混在する、暮らしぶりの無数。
あふれかえる、それぞれの常識。
「常識はずれ」の無意味。
新年を迎えたばかりは、パルシー(ゾロアスター教徒)の人々。
未明の花火響宴、ムスリム(イスラム教徒)は断食月ラマザンのはじまり。
街に象の像あふれてヒンドゥー(ヒンドゥー教徒)はガネイシャのまつり。
路傍のマリア像の傍らにクリシュナ神。
半径500メートル圏内に平気で同居しているさまざまの神。
* * *
いつのときも、そこかしこ、あふれかえる人々。
「歩行者優先」なんて、無理なことだったのだ。
いつまでも、目的地にはたどりつけない。
タクシーは、暴走せねばならない。
バスは、暴走せねばならない。
さもなくば、どこにも到達しない。
* * *
路上でクリケットの少年らの溌剌。
木漏れ日の下、チャイのグラス傾ける男たちの談笑。
路傍の石の上で洗濯をする女たちのぼやき。
路肩のコンクリート枕に横たわる男と犬の悠然と。
鍛えられた、汚れた足の裏が無数。
ひとひの終わりの、家族で眺む水平線の安らぎ。
ちっぽけな誤差を見逃して、
遍く、夕陽は降り注ぎ、神は手を振り、
毎日。毎日。毎日。