今でこそ、ファストファッションの流入や欧米ブランドの進出により、化繊の衣類も普及しているインドだが、わたしが2005年に移住した当初は、綿や絹、麻、竹などの天然素材を用いた衣類が主流だった。
この20年の間にも、インドのファッション・シーンは変容し続けている。詳細は割愛するが、ともあれ伝統的なテキスタイルや手工芸品を尊重しようという趨勢は保たれていると感じる。
わたしはインドに暮らしはじめて以来、食品だけでなく衣類もまた、自然志向に移行した。化繊の衣類を着ると、皮膚の呼吸が苦しくなる気さえする。特に夏場は木綿に限る。バンガロールの夏は短く、年間を通して過ごしやすいが、2008年から2年間、ムンバイと二都市生活をしていたころは、ムンバイ宅で木綿の服以外を着ることはほぼなかった。
木綿服を好んで着るようになったのは、わたしだけではない。我が母も同様だ。かつて母は、しばしばインドを訪れ、3カ月ほど滞在することも何度かあった。そのたびに、インドの廉価で着心地のよい木綿服を購入し、日本の夏の蒸し暑さを凌いでいた。2014年を最後に過去10年は、母はインドを訪れていないものの、わたしは一時帰国のたびに、涼しげな服を選んで持ち帰っている。
昨今では、インドも物価が上がり、対して日本の円安の傾向もあって、決してインド服が割安だとは言い難い。それでも日本に比べれば、木綿の服を、種類も豊富に廉価で入手できる。
過去10年あまり、夏の暑さが加速しているとの印象を受ける日本。母とは数日に一度、ヴィデオ電話でやりとりをするが、家に冷房が入っていてなお、暑さが伝わる。ちなみに夏の間は、母は概ね、インドの木綿服を着ている。前回の一時帰国時には、あまり服を買って帰らなかったので、久しぶりに郵便で送ろうと、先日、買い物に出かけた。
バンガロールにも、ハンドブロック・プリント製品、木綿、絹などの衣類を扱う昔ながらのブランドの店舗がいくつかある。その多くが、北インドのジャイプールを拠点としており、カラフルで魅力的なデザインが多い。
まずはAnokhiで買い物をするつもりで出かけたが、Leela Palace Hotelに併設するショッピングアーケードが大改装中で、Anokhiが移転していた。他店舗に訪れるには距離がありすぎるので、やむなくインディラナガールのFabindiaとThe Shopの2店舗に立ち寄り、着心地よく涼しげな服を選んだ。本当ならば、実際に試着してもらうのが一番だが、そうはいかない。わたしが試着して、着心地を確認した上で購入する。
いずれも、昨今のデザイナーズブランドに比べれば、極めて手ごろな値段だ。各ブランドの歴史的背景など、その特徴までも記したいところだが、長くなりすぎるので控える。昨今のインド。魅力的なファッションブランドは無数にあるが、バンガロールに店舗を持つ店の中からいくつかを、以下、参考までに紹介しておく。
【ブティック/複数の高品質なブランドを販売】