毎年9月の第一月曜日はレイバーデー(Labor day:労働者の日)で、3連休となります。このレイバーデー・ウイークエンドは「夏の終わり」を告げる休日であり、ちょっと「ブルーな気分」にさせられます。
この週末が開けると「BACK TO SCHOOL」、つまり新学期が始まり、住宅街には黄色いスクールバスが走り、学校では入学式やオリエンテーションが行われます。
去年の三連休は、ちょうど『街の灯』が出版されるということで、日本へ営業に出発しました。一昨年は、ケープ・メイというニュージャージー州南端のビーチへ遊びに行きました。その1週間後に、9/11が訪れ、だからケープ・メイのことを思い出すと、同時に苦い気持ちが蘇ってきます。
ところで、今日、8月31日は私の誕生日です。28歳になりました。
と言いたいところすが、38歳になりました。なかなか人生に磨きがかかってきたな、という年齢です。ふふふ。
夕べから今朝にかけて、日本の家族やインドの家族から祝福の電話が入りました。普通は英語を話せないA男のおばあちゃんですが、「ハッピバースデー」を電話口で歌ってくれました。最後に「ロングライフ!」(長生きを!)と、祝福され……。
おばあちゃんに「長生きを!」と言われるのは、何ともはや、な気分です。
それにしても、電話口で「ハッピバースデー」を歌うあたり、国は違えど、我が家のカルチャーと同じで、ちょっと驚きます。普通、歌いませんよね。
さて、先週からいよいよ、学生生活が始まりました。20年ぶりに「新入生」気分で、学校に通っています。今回は、学校が始まった月曜日から3日間の日記を、ホームページから抜き書きしました。
●ジョージタウン大学の英語集中コースに通い始めた。12月まで学生だ。
【初日】いよいよ今日から学校だ。5時45分起床。ああ、早い。ヨガをやって、シャワーを浴びて、朝ご飯を食べて、家を出る。今日の学校はクラス分けのためのテストとオリエンテーション。まるで本当に大学に進学するかのような懇切丁寧なプログラムで、明日も一日、オリエンテーションだ。
わたしの場合、ビザの問題がないから気楽だが、他の生徒たちは学生ビザなどの手続きもあるので、あれこれと書類を整える必要がある。最近は移民局がことさら厳しくなり、学生ビザの発給に関しても細かな条件をつけているため、学校側も真剣に手続きせねばならないらしい。
午前中は約3時間にも亘って、クラスを決めるためのテストがあった。もう、途中でいやになった。だいたい、精神力が続かない。ちまちま小さな四角を塗りつぶすマークシート方式がもう、面倒くさい。
最後の「長文(中文?)読解」なんて、新聞よりも難しいほどの文章が5つも連なっている。「太陽エネルギー」だの「砂漠の動物」だの「火星の実態」などと、やたら優等生的な話題ばかり。さすがアカデミックな語学学校だ。と感心するが、くたびれる。
だいたい、アメリカの学校で使われる、小さなテーブル付きの椅子、これがなんとも窮屈で快適じゃない。アメリカ人は身体が大きいのに、なにゆえにこんな小さな机と椅子を製造するのだろうと、昔から疑問に思っていたが、今、改めて、不思議に思う。
さて、英語集中コースの学生は全員で120人程度だそうだ。見回したところによると、韓国からの生徒が多かった。日本人も結構多い。アジア各地、ヨーロッパ、アフリカ、中南米など、非英語圏約40カ国の学生たちが集っているらしい。
モンゴルから来た学生も2人いた。一人はとてもきれいな顔立ちの女性でモダンなファッションで、感慨深く見つめてしまう。10年前のウランバートルには、あんなおしゃれな人など一人も歩いていなかったが、今は変わったのだろうなあ。
スペインのバスク地方、かつて旅したことがあるサン・セバスチャンからきたおじさん学生もいた。彼が最年長かな。年齢は18歳から20代を中心に、30代、40代、50代と高齢になるほど少なくなってくる感じ。あくまで見た限りだけれど。
トルコ、イタリア、セネガル、中国……。今日話しただけでも、何カ国もの人たちがいる。やっぱり、こういうところに来ると、いろんな国の人と一気に話ができるので楽しい。
クラスは月~金までで1日4時間。午前中2時間、ランチ2時間、午後2時間というスケジュールだが、ランチタイムには講演会やワークショップに自主参加できるし、学校の各種設備(図書館や大規模なジムなど)も使える。
ちなみに通学は、うちから徒歩8分ほどのところにジョージタウン大学専用のシャトルバスが10分おきにやってくるので、非常に便利である。
今日のランチは台湾人と韓国人のガールズ(共に20歳前後)に誘われてカフェへ。台湾人女性は日本アジア航空に勤めていたらしく、日本語も少しできるチャーミングな人だった。韓国人女性はDCで働いているお姉さんを頼ってこの町に来たようだ。
午後もまた、オリエンテーションで、すべてが終了したのは4時を過ぎてから。長い一日だった。
【2日目】今日もまたオリエンテーションである。午前中はウェルカム・ブレックファストと称したパーティーが行われた。大学内のカンファレンスルームで学生と講師が集う。
今まで3つほどの「語学学校」に通った経験があるが、それらとは「取り組む姿勢」がかなり違う。学費が高いだけのことはあると感心する。すべてがきちんとオーガナイズされていてぬかりがない。
ちょっと説明過剰な気もするが、たとえば「初めて渡米してきた18歳」の気持ちになれば、少々、懇切丁寧なくらいがいいと思える。きっと心細いに違いないだろうから。
講師たちはみな英語教育を訓練された人たちで、驚くほど聞き取りやすく明快で正確な英語を話す。わたしはアメリカに暮らして7年だが、一日のうちに、こんなにクリアな英語を話す人たちに何人も会うのは初めてのことである。やたら「耳がすっきり」する。
わたしは普段、ラジオを聴いたりテレビを観たりする時間が少ないから、それが英語力向上に災いしている部分がある。もっと積極的にラジオなどを聴くべきだと今更ながら反省する。
講師の多くは「年輩の女性」で、少々「おばちゃん口調」ではあるが、それにしたって「正しい発音」には変わりない。そういう人たちの英語を聞いているだけで「自分も美しい発音で話したい」と思えてくるから不思議だ。
さて、朝食は、まるでホテルのカンファレンス・ルームのそれのように、彩り美しく用意されていた。無論、ペイストリーやベーグル、フルーツ、それにジュースやコーヒーなどありがちなメニューだが、プレゼンテーション(盛りつけなど)が美しく、学生を「ゲスト」としてもてなしている感じが気に入った。
お皿や食器もプラスチックなどではなく、きちんと陶器やシルバーのカトラリーを使用しているところが、品があっていい。と、英語とはあまり関係のないところで感心する。
午後は施設の使い方や、今後大学を受ける人のための説明、授業以外のホリデーツアー、毎週ランチタイムに開かれる講演会の案内などがあった。
このまえ1カ月通った語学学校は、一日4時間をすべて午前中、もしくは午後に集中していたが、ここでは午前2時間、午後2時間にわけている。最初は「まとめてくれればいいのに」と思ったが、こちらの方が、ランチタイム(2時間)の間に宿題ができるし、レクチャーも聴けるし、その他学内の施設を自由に使えるから、非常にいいということに気が付いた。
もしも自分の仕事がしたければ、ラップトップを持参してランチタイムに仕上げることもできる。
最初からこういう学校で1年くらいみっちりと勉強したら、英語の伸びも違っただろうなあと思う。まあ、今からでも、さほど遅くはないだろう。ちょっと出遅れてるけど。
さあ、明日はいよいよクラスの発表で、授業が始まる。どのクラスになるんだろう。
【3日目】夕べのおかずの残りに、おむすびを3つを加えてお弁当を作り、昨日、スターバックスで買っておいた保温ポット(日本製だった!)にコーヒーを入れ、オレンジジュースのパックを詰め込み、飲食物の準備も万端に、登校。
クラス分けの通知をもらうとき、なんだかとても胸がドキドキした。どのクラスでも、自分の実力に沿ったところであれば問題ないはずなのだけど「発表される」っていう状況は、なんだか無性に、ドキドキするものなのね。
クラスは
1. Basic
2. Low Intermediate
3. Intermediate
4. High Intermediate
5. Progessional Advanced or Academic Advanced
6. Academic Bridge
という6段階に分かれている。
わたしは4. High Intermediateで勉強することになった。このレベル分けを見ていると、せめて5まで勉強したいなどと思ってしまう。まだ始まったばかりなのに。
クラスは14名。今日は主に自己紹介などをやった。クラスメイトは韓国4人を筆頭に、日本2人、コロンビア2人、タイ、台湾、ベルギー、コソボ(ユーゴスラビア)、セネガル、エルサルバドル各1名。
生徒の経歴は
・米国の大学進学を前に英語の勉強
・母国の大学を出たあとアメリカの大学院に入るための勉強
・企業や団体からの派遣(日本人に多い)
・海外赴任に先駆けて
・その他
といったところか。わたしは「その他」だな。
ちなみにセネガルの女子はディウフというサッカー選手の従兄弟らしい。ワールドカップに出ていた有名選手だとか。彼女とエルサルバドルの男子(共に18歳)は、バスケットボールが好きらしい。ジムで練習するらしい。混ぜてもらおうかしらん。命知らずかしらん。
授業は一日3種類あり、その他自由参加のワークショップもある。最後のクラスは選択制で、わたしは時事問題をディスカッションするクラスを選んだ。ここには他のクラスの学生も混ざり、日本人も4人いる。しかし、日本人同士でも、学校内では極力、英語を話すようにしている。
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とまあ、こんな感じで3日がすぎた。木曜、金曜も、毎日のように、色々な新しい生徒と話す機会があり、なかなかに刺激的である。
DCに来て以来、「能動的に」動かなければ、ちっとも世界が動かない気がしていたけれど、キャンパスの中に身を置いていると、特に意識しなくても、さまざまなことが自分のなかに吸収されていくような気がする。
学校とは、若い精神とか向上心とかエネルギーなどが、あたりいっぱいに漂っていて、特殊な場所だなあとしみじみ思う。
まだ1週間を終えたばかりで、これから残り15週間、どうなることやら……という感じだが、ともかく、楽しみながら、がんばろうと思う。
●楽しみながら、仕事をする人たちに出会える幸運 <メイド・サービス>
米国では、共働きの家庭が「部屋の掃除」を外部の人間に頼むことは珍しくない。専任のメイドを雇って、常時、家事の一切を任せている家庭もあるが、信頼がおけ、いい仕事をしてくれるメイドを見つけるのは簡単なことではない。
従って、一般的に「メイド・サービス」と呼ばれるメイド派遣会社と契約をして、定期的、もしくは必要に応じてスタッフを派遣してもらうことになる。
メイド・サービスは一般に、部屋の広さで見積もりを出してくれ、週に一度、もしくは2週間に一度といった契約を結ぶとディスカウントしてくれる場合が多い。部屋の広さにより、2人、もしくは3人の女性たちが一度に訪れ、数時間で片づけていく。
サービスの内容は業者にもよるが、洗濯以外の掃除全般は、たいていやってくれる。
ニューヨークに一人で住んでいたころ、知り合いに紹介してもらったメイドさん(日本人)に、忙しいとき、何度か来てもらったことがあった。彼女は掃除洗濯、すべてやってくれた上、日本人らしい「きめ細かさ」があったため、任せて安心だった。
一方、A男がDC郊外のヴァージニア州に住んでいたときは、小さなメイド・サービスの会社に頼んでいた。中南米出身の女性が起業した小さな会社だったが、起業した彼女が自ら、英語の話せないスタッフを率いて、指導しながら掃除をしていたようで、非常に満足のいく仕事をしてくれていた。
ちなみにメイド・サービスで働いている女性たちの多くは中南米から来た人たちで、英語を話せない人が多い。
さて、現在住んでいるアパートメントに引っ越してきてから、しばらくは「家事もいいエクササイズ」などといって、業者に頼まず自分でやっていたが、仕事が立て込んだり、どうしても掃除をする気にならないとき、やはり業者に頼むことにしている。
ちなみに我が家は2ベッドルーム(2寝室、2バスルーム、キッチン、リビングルーム)だが、この界隈の業者の相場では1回のサービスが80ドルから120ドルと、郊外に比べると高い。無論、定期的な契約を結べば2割程度は安くなるが、それにしても、支払う金額に見合った成果を上げてもらわなければ困る。
しかしながら、この1年半というもの、なかなかいい業者が見つからずにいた。
額縁の埃や本棚の埃をふき取っていない、ベッドカバーのかけ方がへたくそ、クッションなどが乱雑に置かれたまま、電子レンジの中がきれいになっていない……などなど。
特に日本人はそもそもから「きれい好き」の人が多いから、アメリカ人よりも要求が高いと思う。
新しい業者を頼んでも、約束の日時に来なかったりというトラブルがあったりして、つい先月までは「ああ、もう、自分で掃除をした方がいい!」と開き直っていた。
しかし、2週間前、どうしても自分で掃除をする余裕がなく、新しい業者をウェブで検索して見つけた。大手業者じゃないせいか、1回のサービスは80ドルで比較的安め。ウェブサイトには、「いい仕事をする」ようなことを書いてあったので、ともかく、もう一度試してみよう、という気持ちで頼んでみた。
鍵をフロントデスクに預け、不在中に掃除をしてもらう。思えばこれも、かなり勇気のいることではある。
帰宅し、(きれいになってるかしら……)と、少々胸をドキドキさせながら、ドアを開ける。開けた瞬間に、「善し悪し」というのは、スッとわかるものである。
通常、きれいに片づけられた部屋は、空気がキラキラと輝いてみえる。この日は、より一層キラキラしていた。フロアはピカピカ、バスルームもバスタブもピカピカ、キッチンのグリルも電子レンジも電気釜もコーヒーメーカーもブレンダーも、何もかもピカピカ。
ちょっとピカピカさせる洗剤&ワックスを使いすぎなんじゃないですか、というほどピカピカ。でも、非常に気分がいい。額縁の上を、まるで小姑のようにスーッと人差し指でたどると……。ふむ。埃がつかない。合格である。
お掃除やさんに頼む醍醐味は「自分よりもきれいにしてくれる」ところにある。自分よりも下手な掃除だったら、満足できない。こうして、徹底して、少々洗剤過剰でもいいからきれいに磨き上げてくれると非常にいい。
特にわたしは嗅覚が敏感なため、強い洗剤を使えない。アメリカの一般的な洗剤は匂いがきついので、バスルームを掃除しているとその匂いでクラクラ頭が痛くなるのだ。しかし、ヤワな洗剤は、黒ずみなどがなかなか速やかに取れず、手間取ってしまう。
しかし彼女らは惜しみなく強力な洗剤を使用しているようで、目地の汚れもすっきりと取れている。
そういうわけで、この会社にこれから頼むことに決めた。1カ月に一度程度にしようと思いつつ、今週は「お誕生日の週末」ということもあり、2週間後の昨日、また頼んだ。1カ月に1,2回頼めば1回70ドルにしてくれるとのこと。
ところで、話は変わるが、わたしは「アンティーク・ベア」を持っている。というと聞こえがいいが、古くさいクマのぬいぐるみを持っている。名前は「みいこ」と言う。
いやあ、こんなことを、書くことすら、実は恥ずかしいんですけどね。
みいこはわたしが1歳の時、両親がどこかのデパートで買ってくれたクマのぬいぐるみだ。最初はピンク色のボディだったが、歳月と共にグレイになっている。わたしが10歳くらいまでは、何度か洗濯したが、そのたびに「衰弱」していくため、以降洗濯していない。
天気のいい日に「天日干し」にして、日光消毒をしている。
鼻や耳、手足は何度か補正され、縫い目があるが、かわいい服を着せられ、それなりに体裁を整えられている。そんなみいこを、A男はいつも「マウス」と呼ぶ。クマだって言ってるのに。どうにも巨大ネズミにしか見えんらしい。
みいこは、いつもはベッドのすみっこに置かれているが、他人が来るときにはクローゼットの大きな引き出しに押し込められる。同じ古いクマでも、テディベアならアンティークとして展示されるほどだが、みいこじゃねえ。
さて、昨日。学校に行っている間に、お掃除やさんを頼んでいたのだが、みいこをクローゼットにしまいこむのを忘れていた。
帰宅して、きれいな部屋を見回し、いい気分でベッドルームに入り、思わず目を見張った。
フリンジが付いたゴールドとブルーのベッドカバー。普段はその上に、たくさんのクッションを無造作に転がしているのだが、そのクッションが、左右対照に美しく、「ソファーのような形」に整えられていた。
そしてその上に、みいこが、ちょこんと載せられていたのだ。まるで「姫」のように。
美しく整えられたベッドに恭しく座るみいこ。その姿が何ともアンバランスでおかしくて、思わず笑いが込み上げてきた。
どんな女性たちが掃除をしてくれているのか知らないけれど、なんてお茶目な人たちなのだろう。
彼女たちは「楽しんで仕事をしている」のだなあ、ということが、しみじみと伝わってきて、うれしくなった。楽しんでやっているからこそ、多分こうして、きれいに仕上げることができるのだ。
直接会うことがなくても、少なくとも、わたしに快適な時間、うれしい時間を与えてくれる人たち。
色々な仕事があるけれど、楽しみながらいい仕事ができる人、というのはいいものだと、改めて思わされた出来事だった。これからも、ずっと、彼女たちにお願いしようと思う。
(8/31/2003) Copyright: Miho Sakata Malhan
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