◎処女航海の出航後、わずか1.3キロで沈没した超豪華戦ヴァーサ号
3泊4日とはいかにも短く、明日は超早朝のフライトでパリへ飛ぶ。ゆえにストックホルムは最終日。
スウェーデンの歴史に触れ合える場所を訪れようと、ヴァーサ・ミュージアム(VASA MUSEUM)を訪れた。
ポルトガルやスペインによる「大航海時代」よりも遥かに時代を遡る9世紀ごろから、この地では「ヴァイキング」と呼ばれる民族集団が船で海外へ赴き、交易や侵略を行っていたという。
古くから船舶の歴史を誇る国に在って、1628年8月10日、大惨事が起こった。当時スウェーデンが建造した軍艦で、最も豪華で華麗な装飾を施されていた帆船ヴァーサ号が、盛大な祝典のあと、大勢の市民に見守られる中、処女航海に出た直後、わずか1300メートル走ったところで突風に煽られ、バランスを崩して、沈没してしまったのだ。
経験豊かな船舶建造者によって設計されたにも関らず、海の藻屑となった豪華船は、その後、333年間、海の中に沈んだままだった。入念な調査と準備を経て、1961年に引き揚げられた船に関するさまざまな展示物が、このミュージアムには所蔵されていた。
館内に入るや否や、重厚な樫の木で作られた船体が目に飛び込んでくる。船体の長さ47.5メートル。船底から旗柱までの高さ52.5メートル。圧倒的な迫力をたたえたその船体、よく見れば、豪奢な彫刻が随所に施されている。船尾の彫刻は、当時、艶やかな色彩で彩られていたことを、そばにある縮小模型が物語っていた。その豪華さが、富と権力を象徴していたという。
華美な船体とは裏腹に、船員や兵士たちの劣悪な労働環境も偲ばれて、それもまた関心を引く。当時の船には、大勢の船員が乗り組んでいながらも医師はおらず、「理容師」が医師の役割をも果たしていたという。
館内では、引き揚げ作業時の映像を見るシアターもあり、極めて興味深いものだった。
船の歴史や構造、引き揚げにまつわるストーリーがわかりやすく編集された各国語の書籍が売られていたので、「日本語版」を購入。海外の観光地にありがちな「おかしな日本語訳の本」ではなく、極めて読みやすい文章である。目を通すのが楽しみだ。
◎小さなブティックが立ち並ぶHornsgatanを散策しつつ、旧市街へ再び
Facebookに、友人のデヴィカが寄せてくれたコメントに従って、Hornsgatanへ足を延ばす。
ストリート沿いにアートギャラリーやブティックが並び、あたりの建築物や、時折、海を望む光景も麗しく、のんびりと楽しい散策路。
旧市街、ガムラスタンで遅いランチ。わたしはとても空腹で、しかし夫は、妻が制するのを聞かずに、前夜食べ過ぎたせいか、少し胃の調子が悪く軽めにしたいという。
店選びは難航し、ネットでいちいち検索する夫を振り切って、妻は「ここでいい」と、目に止まった店に入る。
ふらりと入った割に、なんとなく、地元の人たちに愛されているような、アットホームな雰囲気漂う店内で、くつろぐ。わたしは、スウェーデンの伝統料理であるミートボールとポテト、ベリーソースの付け合わせを選んだ。
素朴に、おいしい。スウェーデンらしい料理を食べたかったから、とても満足。
昨日の曇天からは一転し、風が冷たくも空が澄み渡る夕暮れどき。
目に入る光景のひとつひとつが、コントラストもくっきりと迫ってくる。
石畳の光と影。
燃え尽きることなく、歴史に触れられ、踏まれながら、いつまでもいつまでも、在り続ける石。