性によるアビヤンガ(シンクロナイズド・マッサージ)を受けます。
本日は母の付き人状態のわたしですが、もちろんマッサージは受けます。マッサージのあとは、スチームバスでオイルを身体に吸収させます。これでほかほかに身体が温まるのです。
トリートメントのあとは、腑抜けのようにリラックス。ソファーでしばし茫然としたあと、ダイニングでランチです。
南インドのケララ州のヴェジタリアン料理です。さまざまな野菜が丁寧に調理されており、マイルドで、とてもやさしくヘルシーな食事なのです。
昨年末に滞在した折は、わたしも夫も、1週間も「肉なし、酒なし」なヴェジタリアン生活に耐えられるのか? との疑念があったのですが、料理が美味で、むしろ太ったくらいでした。
もっとも、ここの料理をおいしいと評する日本人は非常に少なく……。
アーユルヴェーダグラムを訪れる日本人駐在員夫人や日本人旅行者は多いのですが、料理が口に合わなかったとの話をよく聞きます。
今まで「おいしいよね!」と話が合ったのは、日本人では二人だけ。二人とも米国生活が長く、夫が日本人ではなく、お料理が好き、というところが共通しています。
従っては、わたしがここに「料理がおいしい!」と言い切っていても、大多数の日本人の口には合わない(物足りない?)かもしれませんので、念のため。
食後は、庭を散歩したり、ライブラリーでくつろいだりの30分ほどを過ごし、最後に瞑想のクラスへ。
間違いなく、寝るな。
との予想通り、目を閉じたら速攻で睡魔が襲ってきましたが、途中からは起き上がってマントラを唱えたりと、取り敢えずは覚醒し、身体全体の調子を整えます。4時には本日のプログラムが終了。
最後に再びダイニングを訪れ、チャイを飲んで一日を締めくくります。
「その服、どこで買ったの? わたしも欲しいわ!」
と、女性が声をかけてきました。おなじみANOKHIの部屋着です。
このデザインが気に入っていて、異なる柄をあれこれと部屋着にしているのです。ANOKHIについてもご紹介したいと思いつつ、まだでしたね。
それはさておき、トロントから訪れているというインド系カナダ人の彼女。毎年、ここを訪れていて、今回で9回目なのだとか。
15歳の頃より、原因不明の右太ももの痛みに苛まれていて、25年間、常時、痛みを抱えて生きていたとのこと。
結婚して、子どもを二人産んで、しかし状況はよくならず、仕事を続けることもできず、結局原因不明の痛みを抱え続けて25年経ったころ。
10年ほど会っていなかった実兄とあるとき再会したところ、
「ケララ州のアーユルヴェーダの施設に、すぐに行きなさい」
と、即、予約してくれ、航空券を手配してくれたとか。
そのとき、ケララで出会ったのが、当時かの地で勤務していたマンモハン先生だったそうです。
マンモハン先生の、ぐいぐいと太ももを押しながらのマッサージによって、痛みはみるみるうちに軽減したとか。彼女は3カ月間、そこに滞在して、身体のメンテナンスを行ったそうです。
その他のさまざまな疾患も、少しずつ癒され、見事に体調が「通常」に近づいていったそうです。
以来、毎年一度、1カ月はここを訪れて「デトックス」するのだとか。
「夫も息子たちも、年に一度は必ずインドへ行きなさいというのよ。わたしが元気になるのがわかるから」
「マンモハン先生の言うことをきちんと守って、処方された薬を飲んでいたら、間違いないわ」
彼女のように、長年抱えていた疾患が治った人にとってみれば、信頼できるドクターは最早、神のような存在なのかもしれません。
結局、具体的な疾患名はわからないままであるものの、彼女曰く、太ももの神経が「ねじれていた」ような状況だったとのこと。
「ねじれていたものが、トリートメントによってほどけた」
と彼女は表現していました。アーユルヴェーダの効果には、もちろん個人差があるでしょう。しかし試してみる価値は大いにあると、今回もまた改めて、思ったのでした。
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「今回、インドで生まれ変わった気がする」と言っている母。
日本に帰国してからも、ドクターの提言を心に、なるたけ元気で生活をしてほしいものだと、願わずにはいられません。
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