インドにお住まいの方なら、7月1日より大規模な税制改革が施行されることについて、耳にされているだろう。
個人的に、この問題のことを、わたしはしっかり理解していない。理解していないのに言及するのは憚られるが、軽く概要に触れてのち、以下、いくつかの当該記事のリンクをはっておこうと思う。
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昨年実施された、旧高額紙幣刷新 "Demonetization" をしのぐインパクトが予想される画期的な税制改革が、まもなく実施される。
現在、州ごとに異なる間接税を一体化する、物品サーヴィス税「GST (Goods and Services Tax) 」の導入だ。これまで各州ごとのルールで枝分かれしていた1500以上の項目に亘る間接税が、0%、5%、12%、18%、28%、43%の6種類に統一されるというもの。
中央売上税CST(Center Sales Tax)や、州ごとの付加価値税VAT (Value Added Tax)ほか、サーヴィス税、消費税といったよくわからないが細々と存在していた税金が、すべてGSTに統一されるというわけだ。
その準備は1年以上前からなされていたとのことだが、当然ながら準備万端とはいえない様相を呈している。それでも、以下にリンクを貼っている記事に目を通していただければわかるように、将来的には意義深い大改革であることは、間違いないと思われる。
なにしろ、インド。EUよりもやや狭い国土に、EUの2倍以上の人口を抱える大国だ。しかも、州の数は、EU加盟国とほぼ同じ。そんな巨大で多様性に富んだ国家において、昨年の大規模な刷新に引き続き、長年の懸案だった税制改革に着手するのであるから、賛否両論あったとしても、わたしは個人的に、モディ首相の牽引力と実行力の偉大さに感嘆するばかりだ。
下記にリンクを貼っているBangalore Mirrorの記事に目を通しただけでも、間接税の導入に際しての懸案は数々あることが察せられるが、中でも取り沙汰されているのは、何を何パーセント課税にするか、という基準である。適用されるGSTのレートは、インド各州の代表者で構成されるところのGST評議会によって決定されるとのこと。
しかし、無限とも思える「物品」のひとつひとつの税率を、みなで相談して決めるわけにはいかない。おおまかなカテゴリーにおいての税率は定められたとしても。ひとつひとつの商品に関しては、売り手が判断して申請することになるという。
ともあれ、GST導入に際してのあれこれは、政府が用意している「シンプルに取り扱えるらしい」ソフトウエアを使用して申請などを行う仕組みになっているようだ。
税率を決めるに際しては、GST評議会が定める原則を参考にすることになるが、この原則が多様性の国インドにとって、「普遍的になり得ない」ところが大きな問題の一つであるようだ。
たとえば、食品や医薬品など、生きる上で必須な物品については、0〜5%の定率を課す。しかし、「高級品」には28〜48%の高い率を課すという基本的なルールはあるものの、それが高級品かどうか、を判断するのは、非常に主観的な問題でもあるからだ。
たとえばアンドラ・プラデーシュ州では、寺院へのお供えのお菓子としてもよく知られる「Ladoo」というお菓子や、寄進のために断髪した頭髪は無税となるという。一方で、生理用品は12%の課税対象という、不自然な基準が制定されているという。
ホテルに関しては、1泊7500ルピーを境に、それ以下は18%、それ以上は28%の課税となる。レストランに関しては、冷房の有無によってレートが変わるというのも、おかしな基準だ。
……という感じで、レートの設定には納得できるもの、できないものが混沌としていることが予想されるが、いずれにしても、プラスマイナスゼロ、という状況ではなかろうか。
つまり、今回の改革は、消費者にとっては、さほど大きな問題だとの印象は受けない。たいへんなのは、これまで取引の数字を曖昧にしてきた企業だと思われる。
仕入れと販売の税率の調整。仕入先からのGST申請書類の確認など……。このあたりは、インド進出をしている日系企業もその準備に、ここしばらく、諸々の対応に追われているはずだ。
大手企業はまだ、対応すべく体力があるだろうが、人手の足りない中小企業にとっては、かなり大きな負担になっているのではないかと察せられる。
インド国内企業にとってもタフな状況。海外から進出する企業にとってはより一層、インドへのハードルが高まる事態が、この先しばらく、続くのかもしれない。
↓ ↓ ↓ 以下、参考になる記事のリンク↓ ↓ ↓
■インドの税制改革、導入は慎重に(Finaicial Timesの日本語記事)
■インド企業が待ちわびたGST、7月1日導入-独立後最大の税制改革 (Bloombergの日本語記事)
■トランプ税改革より高難度 インドの物品サービス税 規制複雑でコスト膨大 (Sankei Biz)