昨日、地中海の、その海の底深く、潜水艦が碇を下ろしたときに、誤って海底ケーブルを切断してしまったらしい。
そのせいで、インド、スリランカ、中東各地におけるインターネットのアクセススピードが「相当にスロー」になっている。いつになったら、復旧するのだろう。
どこの国の潜水艦の仕業かは、記事には書かれていなかった。それにしても、碇で切れてしまうケーブルって、あまりにも軟弱なだと思うのだが、どうだろう。
●貧しき人々が作る、美しい手工芸品を。
上の写真は、刺繍のテーブルクロスとナプキンのセット。ただいまストロベリーシーズン真っ最中のバンガロールにふさわしいデザインだ。
実は昨日、スラム訪問のあとに、ホテルLe Meridienへ立ち寄った。毎週月曜と水曜日、教会の尼さん (Franciscan Sisters)が刺繍製品を販売しているのだ。
インド移住前に、Taj 系列のホテルに宿泊したときにも、この尼さんたちがブースを出していて、その手作りの刺繍製品を買い求めたことがあった。
地方の村やスラムに暮らす女性たちによって作られたこの製品を、チャリティ・ティーパーティでも販売できないものかと思い、相談も兼ねて出かけたのだった。
すでに尼さんたちは、このホテル以外にも、金曜日はWindosorに、火曜日はTaj Residencyに(現在は内装工事中のため販売一時停止中)赴いているとかで、忙しそうである。
従っては、委託販売というのも難しそうなので、ある程度を買い取るという方法になりそうだ。テーブルクロスだけでなく、ナプキンやマット、子供服やエプロンなど、象やクジャク、インドの花々、伝統的な村の光景など、インド的なモチーフを配した質のいい商品ばかりだ。
気に入ったものを多めに買っておいて、プレゼントとして利用するのもいいだろう。
刺繍を見て思い出し、クローゼットから未使用のテーブルリネンセットを引っ張りだした。
右の写真がそれだ。
YAMUNANAGAR WOMEN LEAGUEと呼ばれる慈善団体で作られた刺繍製品だ。
この団体は、アルヴィンドの母方の祖母が、存命中の1955年に設立した非営利団体で、そもそもは孤児院として出発した。
現在は、祖母の義娘にあたるアルヴィンドの伯母のニナと更にニナの義娘であるタヌーが運営している。
孤児院はすでに閉鎖したようだが、低所得者層、貧困層の人々に向けて、職業訓練所を設けたり、英語やヒンディを教えたり、このような手工芸品の制作方法を伝授し、販売したりしているようだ。
このテーブルセットは、以前タヌーにもらっていたものだ。尼さんたちが販売しているものに比べると、少々刺繍の技術が劣るけれど、十分にかわいらしい品である。
ニナもタヌーもデリー在住のため、会う機会は年に数回と少なく、慈善活動についてを話し合ったことは今までなかったのだが、今後機会があれば、アドヴァイスを仰ごうと思う。
そういえば、クリスマスパーティのときに来てくれたバンガロール在住のファミリーフレンドのディピカも、自分が教える生け花のエキシビションで得た収益を、市内の教会にいつも寄付していると言っていた。
自分が動き出してみると、周囲もまた、いかに「恵まれない人々のために動いているか」ということが、見えて来る。この国は、政府の支援が行き届かない一方で、一般人が自ら支援しているケースはとても多い。
インドの富裕層は、いかにも利益を独り占めしているような印象があるのだが、そうでない人は実は少なくないのだということを、自分のごく身近な人々を見ているだけでも感じられる。
●二度目の「おつかい in 香港」は、グレードアップ
スーツケースとは別に持参していた大きなバッグに、たくさんの食料品を詰め込んで、香港出張から帰って来た夫。
出発前、「ショッピングリストを作って」と言われていた。普段は買い物など嫌いなくせに、海外出張時の「おつかい」には、どうにも思い入れがあるのである。
その詳細は、「初めてのおつかいin香港」にて記しているので割愛する。
前回はインドに移住した直後で、台所は家政夫モハンの城と化し、自分が好きに料理を作れなかったこともあって、日本食願望が高かった。
といっても、望むべくは日本米程度で、あとはインドでもなんとか手に入ったのだが、「ショッピングリストを作って!」と何しろ夫が熱心なこともあり、図入りで丁寧なリストを作ったものだ。
しかし今回は、さほど、要望がない。日本米も、まだストックがある。とはいえ、今年も母が来たらあっという間になくなるだろうから、頼んでおいた方がいいだろう。
日本米だけでいいと言っているのに、「せっかく買い物に行くのだから、他にも買って来るよ」としかし夫は今回も熱心だ。彼はもちろんビジネストリップのために香港へ行くのだが、到着日が日曜の朝で、その日は一日自由だから買い物に行けるのだという。
とはいえ、本当に、特に要らないのである。何度も書くようだが、日本米と醤油があれば、インドの素材でそこそこに、「わたしたちにとっての」おいしい日本料理を作ることができるのだ。
更には最近、加工食品を食べる機会が少なく、添加物の入った食品をおいしいと感じなくなっている。ついでに言えば、日本の食品には中国製なども紛れていることがあり、わざわざ中国→日本→中国(香港)→インドという、まさにフードマイレージの高いものを口にしなくても、十分に足りていると考えている。
とはいうものの、「せっかく」である。
ならば……、と考えて、強いて言えば上質のごま油。強いて言えば上質の醤油。強いて言えば上質のいりごま。強いて言えば上質の梅干し。強いて言えばキューピーマヨネーズ。
と、リクエストしていたのだった。
一般的な品質の物であれば、インドでも醤油やごま油が手に入る。わざわざ香港に行くのであれば、上質のものを選んでほしい。だが日本の加工食品に関しては、「度肝を抜かれるほど高い超上質品」が紛れていることがあるので、そのあたり、値段をしっかり確認して「ほどほどに上質」の物を選ぶよう頼んでおいた。
すばらしい「おつかいぶり」に、妻は感動した。
なんでも香港のSOGOにあるスーパーマーケットで、店員さんを一人つかまえて、あれこれと教えてもらいながら購入したとのこと。
頼んでいないのに、自分の好物である「こうや豆腐」や、パン粉などが入っている。
普段は食べないのだが、これはわからなくて仕方ないだろう、味付け海苔も入っている。
それから自分の好きなガーナチョコレート。
かと思いきや、今回は明治のハイミルクを試しに買ってみたらしい。ホットケーキミックスもある。
加えて帰路、免税店でブリストルクリーム(クリームシェリー)や、先日フランスで味をしめたソーテルヌを一本ずつ買ったとのこと。
そしてなぜか、ドラッグストアで買ったという「アンチエイジング」のフェイスマスクと、ビオレの「毛穴すっきりパック」も入っている……。
毛穴すっきりパック……。
若干、複雑な気持ちは否めないが、好意的に受け取っておこうと思う。
●二年半ぶりに、鍋。いや、鍋もどき。
「今夜、何が食べたい?」
香港から戻って来たばかりで、外食続きで胃が疲れているであろう夫に尋ねた。すると、即、返事が来た。
「ナベ!」
……。鍋ですか?!
寒さ厳しい日本は、今、まさに鍋の季節であろうが、バンガロールはすでに夏気分。Tシャツ短パンでもOKな気候である。鍋にふさわしい気候とはいえない。
なぜ今、鍋なのか。についてはさておき、インドに来て以来、この2年余り、一度も鍋を作っていないことに思い至った。
インドに引っ越した際、鍋が割れてしまったことに加え、カセットコンロもないし、最初の1年半はモハン食だったしで、鍋のことをすっかり忘れていたのだ。
思えば米国時代には、冬ともなるとしばしば「鍋」をしていたものだ。
鍋に大切な白菜が、いつも手に入るわけではなかったが、韓国系スーパーマーケットに行ったときや、近所のスーパーマーケットの店頭に新鮮な白菜が並んだときに限って、鍋であった。
具は米国で最も一般的な魚であるところのサーモン。それに日本食料品店で買うアルヴィンドの好物しらたき、もしくはくずきり、もしくはマロニー。スカリオン(ネギ)、シイタケなどであった。
たまにチキンを使っての「鶏鍋」、あるいは奮発して「チリアンシーバス鍋」などを作ったものだ。
ともあれ、夫は鍋を所望している。土鍋はないが、最近愛用しているT-FALの深底フライパンがある。あれなら鍋にぴったりのサイズだ。
出し用の昆布と鰹節は、母が昨年持って来てくれたものの残りがある。ポン酢はインドのレモン(ライムのような形状)を絞り、買って来てもらったばかりの醤油をブレンドすればいいだろう。
冷凍室には、Bamburiesで買い溜めている骨付きの鶏肉がある。それを解凍して鶏鍋だ。前回のニューヨークで購入していた「くずきり」も賞味期限ぎりぎりで残っている。あと、Namdariesで白菜さえ手に入れば、ミニマムな具ながらも、鍋ができる。
夕刻、買い物に出かけたところ、幸いにも状態のいい白菜があった。深ネギもどきのリークもある。
野菜をザクザクと切り、鍋にだしをとり、すべてを一気に投入して、ぐつぐつと煮る。食卓で加熱できないので、冷めぬようにフライパンに蓋をして、供する。たきたてのご飯とインドレモンによるポン酢も準備して、いただきます!
この、あまりにも簡単且つ、大ざっぱな鍋の、久しぶりの鍋の、わざわざここに記録を残したくなるほどの、おいしかったこと!
おいしさの決め手は、愛。と言いたいところだが、鶏の骨だ。鶏からいいだしが出ていて、白菜もくずきりもおいしいったらありゃしない。インドの鶏肉は、小振りで身が引き締まっており、「野趣」がある。風味豊かなだしが出るのだ。
加えて、インドレモンと醤油との相性の良さ。なんの調味料もなく、十分に美味である。
「おいしいね」「おいしい」「おいしいね」を繰り返しつつ、黙々と食す。
そして翌日の今日。ランチのために残していただし汁で、大根を炊き、それに残りご飯を入れ、軽く醤油で味付けをし、卵を落として、大根おじやご飯を作った。これがまたうまい!
インドの大根は小振りで筋(繊維)がちなものも多いのだが、味はしっかりとしていて美味なのだ。
バンガロール的には季節外れではあるが、これからもときどき、「鍋もどき」をやろうと思う。
今、過去に鍋のことを書いた気がして、Googleで「片隅の風景」「鍋」と検索したら、出て来た。2003年の11月10日にも、鍋をしていたようだ。これを見て思い出した。そうだ豆腐を入れ忘れていた。インドでも、パック入りの森乳豆腐が手に入る。今度試してみよう。
11月28日には、今日と同じようなことをしていた。父が他界する、ちょうど半年前だ。