わずか数日のうちにも、麗しき日昇と日没を眺めている。日々の地球の営みの、当たり前の光景が、とても贅沢なものに思える。本来であれば、なんの手間をかけることもなく、地球に生きとし生けるものすべてが、毎日平等に、受け止めることができるはずの光景だというのに。
朝、庭を歩き、草の上で、軽くヨガをする。朝日に向かって、スーリヤ・ナマスカーラ(太陽礼拝)を10回ほど。気分がいい!
ホテルを散策していたら、一隅にマハラジャが所有する鉱山の模型が置かれていた。模型の下には、無造作に鉄鉱石がごろごろと。
さて、今日はハンピの観光だ。10時ごろ、ホテルを出る。家畜の群れは見慣れすぎるほどに見慣れているけれど、でも、ついつい撮影してしまうのだ。
ハンピまでの光景。鉱山に近い場所は、赤土にまみれている。山道を走るトラックが、赤い砂塵を撒き散らしながら暴走するので、山肌も、あたりの建物もすべて、赤土色に染まるのだ。
しばらく走れば、土の色が変わる。このあたりは道路を拡張工事しているようで、たいへんな混沌。
ハンピ観光をする前に、生鮮市場に立ち寄り見学。これまで、地球上の、数多くの土地を旅してきたが、どこを訪れても足を運ぶのは、地元の市場。その土地の人々の胃袋を支える市場では、食文化の原点に触れ合える。
小ぶりの玉ねぎは、漬け込まれてアチャール、すなわちピクルスに。インド料理の付け合わせで定番の玉ねぎアチャール。日本のカレーにラッキョウが添えられるのは、この模倣だと思われる。
小ぶりのニンニクは、滋養がたっぷり詰まっているらしく、アーユルヴェーダ的にも推奨されている。
豊かな果実。背後の柑橘はムサンビ(スイートライム)。これもまた、身体によい果汁。我が家では毎朝、野菜&果物のコールドプレスジュースを作っているが、主要な素材は、にんじん、ザクロ、レモン、そしてこのムサンビだ。これに、チアシードやスピルリナ、モリンガ、リンゴ酢、アムラなどのスーパーフードが、そのときどきの気分で適当に添加される。
笑顔がチャーミングなバナナ売りのお姉さん。バナナを数本、買いました。
SWACHH BHARAT (CLEAN INDIA)のスローガンが空しい、インドの路傍。バンガロールも同じこと。
In 2012, when I visited Hampi with my husband, despite of short stay, we visited most of the major points in the heritage site. Therefore, this time, I chose the minor points I did not come last time. There were few tourists, so it was really nice to see the ruins with peaceful feelings.
2012年に夫と初めてハンピを訪れたときには、フブリで開催されたカンファレンスに参加するのが主目的だったことから、1泊2日の短い滞在だった。しかしそのときに、ツアーガイドに導かれ、主要な遺跡群を巡っていたこともあり、今回は旅の前半に引き続き、後半も変化球な旅を続けるに至った。
ハンピは、14世紀(1336年)から16世紀前半(1565年)にかけて栄えたヒンドゥー教勢力、「ヴィジャヤナガル朝」の王都であった。最盛期には約50万人が暮らし、ポルトガルや中国など、大陸の商人らも訪れたという。
ごつごつとした岩肌。巨岩の転がる乾いたデカン高原の大地。半径約3キロ圏内に、いくつものヒンドゥー寺院や宮殿などが建立されたが、16世紀なかばに、北から侵入したイスラム勢力によって制圧された。
その後、ハンピは久しく「打ち捨てられ、忘れられ」ていたという。樹木が生い茂る、まさに「兵どもが、夢のあと」だったこの地が再発見されたのは、英国統治時代らしい。
1986年、ハンピはユネスコの世界遺産に指定された。
初日、夕日を眺めたマータンガの丘に登る途中、東側に見下ろせた遺跡が気になっていたので、午前中はそこを訪れることにした。
清澄な水辺。日差しは鋭く、気温は高く、極めて暑いのだが、水辺の光景は心を潤す。
遺跡散策の前に、ココナツウォーターで喉を潤す。乾いた暑さのデカン高原。何につけても水分補給は必須なのだ。
ヴィタミンCたっぷり、驚異のスーパーフード、アムラ! これは極めて小ぶりで、スパイスが混ぜられている。全部食べられる気がしなかったので、ココナツ売りのおばあさんに「1つちょうだい」と言って味見をさせてもらった。酸っぱスパイシー! 1つで十分!
アチュタラヤ寺院。観光客はまばらで、茫洋と、数百年に亘って打ち捨てられたままだった面影を残し、そこに在る。
崩れ落ちた石像の奥に積み重なるレンガ。どのようなプロセスを経て築かれたのだろうか。
ハヌマーンの故郷だけに、ハヌマーンの姿はそこここで見られる。
ここに王朝があったころ、このあたりには、どのような光景が広がっていたのだろう。カラフルな衣類を身にまとい、行き交う人々。喧騒。
ハンピの昔日を再現するフィルムを作って欲しいと思う。
じりじりと、太陽に照りつけられながら、わたしも記念に、石を積む。
さて、ハンピの中心地観光は、今回、この1カ所で終了。ランチへ出かけることにする。
ハンピでは、世界遺産を整備すべく、ここ数年は当該エリアの再構築が進められているらしいが……。
「昔の遺跡は何百年も壊れませんけど、最近作られたものは、すぐに壊れるんですよ」とドライヴァー。確かに。
I had lunch at the Evolve Back which is the most luxury hotel in Hampi. The North Karnataka meals was really awesome!!
ランチは、1年余り前にできたばかりのラグジュリアスホテル、 Evolve Back(最近までオレンジ・カウンティという名だった)でとることにした。
かつての王宮を模して作られたという建築物。
ヴィジャヤナガラ・セットランチ(ミールス)のノンヴェジをオーダー。
北カルナータカ州の伝統的な料理があれこれと楽しめるセットランチだ。
まずはラッサム(スパイシーなスープ)とバナナのフライ、そしてエビのカレーが前菜として。
ほどよくスパイスが効いたプラオ(炊き込み御飯)と、それぞれ異なる雑穀が配合された3種類のチャパティ。
料理はいずれも、非常においしくて感動した。今まで食べたミールス&ターリーの中で、5本の指に入るおいしさ。
北インドのターリーほど油脂が強くなく、しかし、滋味に満ちてメリハリのある味。マトン、チキン、ダル、バナナの花……。どれも口に合って、幸せ。
ここは繁田さんと一緒に来るべきだった! 昨日、中途半端な感じのランチを食べたのが、少々悔やまれる。
ちなみにこのホテル、確かにすてきな雰囲気だが、お値段に値する優雅さを感じられない。もちろん泊まってみなければ、わからないことではあるけれど。
少々ハンピから離れるとしても、わたしが今回滞在しているパレスホテルは、リーズナブルながら本当にお勧め。マハラジャ・ファミリーが暮らしていた由緒ある建物だけに、味わい深い空間なのだ。
ランチのあと、午前中、物売りの少年から購入したガイドブックを、パラパラとめくる。
1枚の写真が目に止まり、「ここに行こう」と決めたのが、Malyavant Shri Raghunath Temple。
実はここ、石段などを登らずに、車で高台にたどり着ける「お手軽なサンセットスポット」でもあったのだった。
ハンピを訪れる前に、ぜひとも読んでおきたい古代インドの叙情詩「ラーマーヤナ」。
神話と現実が交錯することに、最早、違和感を覚えなくなったインドでの日々。スリランカのゴールでハヌマーンが落とした山のかけらの丘を訪れたときにも、いやはや感嘆したものだ。
今日、図らずも訪れたこの場所が、ラーマ王子と弟のラクシュマンが、シータ姫を助ける道中に立ち寄り、ハヌマーンと出会った場所だと知って、深く感動する。
そんなに大切な場所にも関わらず、ここはヘリテージサイトから外れていて、観光客も少なく。この本を読まなければ、そんなエピソードを知ることすらできなかった。
遥か遠い昔から連綿と続いている人々の日常が、ただただ、滲み出ている。リズミカルに「ラーマーヤナ」が「歌い上げられる」のを聞きながら、わたしはいったい、どうしてここにいるのだろう。時空を超えて旅をしているようだ。
朗々と歌い上げられる『ラーマーヤナ』の物語は、スピーカーを通して、村中に響き渡る。人々は日々こうして、神話の世界に身を置いているのだろう。
「ラーマーヤナ」の演奏を楽しんだあと、寺院の背後にある丘へ。ガイドブックに載っていたのは、この岩と祠の光景だった。実物は益々、魅力的な景観!
"According to mythology , it is here lord Rama and his brother Laxmana waited till the monsoon season gets over; and then they marched towards Lanka with Hanuman’s monkey army to rescue Sita."
この祠、クリシュナ寺院は、2000年も前からあるという。ガイドブックには記されておらず、僧侶の言葉を信じるしかないのであるが、だとすれば、ハンピの遺跡群よりも遥かに遠い昔から、ここにひっそりとあるわけだ。
日没にはまだまだ時間があって、そもそもここで日没を見るつもりではなかったのだが、ここを離れる気分にはならず。都合、2時間ほども過ごすことに。
まるで猿が憑依したかのように、いや猿ほどは身軽ではないものの、岩場をあちこち歩いては、奇妙な自然の造形を楽しむ。
この岩らの様子が好きすぎて、いろんなアングルから撮影した。もう、撮りすぎて、ここにはアップロードしないのだが、本当に、よかった。
こんなにも毎日、すばらしい夕景を見てしまっていいものだろうか……とさえ思う。奇岩の向こうに沈む夕日を見ていたら、バルセロナのカサ・ミラの屋上から見た夕日を思い出した。アントニ・ガウディはモンセラットの丘の景観にインスパイアされたというが、ハンピの景観は、モンセラットとも結びつく。
この情景がまた、個人的に、ツボすぎる。シュルレアリズムの絵画のようでもある。本当に好き。今すぐ行きたい。
I visited Malyavant Shri Raghunath Temple. This place is believed that Rama and Lakshmana met Hanumantha!
ここで僧侶に読経を唱えてもらい、腕にラーキー(吉祥の紐)を結びつけてもらった。お賽銭に100ルピーを渡した。
心底、満たされた思いで、寺院をあとにする。
ハンピ……。本当に、来てよかった。