ヤズダニ・ベーカリーで故人を偲んだ後、いつも通りに、スターバックス・カフェへ。鋭い日差しが照りつける蒸し暑い日、フォート界隈をあるいたあと、ここで涼を取るのが常だった。
2012年、インド第一号店として開業したこのスターバックス。久しぶりに訪れれば、内装は以前からは一新している。個人的には、昔ながらのインド風情が生かされた雰囲気が好きだが、このポップに明るい感じもまた、悪くない。
歳月は流れて、情景は変わる。
その後、インドのデザイナーズ・ファッションを扱う「ENSEMBLE」へ。1987年、インド初のマルチ・デザイナー・ストア(日本でいうところのセレクト・ショップ)として、ボンベイの歴史を刻む古いビルディングに誕生したこの店。創業以来、インドのトレンドを築くデザイナーたちのファッションを提供している。
最近のトレンドをチェックした後、コラバへタクシーを走らせる。我々夫婦が2008年から2年間、暮らしていたのは、コラバ地区の南側、カフ・パレードという住宅ビルディングが立ち並ぶエリアだった。
ワールド・トレードセンターの向かい、タージ・プレジデントホテルに隣接する利便性の高い場所に住んでいたが、夏は蒸し暑く、モンスーンの時期の湿気たるや壮絶で、さらには漁村からの魚臭もパンチが効いており、なかなかにタフな環境でもあった。
しかしながら、ムンバイの底知れぬ魅力に惹きつけられていたわたしは、暑い最中もしばしば街歩きを楽しんだものである。コラバ界隈は、ゆえに懐かしくもなじみの場所なのだ。
ところでインドのデザイナーズ・ブランドは、年々、驚くべき速度でその数を増やしている。トレンドを見極めるのも困難な昨今だが、ソーシャルメディアのアルゴリズムのおかげで、自分の好みを反映したブランドの広告が、InstagramやFacebookに飛び出してくれるので、そこからブランドを知ることもできる。
この日、コラバで真っ先に向かったのはLOVEBIRDS。昨年、バンガロールのブティック「シナモン」で、ポルカドットのブラウスを見つけて以来、気に入っており、何枚か購入した。個性的なデザインや着心地のよさの背景には、インドの職人らによる丁寧な手作業、良質な綿素材などを用いるなど、エシカルな側面がある。
ブティックの入り口には、ムンバイを象徴するカラスの姿。店内には猫がまどろみ、なんとも穏やかな空間。気に入ったデザインが複数枚あったが、無駄を出さない目的もあるのだろう、サイズのストックが少ないので、ジャンプスーツを1着のみ、購入。
ちなみにインドのデザイナーズ・ブランドほか、多くのブランドが、店で顧客を採寸し、それぞれのサイズにあった服を作ってくれる。日数を要するが、自分にぴったりのサイズを作ってもらえるところも、インドのよさだ。
……というわけで、久しぶりに「インドはステキなものであふれている」略して「インステ」のご紹介でした。ファッションやコスメティクスなど、紹介したいブランドがあれこれあるのだが、優先順位の下位になりがち。ときには軽やかな話題も織り交ぜていこう。
◉LOVEBIRDS
https://lovebirds-studio.com/