昨日は夫と共に、NURAでの健康診断の結果を携えて、アーユルヴェーダ診療所へ赴いた。アーユルヴェーダとは、5,000年以上の歴史を持つインドの伝統医学。サンスクリット語のアーユス(生命、長寿)とヴェーダ(科学、知恵)がその語源だ。人間を精神面、肉体面からホリスティック(総合的)に捉えつつ、健康的な状態に導く。ここカルナータカ州のお隣、ケララ州がアーユルヴェーダ発祥地で、無数の診療所や関連施設がある。バンガロールにも、大規模な病院や滞在型の施設、診療所などが多々ある。
わたしは約15年前に、視察旅行でケララにある診療施設を数カ所訪れた。当時は、欧米、特にドイツ語圏からの患者を受け入れているところが多く、アーユルヴェーダと歯科治療がパッケージになったメディカルツーリズムのシステムも構築されていた。数カ月から半年と、長期に亘って滞在する患者も多い。西洋医学では完治できない疾患や後遺症(精神疾患含む)に苦しむ患者を受け入れ、母国の主治医とオンラインでカルテを共有しつつ、治療を施す様子に感嘆したものだ。
我々夫婦は、2009年の終わりから10年以上に亘り、毎年年末年始に、バンガロール郊外のホワイトフィールドにあるAyurvedagramという療養リゾートに約1週間滞在、心身のデトックスをして新年を迎えてきた。アーユルヴェーダは、専門医による問診、脈診、触診により、個々人の体質を見極めてもらう。オイルマッサージや生活習慣、食習慣の改善、生薬の処方などにより、健全な心身状態へと導かれる。わたしの『インドでの食生活と健康管理』のセミナーでも、冒頭で詳しく言及している。
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わたしは中学時代にバスケットボールで腰痛を発症して以来、久しく悩まされてきた。20代、30代と悪化の一途をたどり、米国在住時は整体、カイロプラクティック、鍼灸などさまざま試した。しかし決め手となる治療法には辿り着けず、年に数回、ぎっくり腰のような状態になった。40代に突入後、将来を懸念しつつのインドに移住。しかし、バンガロールに暮らし始めた直後にアーユルヴェーダのオイルマッサージを受け始めてから、わずか半年程度で、痛みに苛まれることがなくなった。
しかし去年の後半から、更年期や老化に伴う、異なる原因による腰痛が再発している。デスクワークも不調の一因だ。現在は、カルシウムやヴィタミンDを意識的に摂取し、軽い筋トレも始めるなどして改善を試みている。
わたしの母もまた、アーユルヴェーダの恩恵を受けたひとり。2010年夏、膝を痛め、日本のドクターからは、手術以外の治療法はないと言われ、ヒアルロン酸による応急処置を受けていた。母から手術をするとの旨、電話で聞いたとき、まずはアーユルヴェーダの治療を受けてから考えて欲しいと伝えた。バンガロール空港に降り立ったときの母は、杖をつき、歩き方も覚束なかった。しかし、約1カ月足らずの生薬による治療で完治。杖なしで歩けるようになった。その後、2014年に来訪した際に数週間のトリートメントを受けたきり。10年が経過し、85歳になる現在も自力で歩けている。
食生活にしても然り。わたしはインドに移住して以来、極力、素材を丸ごと食する、すなわち「ホールフード(whole food)」を調理して食べてきた。野菜はなるたけオーガニックのものを。調味料はシンプルに、素材の味を生かす。
母の滞在中には、母にもそのような食生活を勧めてきた。幕内秀夫著の『粗食のすすめ』も読んでもらった。コスメティクスなども、インドの自然派プロダクツを送るなどして、かなりインド化している。また食材は、過去20年近く、福岡の産地直送の有機野菜を扱う宅配サーヴィスを利用している。そのおかげか、85歳になる今も、「薬を1錠も飲むことなく」一人で生活している。もちろん、視覚や聴覚に衰え、物忘れはあれど、それは誰もが直面する老化であり、特筆すべき問題ではない。
家族以外の友人知人たちも、アーユルヴェーダに救われた人たちは数多くいる。ありがたいことだ。
この写真は、診療所の一隅に祀られていたアーユルヴェーダ(ヒンドゥー医学の神様)であるダンヴァンタリ (Dhanvantari)。ヴィシュヌ神の化身でもある。
過去15年に亘ってわたしたちの心身を診てくれているドクターが、アーユルヴェーダグラムを辞めて、故郷のケララに拠点を移されたことで、わたしたちの年中行事も途絶してしまった。ドクターは1カ月に1、2回、この診療所にいらっしゃることから、約2年ぶりにドクターからの診察を受けることにしたのだった。
NURAの検査結果を見てもらいながら、さまざまな提言を受ける。ドクターは決してアロパシー(西洋医学/対症医学)を否定するわけではなく、症状に応じて両方の選択肢を提言してくれるところが、個人的に気に入っている点でもある。パンデミック以降、ここ数年はデトックスをする機会がなかった。今年の後半は時間を作って、ケララ州の療養所へ赴き、久しぶりに全身をリフレッシュしようと決めた。
診察を終えたあと、お気に入りのCINNAMONを訪れ、中庭のカフェでランチ。わたしが先日のモールで食したパスタとほぼ同じものを、夫が注文。昔から、食の嗜好が似通っているのだ。食事のあと、ブティックですてきなシャツを見つけた夫はショッピング。さて、来週は海を越えて、未踏の国へ旅に出る。そろそろ準備を始めなければ。