● その1:容姿
<顔> 番組への出演が決まり、取材日を数週間後に控えたあたりから気になりだしたのが「自分の容姿」である。プロデューサーのSさんが、「ハイビジョンです」とさらりと言った一言が、耳に残った。
ハイビジョンとは、高画質の画像のことか。お肌のシミやくすみやたるみやシワまでくっきり見えてしまうという、女優泣かせのあのことか。女優でないわたしでさえも、泣きをみることになるのか。
「天然素材がお肌にいいから」と、多少のノリの悪さや色の合わなさや化粧崩れを無視して愛用しているインドコスメ「シャナーズ・フセイン」の怪し気なファウンデーション(約500円)を使っている場合ではないかもしれない。
新しいファンデーションを新調したいところだが、どのブランドがいいのだろう。
最近はバンガロールでも、資生堂をはじめ、エスティーローダ、シャネル、ランコム、クラランス、エリザベスアーデン、ロレアル、ニナリッチ、イヴサンローラン、マックといった海外ブランドのコスメティクスが手に入る。
しかし、どれがいいのだかわからない。手がかりが欲しく、日本のコスメサイトを見てみる。日本女子の化粧品に対する異常なほどの熱意に驚愕する。あまりの情報量の多さに、よりいっそう、どれがいのだからわからなくなる。
結果的には、ドバイに行ったときに、コスメティクスショップへ赴き、店員にあれこれと尋ね、勧められるがままに、ゲランのリキッドファウンデーションとパウダーを購入したのだった。値段はシャナーズの10倍を軽く超えるが、効果はいかほどなのだろうか。
<髪> 顔に加えて、わたしのこの髪はどうだろう。昨年11月にニューヨークで切って以来、伸び放題である。普段から髪を乾かす以外にドライヤーを使わず、セットなどもせず、くせ毛に任せてナチュラルに放置している状態。
前方からはともかく、後方、もしくは側面から見ると、ぼさぼさである場合も少なくない。カメラは後ろ姿をも容赦なく撮影するかもしれない。こんなことでいいのだろうか。いや、よくはないだろう。
とはいえ今更、行きつけないインドのヘアサロンでカットしてもらったり、あるいはセットしてもらったりして、取り返しのつかない髪型にされても困る。余計な手を加えるより、現状維持が賢明であろう。せめて取材日の数日前からは、コンディショナーやトリートメントをこまめに使うなどの努力をしようと思う。
そう。わたしは普段、シャンプーのみですませる場合が多く、リンスやコンディショナーの類いは2、3日に一度しか使わないのだ。インドでは、オイルでヘッドマッサージをよくやるし、シャンプーはナチュラルだしで、余分なあれこれを付け加える必要があまりないような気がしているのだ。面倒なだけだとも言える。
<重量> テレビは実物よりも太って見えるというから、体重も落としたいところだ。が、それは多分、無理だろう。無理はよそう。「ぴちぴちしている」ということにしよう。
●その2:衣服
取材は3日に亘って行われる。わずか15分とはいえ、撮影されるシーンはいくつもある。それぞれに、服を変える必要もありそうだ。サリーは少なくとも一度は着るとして、ほかはどうすればいいだろう。
日常のシーンに、張り切り過ぎた服は不似合いだし、かといって普段着だと、着古し感がある。そこそこにいい感じ、の服が見当たらない。どうしよう。外出の折、いくつかのブティックに立ち寄ってみるが、気に入ったものが見つからない。
そんなわけで、やはりドバイへ赴いた時、丸一日がんばって、ショッピングモールを散策して服を探し求めたのだった。
しかしながら、旅行時の記録にも記した通り、収穫はほとんどなかった。「日本米」だの「トラベルクッカー」だの「いなりずしの素」だの「ファウンデーション」だのと、ドバイとは縁のないものばかりを買い求めてしまった。
ところで上の大きな写真。唐突に現れたところの「サバの塩焼き昼定食」は、ドバイで滞在したハイアット・リージェンシーにある日本料理店のものである。この店の日本料理がおいしくて、アルヴィンドも大喜び。二度も訪れてしまった。だから何をしにドバイへ行ったのだという話だ。
ドバイ話はさておき、最終的には、インド色を全面的に押し出すべく、サリーを2回着用し、あとはジーンズにMade in Indiaのトップを着用することにしたのだった。
● その3:家の片付け
取材を受けると決まった後も、ムンバイだのムンバイだのドバイだのに出かけ、直前まで慌ただしかった。その合間を縫って、家全体の片付けを、少しずつ行っていた。
普段からそれなりに片付いてはいるが、テレビカメラに撮影されるとなると話しは別だ。たとえ0.5秒のカットだとしても、映されるならばこれではまずい、というスポットが随所にある。特にキッチンや書斎など、物が多い場所は要注意だ。
片付け始めると、どんどん深みにはまってゆく。取材とは関係のない、書斎のファイルの整理だの、CDの仕分けだの、賞味期限が切れた食品の処分だの、救急箱の整理だのをはじめてしまい、とまらない。思えば1年前に引っ越して以来、どたばたと定住し、以降じっくりと片付けに向き合うことがなかった。
これは好機だ。
などと自分にいいきかせながら、片付けに没頭してしまい、疲労困憊の極みとなる。加えて番組のために、過去の写真を発掘せねばならない。古いアルバムなどをひっぱり出して、あれこれと眺めるうちにも、時は流れる。
ドバイから戻って来たのが日曜の早朝。翌月曜日に掃除に取りかかり、しかし火曜日にはなんだか体調が悪く、微熱がある。バンガロールはいつになく蒸し暑く、低気圧が押し寄せている感じがする。調子が悪い。
火曜は早めに休んだが水曜日。やはり微熱が下がらない。明日木曜日から土曜日までの3日間が、取材である。体調を崩している場合ではないのだが、疲れが出たのだろうか。
祝日につき、夫がムンバイから戻って来た。片付いていた部屋が、恐るべき高速度で散らかる! 嗚呼!
かような混沌を経て、取材が始まる木曜日の朝を迎えたのだった。
■テレビ東京:日曜ビッグバラエティ「世界に嫁いだ日本人女性 密着!海外ライフ」
■系列:テレビ北海道、テレビ愛知、テレビ大阪、テレビせとうち、テレビ九州
■4月13日(日)午後8時(わたしは2人目らしいので、8時15分頃か)