バンガロールからロンドンまで10時間あまり。ロンドンからニューヨークまで8時間ほど。
さっきの食事は朝食なのか、昼食なのか、はたまた夕食だったのか。
[New York 01] いつものように、セントラルパークを歩く朝
We have finally arrived in New York.
ただいま、ニューヨーク。
毎度、混沌のJFK。長蛇のイミグレーション、長蛇のカスタム、長蛇のタクシー待ち。やっとの思いでいつものホテルにチェックイン。
ブロードウェイ沿い、リンカーンセンターの向かい。かつて住んでいたころのネイバーフッド。
いつものことながら、ここに帰って来ればたちまち、インドでの歳月が胡蝶の夢。
時空が歪み、記憶の濃淡が変化する。
猫らを案じる気持ちばかりがリアル。
遅い夕飯を取りに、近所のレストランへ。ランダムに頼んだIPAのラベルが蛇。ナーガルジュナ(龍樹)の余韻を引きずりつつ、一年ぶりのマンハッタンに乾杯!
[New York 02] Morning walk in the Central Park.
2006年以来、毎年この時期、訪れているニューヨーク。
目的は、米国永住権(グリーンカード)維持のため。
思い返せば最初の数年は、夫が米国市民権を取得するつもりだったので、半年おきに訪れていた。
面倒なプロセスを経て取得し、毎年税金を納めているとはいえ、トランプ政権に変わった現在となっては、いつ剥奪されてもおかしくない我々の永住権。
今年はしかし、入国審査も気が抜けるほどあっさりと、出迎えてくれたアメリカ合衆国。
初日の朝、空は青く澄み渡り。
まるでいつもの儀式のように、セントラルパークへと向かう。
新緑をたたえた、初夏の匂いがする風。
初めて降り立った日から22年。
新鮮さとか、刺激とか、そういう心境とは異なる、心休まる場所。
縦横無尽に、好きなように歩ける自由。
その気になればいつでも、車を借りて、大地を駆れる自由。
ここに来ればいつも、自分の心持ちをリセットできる。
幸せなことだ、と思う。
[New York 03] なじみの店 Porter House Bar and Grill で、ステーキを。
初日はたいてい時差ぼけで、調子がでない。ウォームアップを兼ねてのステーキ。これもまた、毎度おなじみ儀式的食事。
ホテル近くのコロンバスサークル、タイムワーナービルディングのステーキハウスで、いつものカウボーイ・リブアイ・ステーキ、ミディアムレア。一人分をシェアしてちょうどいいヴォリュームだ。ワインはハーフボトルをシェアして控えめに。軽く買い物をして夕刻ホテルに戻ったら、起きていられず爆睡。
夫はそんな妻を放置して、再びセントラルパークへ出かけて行った。若いな。ちょっとだけ。
[New York 04] 一年に一度、ここに来れば、出会ったころを思い出す。
In the building which can be seen from the window of the hotel, there was the Barnes & Noble bookstore once. On the evening of July 7, 1996, we shared a table at the Starbucks Cafe on the 4th floor of the bookstore. That is how we met for the first time.
今日は曇天。これもまた、見慣れたニューヨーク。
1996年5月から、2002年1月までの5年足らずを、わたしは、この界隈に暮らしていた。アッパーウエストサイド、60丁目。コロンバスサークル、リンカーンセンター、ブロードウェイ、そしてセントラルパークにもほど近い、とても暮らしやすい場所。
ホテルの窓から正面に見えるビルディング。現在はCentury 21になっているが、かつては大型書店のバーンズ&ノーブルが入っていた。トム・ハンクスとメグ・ライアン主演の映画『ユーガッタ・メール』で、トム・ハンクス演じる男性が経営していた大型書店は、ここが撮影に使われていた。
当時、1年間の語学留学予定でマンハッタンに滞在していたわたしは、年下の日本人男性とルームシェアをしていた。彼がアパートメントにいることが多かったので、わたしは毎日のように、この4階にあったバーンズ&ノーブルの、当時、まだできたばかりだったスターバックスカフェで、英語の勉強をしていた。
当時のスターバックスは静かでお洒落な雰囲気で、音楽関係者やアカデミック層の人々が、静かに本や新聞を読んだり、書き物をしたりしながら、コーヒーを飲んでいた。ラップトップを持ち込む人は、ほとんど見られなかった。
1996年の七夕は、日曜日だった。米国の独立記念日、July 4thに連なる連休で、その日の夕刻のスターバックスカフェは、いつになく込み合っていた。コーヒーを買ったものの、席が見つけられない。見回せば、一つだけ、椅子が目に飛び込んで来た。
テーブルと椅子の波をかきわけるようにしながらその椅子にたどり着き、テーブルいっぱいに書類を広げて(散らかして)熱心に書き物をしている男性に、まだ覚束ない英語で声をかけた。
「この席に、座ってもいいですか?」
それが、アルヴィンドとわたしの出会いだった。ここに来れば、そんな遠い日の出来事もまた、ついこの間のことのように思い出せる。
ちなみに『You've Got Mail (ユー・ガット・メール』の舞台はアッパーウエストサイドだったので、撮影現場には、何度か遭遇した。わたしたちがその映画を見たブロードウェイ沿いの映画館。劇中で、まさに主人公らが映画を見に入った映画館だったので、そのシーンでは、館内が大いに沸いた。
メグ・ライアン扮する女性が経営する小さな書店が、大型書店の台頭で経営が危うくなるというストーリー。それから20年とたたぬうちに、電子書籍の台頭で、大型書店もまた淘汰されていった。なにもかもが、つい最近のことのように思えるのに、なにもかもが、古い物語。