気がつけば、日本旅から戻って早くも1週間が経過。旅の余韻は速攻で消えたわたしであるが、夫はといえば……。
日本滞在中「九州場所」をテレビで見て以来、急速に、そして熱烈に、相撲ファンになってしまい、今でも毎晩、iPadで相撲中継を見ている。
日本滞在中から、すでに短時間集中で「相撲とはなんぞや」を学んだ彼は、力士の名前やらなんやらも詳しくなっていて、わたしは、ついていけない。
食後、夫が空港で購入した福砂屋のカステラを皿に盛りつけつつ、「なんのお茶飲む?」と問えば、
"Burned tea!"と答える。
"Burned(燃えた) ではなくRoasted(焙った)でしょ!"
と返事をしつつ、ほうじ茶を入れる我。
紅茶よりも緑茶やほうじ茶が好き。本当に、かわったインド人である。
そしてここ数日は「ねえ、ミホ。しばらく日本に住もうよ」と、しつこい。OWCのバザールに訪れた客のなかで散見された、マナーの悪いインド人をして、
「ああもう、僕は本当にインド人が嫌だ。日本とは大違いだ」
と、困ったことを口にする。今回の日本旅がよほど楽しかったらしく、日本に対する好印象度が炸裂している。妻としては、諸々、複雑な気持ちだ。
ところで、日本旅の終わり、福岡とシンガポールでの写真が何枚かあるので、載せておこうと思う。
福岡では、夫から、「九州場所を見に来たい!」と懇願されたのだが、奈良&宮島旅の翌日に、それは無理! という状況だったので、中洲、天神界隈を買い物がてら散策したのだった。
↑櫛田神社。どこの神社でも寺でも、驚くほど真剣に、呆れるほど長々と、合掌して祈る夫。
いったい、何をそんなに願っているのか。わたしは慣れているが、太宰府でその様子を見た母は、
「何をあんなに長々と祈ってるのかしらね」
と、驚き呆れていた。その答えは、妻のわたしにも、わからん。
ところで、「本文と写真は関係ありません」状態になるが、我が家で5年半働いたプレシラは、やはり去ることになった。
今日、プレシラの義姉シャンティが訪れ、諸々、話がついたので、今後は彼女が我が家のメイドとなる。数日間、引き継ぎをしたあと、プレシラはしばらく「主婦」として、家を守るとのこと。
正直なところ、プレシラは、家事能力が低いという、メイドにしては致命的な問題を持つ人物ではあった。
仕事は遅い。遅いからといって丁寧かと言えば、そうでもない。
料理は何度言っても油を大量に使うので、一切任せられない。
シャンティの方がはるかに仕事が的確で、さばけていることは、今日1日、ちらりと様子を見るだけですぐにわかる。
それでも、プレシラは、彼女なりに一生懸命、がんばってくれていたし、特にわたしたちがムンバイと二都市生活をしていたときには、長期の留守を守っていてくれた。正直で、信頼できる人物であった。
久しく暮らしを共にした人が去ることは残念であるが、それもまた、節目。
……と書いていたら、今、相撲中継を見ていた夫が、ヘッドフォンをiPadから外した。流れて来るは「君が代」の旋律。
「ミホ、歌わなくていいの?」
と問われ、ついつい立ち上がって君が代斉唱。
それにしても、プレシラとシャンティは示し合わせたわけでもなかったのに、ちょうどプレシラがやめたいと思ったときに、シャンティが10年来の職場を離れたというのは、驚くほどのタイミングのよさだ。
プレシラに「辞めたい」と言われた翌々日、シャンティから「新しい仕事があれば、紹介して欲しい」と電話があったのだ。二人はまだ、お互いに情報を交換していなかった。
ともあれ、この節目。丁寧に乗り越えて、また新しい日々を迎えよう。
ニューヨークでも、必ず一風堂に立ち寄るとんこつラーメン好きの夫。
「インドに帰る前に、本場のとんこつラーメンが食べたい」
と、言い続けていたが、わたしはもう、ジャンクな外食は避けたかったので、軽く無視していた。ところが、中洲を歩いていたら、とんこつラーメンの人気店「一蘭」が目の前に!
ここのラーメンスープはMSG(化学調味料)を使っていないので、わたしでもおいしく食べられる。やられたな。結局何もかも、夫の願いの通りだ。
さすが、毎度、神社仏閣で延々と祈っているだけある。
じゃ、ここで遅いランチを……ということで、店内に吸い込まれる。
一蘭の店内は独特のスタイル。カウンターは個別に仕切りがついていて、「周囲に干渉されず、自分のペースでひたすらにラーメンを食す」環境が整っている。
このユニークなスタイルは、外国人に受けること、間違いない。注文票も、英語版が用意されている。真剣に記入する夫。
ラーメンは、実においしかった。うっかり替え玉したいくらいだったが、そうなっては夕飯が食べられなくなる。自制して、箸を置いたのだった。
その日の夜は、またしても岩田屋の地下の鮮魚売り場で刺身を購入。他のデパートと見比べたが、やはり岩田屋のお刺身が、一番好みだ。
刺身やバッテラ、ウニなど、こんな新鮮な物が、デパートの地下で手軽に買えることが、本当にすばらしい。パックのままテーブルに供して、なにやら雑な食卓ではあるが、きれいに盛りつけてあるので、よしとした。
母の妹夫妻が来訪した際に、お土産にとくれたケーキは食後のデザート。プチガトー。これもまた美味であった。
そんなこんなで、濃厚な日本旅は幕を閉じたのだった。日本旅で思うことをきちんと書き留めておきたいと思うのだが、毎度のように、戻って直後にそんな余裕はなく、今回も日々が流れてしまう。
到着した日の夜は、わたしの友人、そして夫の旧友を交えてのディナー。今回のシンガポールでは、Facebook効果か、夫が高校や大学時代の旧友との久しぶりの再会が連発したのだった。
これは、今回滞在したThe Fullerton Hotelにて。かつて郵便局だった建物を改築して作られたホテルだ。
こんなにも、クマのぬいぐるみが似合う40歳男性がいるだろうか、いや、いまい。というくらいに、やたらとクマのぬいぐるみが似合うマイハニー。というか、本人が小さくなってツリーに紛れてもわからん状態だ。
翌日のランチは、ホテルから遠出をする根性がなく、ホテルから徒歩圏内にあるホウカーセンター(屋台街)へ。
シンガポールへは今まで何度も訪れているが、ホウカーセンターで食事をするのは、ガイドブックの取材で訪れて以来、実に24年ぶり。
24年前のシンガポールと今とではずいぶんと変化したが、ホウカーセンターのムードは相変わらずで、たちまち懐かしい気持ちにさせられる。
選択肢が多いと、なにがなんだかわからなくなり、ついつい、「いまいち」なものを選んでしまいがち。この日は、まあ、悪くなかったな。というところか。
このホウカーセンターは左上のチキンライスが名物らしいが、わたしたちは右上のダック麺が好みであった。
食後、マリーナの界隈を散策。おなじみのマーライオンに挨拶をし、カフェでコーヒー休憩をしたあと、ホテルで荷物をピックアップし、空港を目指したのだった。
新しい人と出会う。旧知の人と再会する。
新しい光景に出合う。懐かしい光景に出合う。
日常を離れると、
時間の流や、時代は移ろいや、歳は重なりについてを、否応なく認識させられる。
自分を見つめ直す。
それは多分、自分をより豊かにすることでもある。
旅を大事にしよう。と、改めて、思う。