マイソールまで、1泊2日の女子旅へ。
実はわたし、インドの列車に乗るのは、これが初めてなのだ!
何しろ今まで、乗る機会も必要性もない旅ばかりだった。
インド人ながら、初めて、あるいは子供のとき以来だという友人らが多数。
みな慣れぬ電車に敢えて乗っての「カルチャーショック」な小旅行に大騒ぎ。
フォームで車両を探すのにも手間取りつつ、わずか3時間の昼間の旅なのに、なぜか寝台車が予約されていて、インドだもの。
わたしはむしろ、遠い昔のモンゴル旅を思い出し懐かしい。北京からウランバートルまで、36時間の列車旅は、まさにこんな寝台車だった。
それにしても、数日前のドレスデンからプラハの列車旅が前世の記憶のように遠い。
無闇に振れ幅の広い1週間だ。
1月の香港旅に続いての、今回は小旅行。皆それぞれに詰まっているスケジュールの、合間を縫うようにして、集まった。
観光が目的の旅ではない。ホテルで数時間のミーティングをすませたあと、マイソール在住の友人の計らいで湖畔へお出かけ。
夜は彼女の自宅へ招かれる。義理のご両親にご挨拶のあと、地下の部屋に通される。
上階の伝統的で気品あふれるインテリアとは別世界な、飲んで歌って踊れるファンキーなバーがそこに。
思えば、インドの友人らの家で、踊って歌える設備がない家は、ない。
毎度のことだが、彼女たちのパワーに気圧されつつ、ついつい歌って踊ってしまうわたしなのだ。
インドに住むべくして住んでいるのだなと、思わずにはいられない。
久しぶりに南インドの朝ごはん。たっぷりのフルーツのあとは、大好きなワダとマサラドサ。
欧州旅とはまったく異なる味覚だが、どちらも、おいしいものである。
★ ★ ★
マイソールは、バンガロールに次ぐ、カルナータカ州第二の都市。いまでこそ、2番目の規模とされているが、そもそもはマイソール王国(英国統治時代はマイソール藩王国)の首都であり、今でもカルナータカ州の文化的首都である。
バンガロールに観光資源はあまりないがゆえ、マイソール・パレスまで訪れる人は少なくない。わたしも過去、何度か訪れた。
ちなみに数日後より、インドはダセラという祝祭が始まる。インドの叙事詩『ラーマーヤナ』の主人公であるラーマ王子が、10の頭を持つ悪魔ラヴァナを滅ぼして勝利したことを祝う祭で、マイソールではパレスがまばゆくライトアップされ、華やかに装飾を施された象の行進などが行われる。
今回は、観光目的ではないのだが、マイソール在住の友人の計らいで、マイソールで最も重要とされているチャームンデーシュワリ寺院(Sri Chamundeshwari)を訪れた。丘の上にあるその寺院は、ヒンドゥ教の神シヴァの妻であるドゥルガー神の生まれ変わりとされる女神「チャームンデーシュワリ」が祀られている。
女神チャームンデーシュワリは、魔神マヒシャースラとの9夜に及ぶ戦いの末、10日目に倒したと言われ、マイソールの守護神とされている。
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大勢の参拝者が訪れる中、ロイヤルファミリーである友人の友人が寺院内を案内をしてくれたことから、最短ルートで赴くことができ、一般には入れない守護神の間近にまで行き、参拝させていただくことができた。
今回の女子旅のメンバー。香港旅の記録でも言及したが、YPOバンガロール支部の伴侶対象フォーラムの、わたしを含めて8名のグループだ。それぞれのファミリーが、ビジネスにおいて一定の地位を築いている。そしてみなそれぞれに、妻として、母として、娘として、働く者として、さまざまな役割を果たしながら生きている。その守るべきものが大きければ大きいほど、同時に多くの課題と向き合いながら、生きている。
わたしと、チベット系の友人、そしてムスリムの友人以外はみなヒンドゥー教徒。わたし以外は全員、自らの宗教に極めて信心深く、儀礼を重要視している。
宗教という寄る辺がないわたしは、ある種「奇妙な」存在でもあると、自覚する。
彼女たちが、真摯に、深く篤く祈る様子を目の当たりにして、わたしはまた合掌しつつも、自分は何を見ているのだろう、見つめているのだろうと思わずにはいられない。
人々に崇められ鎮座する神像は、異様なほどに強い存在感を放っていて、畏怖の念を抱かされる。
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彼女らの様子を見ながら、夫の親戚で、先日ペプシコのCEOを退職したインディラ・ヌーイ叔母のことを、思い出した。彼女はチェンナイに生まれた敬虔なヒンドゥー教徒、封建的なブラフミン(バラモン)の出自だ。米国に移り住んだ後も、ピッツバーグにあるヒンドゥー寺院に通っていた。彼女の姉が、夫の叔父と結婚していたことから、わたしたちはニューヨークへ行くたび、アッパーイーストサイドの彼らの邸宅を訪れていたが、広々としたひと部屋がプジャールーム(儀礼の部屋)になっていて、初めてお邪魔した時には驚いたものだ。
重要な宗教儀礼のあるときには、姉妹とその家族はそろって地元チェンナイに帰り、一族郎党がともに過ごす。
インド生活、ひいてはビジネスにおける社交(ソーシャル)の重要性は、宗教観と密接に関わりながら人と人を、人と祖国を結びつけているということを、改めて実感せずにはいられない。
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神に向き合う時には、インド服(サルワール・カミーズ)に着替え、裸足で寺院を回り、神に平伏す友人らの様子を見ていて、胸を打たれた。
いずれにしても、わたしが彼女たちと出会えたことは、人生の宝だ。と、改めて思わずにはいられない。
マイソール旅の締めくくりは、友人が経営しているSAYOGAへ。
ヨガクラス、ブティック、レストラン、宿泊施設などがある、ピースフルな空間だ。
マイソールはアシュタンガヨガの祖である故パタビジョイスの拠点でもあったことから、ヨガを志す多くの外国人が訪れることでも知られている。
SAYOGAはグローバルに、多彩なゲストに喜ばれるであろう、とても心地のよい空間だった。
わたしも質のよいヨガマット、そしてパワーストーンやルドラクシャ(金剛菩提樹の実)、ローズウッドなどのブレスレットなどを購入した。
彼女のファミリーはまた、お香の会社も経営していて、自社ブランドの精油やキャンドルも、お土産にたっぷりとくれた。
光の祭り、ディワリのときには、あいにく日本帰国中なので、別の機会に使おうと思う。
電車の時間も迫っていて、ゆっくりと過ごせなかったのが惜しまれる。また改めて訪問したい。
SAYOGA。
マイソールへ訪れる機会があれば、ぜひ立ち寄ってみてください。
昨日の列車の様子を見て「インドでの鉄道って、前時代的すぎる」とばかり思われては困るので、帰路の様子を。
行きは件の列車しかなく、3時間かけてマイソールまで赴いたが、帰りは快適な「シャターブディー・エクスプレス」に乗り、2時間でバンガロールに到着した。
「シャターブディー」という名は、ヒンディー語で「一世紀祭」という意味らしい。初代首相のジャワハルラール・ネルー生誕100年を記念して、1988年より運行が開始されたことに因んでいるとのこと。
週に数便と限られた本数ながら、大都市間を結ぶ列車で、昨日のおんぼろ列車とは、料金の格差も著しい。インドの貧富の差が、あまりにも顕著だ。
途中から慣れたとはいえ、行きの列車に乗り込んだ瞬間は、動揺を隠せなかった友人らも、帰りの列車では一転してリラックス。
ポーズを決めてあれこれ写真を撮るなど、やたらと楽しい。
水やジュース、お茶やおやつなども出されて、極めて快適な旅であった。「シャターブディー・エクスプレス」の発着駅や路線、運航日などを眺めつつ、旅先を決めるのも楽しいかもしれない。
ちなみにインドには、極端に豪華でラグジュリアスな列車もある。『パレス・オン・ウィールズ』 『ロイヤル・ラジャスタン』『 ゴールデン・チャリオット』『デカン・オデッセイ』『マハラジャ・エクスプレス』など、今ではヴァラエティも豊かに、その豪華さを競い合っている。
現状、『マハラジャ・エクスプレス』が豪華さ最高峰のようで、1週間1人数十万円から、スイートルームになると、200万円を超える激しさだ。
同じ線路上を走っているとは思えない、雲泥の差がすさまじくて、それもまた、インド。
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