◯インド移住当初から、折に触れて何らかのセミナーを行ってきたが、「ミューズ・リンクス」として各種セミナーの実施を本格的に開始してから5年がたつ。この5年間のうちにも、自宅での開催は42回、外部での特別講座を含めれば60回以上、さまざまなテーマでセミナーを行ってきた。
◯昨日のセミナーは、この5年の中で最も濃いものであった。「スペシャルW企画」として、普段のインドセミナー盛り合わせに加え、「インド以前」の坂田のキャリアについても、あれこれと言及した。学生向けには、日本でも、インドでも、これまで何度も実施してきたが、昨日に比すれば、いずれも「縮小版」であった。
◯インド・ライフスタイルセミナーに関しては、本来であれば、何度かにわけてじっくりと実施したいテーマがいくつもあるのだが、みな、それぞれにそれぞれの都合がある。同じメンバーが複数回受講するというのは、極めて難しい。インド駐在は平均3年程度。最近は1、2年ほどと短い人も少なくないから、あっというまに歳月が流れる。ゆえにこの頃は、「詰め込みすぎ」を承知で、とにかくは大量の資料を準備し、各人がのちのち復習できる体裁を整えて、セミナーに挑んでいる。
◯昨今では情報収集は極めてたやすい。無論、上質の信頼できる情報を見つけ出すのは簡単ではないが、しかし「端緒」さえ提供できれば、参加者の知的好奇心をかきたて、充足させるサポートはできると考えている。「知るための契機」としてのセミナーでもある。
◯今回の参加者は10名。まずはインド関連のセミナーを午後2時過ぎより開始。途中で、毎度おなじみ人気のロールケーキを食べたりの休憩を挟みつつ7時まで。そこから、異例の「飲みつつセミナー」を実施。参加者も、わたしも、黄金色の飲料🍻にて喉を潤しつつ、スナックを食べつつ、キャリアセミナーを約2時間。9時に終了で親睦会ディナーとなり11時終了という、「じっくりどっぷり9時間コース」となったのだった。
◯我が家は天井が高く開放感があるせいか、居心地がいいので(自分で言う)、ついつい長居をしてしまうゲストが大半だ。昨夜は「もう、泊まりたい」とさえ言う人もいた。脳みそもお腹もいっぱいいっぱいゆえ、その気持ちはよくわかる。
◯日本の未来を担う若者たちには、日本を客観的に見る目を養ってほしい。地球儀を目の前において、ユーラシア大陸の右端にちょこんとある「極東 (Far East)」の日本を、客観的に見てほしい。日本の常識や価値観は、異国の常識や価値観と、一致するわけではない。我々日本人の「特殊性」を知らなければ、海外で働くに際し、壁にぶつかるたびに倒れ、起き上がるのに一苦労だ。そして堂々巡りを繰り返す。
◯「囚われず」に、自分を枠にはめ込まずに羽ばたいてほしいと切に思う。しっかりと飛び立てる羽を、背中につけてほしい。そして次々に立ちはだかる壁を、軽やかに飛び越えてほしい。
◯自分が若い時に「そのひとことが欲しかった」という言葉をちりばめながら、押し付けないように、でもやっぱり、メッセージは次から次へとあふれる。情報の消化不良を起こしている人もいるかもしれないが、しかし、回復して吸収するのもきっと早いであろう人たち。
◯「失われた」とか「停滞」とか、何かとネガティヴに形容される「平成」という時代に生まれ、あるいは育った世代の彼らに、大人たちは、できる限りのことをして、道標をシェアするべきだ。次の時代を生きる子どもたちのために、歴史を学ぶことの大切さや、経験値から「同じ轍を踏まない」ことの重要性も、伝えるべきだ。
◯何かを大成したとか、偉業を成し遂げたとか、そういう人しか語ってはならないということはない。人それぞれ、歳月を重ねて生きていけば、学んできたことはいくつもある。失敗談を語るだけでも、それは反面教師となる。わたしは自分が特に優れた何かをやってきたなどと言うつもりはない。ただ、自分のやや稀有な経験を通して、聞き手が何かを拾い上げてくれればと思うばかりだ。
◯「記録することの大切さ」を折に触れてしつこく語るのは、自分の過去を知り、そこから自分の潜在力や処理能力を判断し、未来に繋ぐ分析ができるからということもある。そしてそれは個人的なところにとどまらず、日本の、世界の歴史からも、学ぶことができる。過去を忘れるから、同じ失敗を繰り返す。
◯親睦会で、セミナーを受講者同士が交流を図れるのもまた、いいものだ。わたしも、彼らの話から新しく知ることや学ぶことがたくさんある。セミナーではわたしが語るばかりだが、彼らの話を忌憚なく聞ける場にも立ち会いたいと思った。