先週後半は、諸々立て込んでいたので、日曜日は家で静かに過ごす予定だった。しかし、布の展示会の写真を眺めているうちに、「もっと、じっくり見たい……」という気持ちが高まってきた。展示会の様子を捉えた写真は、すでに何枚もアップロードしている。ゆっくり巡ったかのように思われそうだが、ざっと回っただけで、じっくり吟味していなかった。
実は開会式には、我が夫も来てくれていた。しかし彼も、ランチのあとは、すぐに帰宅。そもそも、彼は布に関心があるわけではないので、それはそれでいいのだが、せっかくの日曜日だし、一緒に行く? と誘ってみた。久しぶりのデートという設定で、出かけることに。
会場は、初日と少し異なるレイアウトで展示しているブースも多々あり、前面に出されている商品構成も異なっていることから、新鮮な印象だ。
アッサム織りは、やはりいずれも美しい。欲しいと思うサリーもある。しかし、欲しいと思うものを思うがままに買っていたのではきりがない。「もんのすごく気に入った」と思うもの以外は買うまいと決めている。特にサリーに関しては。
だからいつも、「もんのすごく気に入った」と思えるものに出合いたいような、出合っては困るような、サリーとわたしは、そういう間柄なのである。そしてこの日。……出合ってしまった。
【VASTRABHARANA 布の展示会 01】の1枚目で紹介したSourav。彼の写真を最初に載せたのは、もちろん彼がハンサムな青年だったからということもあるが😸、彼の手掛ける作品がとてもすばらしかったからだ。
ハイダデラバード拠点でSOURAV DASというブランドを展開する彼。この日はお母様とご一緒だった。といっても、ご家族の家業が織物職人だというわけではないという。彼自身が、インドの伝統的なテキスタイルを学び、自分自身で考案した精緻で洗練されたデザインを、バラナシ織りなどで紡ぎ出している。
たとえば、彼が両手に持っていた2枚の作品は、ムスリム(イスラム教)の建築物に使われるモチーフを、布に託したとのことだった。ゆえに、個性に満ちている。他にも、渋みのある金色の布は、ターメリックとインディゴを混ぜ合わせて染めた……と話していた。
さて、日曜日。会場を巡り眺めつつ、彼の売り場に目をやった瞬間、先日は目に入らなかった1枚のサリーに目が釘付けになった。
……す、すてき!
滑らかな黒いシルクに、金糸で織られた見事な紋様。これは宝相華ではあるまいか。話を聞けば、まさにその通りである。
2020年。世界がパンデミック時代に突入した際、ミューズ・クリエイションは、新たなテーマを掲げてオンライン・イヴェントを開催した。そのときのモチーフとなったのが、まさに宝相華である。詳細は写真を添付しているので、ご覧いただきたい。
今年の4月に訪れたエジプト。そこからインド、中国を経て、日本へ辿り着いた宝相華。このモチーフに心をひかれずにいられようか。いや、いられない。
なにしろ、その織りが精緻で見入る。夫からの賛同も得たことから購入した。今年のディワリはこのサリーだ。うれしい。早速、テイラーにブラウスを作ってもらうべく、アポイントメントを入れた。
ところでSouravは、わたしが初日に展示していた着物や帯にも強い関心を示していて、ぜひコラボレーションをしましょうと提案してくれた。どんな形になるかわからぬが、好みが一致していることは間違いない。近い将来、実現させたい。
夫もまた、伝統的なチカンカリ刺繍のクルタを購入した。こちらは、この日、採寸を済ませたので、縫製後、自宅まで配送してもらう手配をすませた。
買い物のあとは、カニンガム・ロードのHatworks boulevardにあるレストラン、Trippy Goat Cafeへ。2005年にバンガロールへ移住した当初、わたしたちはカニンガム・ロード沿いのアパートメントに住んでいて、彼のオフィスは、このHatworks boulevardのすぐ隣だった。2人でここを訪れるのは、何年ぶりだろう。いや、十数年ぶりではなかろうか。
19年前。当時のことを思い出すと、胸が締め付けられるような懐かしさが心を満たす。古いバンガロー(平屋一戸建ての邸宅)を改築して作られたこのブティック群は、わたしたちが移住した直後に完成した。以来、いくつものレストランや店舗が、生まれては消え、生まれては消えた。
Trippy Goat Cafeは、わたしは何度か来たことがあるが、夫は初めて。料理はとてもおいしくて、雰囲気もいい。帰り際、建物の中に入ってみると、新しい家具店ができていた。これもまた、すてきなブランド。栄枯盛衰著しいバンガロール。ほんの数時間、街に出ただけでも、新しい発見が次々と。
……いい日曜日だった。