昨日の曇天とは打って変わり、好天に迎えられた。森の爽やかな空気に包まれて、ゆったりと露天風呂に入る朝。極楽だ。
朝食もまた、一品一品が丁寧に調理されていることがうかがわれ、身体にやさしくおいしい。満足の1泊2日である。
思えば去年の一時帰国時は、ほぼ、曇天か雨だった。台風とともに神戸、名古屋、東京と北上し、傘が手放せなかった。
翻って今年は、昨日を除けば、福岡からずっと好天に恵まれている。それだけでも、とてもありがたいことと思う。なにしろ、どの地も1泊2日と短い滞在ゆえ、できるだけ軽やかに歩きたい。
前述の通り、伊勢の宿選びは手こずった。まず、一人旅での旅館は、お客側にとっては割高となり、宿側にとっては一部屋提供は効率が悪い。とはいえ、1泊くらいは、日本的な風情が楽しめる場所でゆっくりと過ごしたい。
この宿は唯一、女性一人旅のプランが用意された旅館だった。ホテル旅館的な位置づけで、決して伝統的でも洗練されているというわけでもないのだが、部屋は広々と快適で使いやすく、若い女性たちによるサーヴィスも、非常に気持ちがよく、行き届いていた。
日本の「そこそこの旅館」のお料理は、品数ばかりが豊富で、ひとつひとつの料理の味は、たいして心に残らないものが多い中、夕食も、朝食も、濃すぎぬほどよい味付けで、わたしが苦手な化学調味料の使用も最低限だという印象を受けた。
また、テーブルが庭に面した広い窓に面して設置されているため、一人でも、ゆったりした広さのあるテーブルで、庭の情景を眺めながら食事ができるのがよかった。
館内の随所で見られた生け花の、あまりの美しさと新鮮さ、そして個性的な様子には、精巧な造花かと思ってしまうほどだった。
Ise shrine can be said that the origin of Japan. My visit to this place was a rare experience that awakens my identity as a Japanese. (If you are interested in Ise Jingu, please read below.)
伊勢神宮。そこは、日本の原点だった。
神宮の内宮(ないくう)へ向かうべく、五十鈴川に架かった宇治橋から、青空に映える日章旗を見た瞬間、心が震えた。
20歳で初めて海外に飛び立って以来、何十もの国を訪れ、無数の異郷を旅してきた。「自然美」に触れ合うという意味においては、これまでも、米国の国立公園をはじめ、世界の各地で、森や山、湖や河川の麗しき景観を体験してきた。
しかし内宮の杜は、これまで感じたことのない、異質の神聖さがあった。この小さな杜には、独特の風が吹いていた。それはわたしが日本人だから感じることなのか、ここが伊勢神宮だということを知っているがゆえのことなのか、わからない。
わからないが、五十鈴川の清流に諸手を浸しているときの、体内の邪気が洗い流され、清められるような心持ちはたとえようもなく、幸福だった。
海外に暮らして22年。ゆえに、日本人としての自分を意識する場面は日常的で、ゆえに日本的な「気」に対して、敏感になっているのかもしれない。
綴りたいことは尽きず、ともあれ、こうしてこの地を訪れることができて、本当によかった。日本人は全員、一旦、ここを訪れた方がいいのではないか、とさえ思ったのだった。
「小型神棚」と「天照大神」のお札、そして「幸鉾」を買い求めた。
インドでも、日本を祈る。
内宮にて、神聖なるひとときを過ごしたあと、再び宇治橋を渡って、俗世へ。食べ物屋や土産物屋がひしめく「おはらい町」を散策する。
秋晴れの土曜日。通りを埋め尽くす人の波。
取りあえずは赤福で、伊勢名物の赤福餅を食べる。素朴に、おいしい。
300年以上もの歴史を持つ銘菓。江戸時代から人々は、こうして参拝のあと、甘味を楽しんだのだろう。
折しも今日は、太鼓祭りが行われていて、活気に色を添えている。
喧噪に気圧されて、ゆっくりと眺め歩くような気分ではなかったが、露店で売られていた、地元の檜を使ったというまな板を買った。定価2000円でも安いと思うのだが、半額になっていた。
今は、バンガロールのオーガニックショップで購入したアカシアのまな板を愛用しているが、檜のまな板を使うのもまた、楽しみだ。
🙏
喧騒の通りの傍に、澪標の如く立つ托鉢僧に合掌をして、ささやかながらも喜捨をした。
すると饒舌な僧侶は、どこから来たのか、どんな仕事をしているのかと、わたしの身の上について、さらには夫のことについても、ぐいぐい尋ねてくる。だいぶ、世俗的である。
そして言う。
これだけ人が通っていても、滅多に立ち止まる人はない。いるとすれば、アジア系の外国人、あるいは海外に暮らしている日本人が多いのだと。
そして別れ際、何度も、わたしの身の上の幸を祈ってくださったのだった。
わずか1泊2日ながら、心に深く刻まれる滞在となった。下関から、倉敷、名古屋、伊勢と続いた1泊旅×4もようやく終わり、旅の最終地点である東京へ……。
I have arrived the final destination Tokyo! I’ll stay here for 3 nights and go back to my home in Bangalore. I met Machi who use to work in Bangalore as an internship student. Lovely night.
福岡から鉄道旅を経て、ようやく旅の最終地点である東京に到着した。東京では3泊して、バンガロールへ帰る。重いスーツケースを引きずりながらの、体力勝負な旅も終わり、この3日間は移動なしで過ごせると思うと、ほっとする。
伊勢市駅から「快速みえ」に乗り、名古屋で新幹線に乗り換え、東京駅に到着したのは、すでに日が暮れてから。タクシーに乗り込み、昨年と同じ「三井ガーデンホテル銀座プレミア」にチェックイン……するはずが、予約が入っていないという。
むむむ。予約確認証を引っ張りだしてみたところ……。ガガガガ〜リン!! 間違って「ミレニアム三井ガーデンホテル東京」を予約しているではないか!
欧州旅の直後に、バタバタと日本旅のプランを立てた際、倉敷や伊勢の宿選びに手間取って、東京は「去年と同じでいいや!」と予約したつもりが、違うホテルだった。間違えやすい理由の一つは、同じ銀座というロケーションであること。
幸か不幸か、徒歩7、8分の距離。タクシーに乗るのも忌々しく、重いスーツケースを再び引きずって、「ミレニアム三井ガーデンホテル東京」に到着したときには、心底ほっとした。てか名前、紛らわし過ぎますから!
夜は、以前バンガロールにインターン生として滞在していた満智さんとディナー。彼女は短期間ながらもミューズ・クリエイションのチーム・エキスパッツのメンバーとして、協力してくれた。特に2016年のミューズ・チャリティバザールのときには、彼女のインターンシップ先が会場となったホテルの系列だったこともあり、諸々尽力してくれたのだった。
去年は、九大の学生で、満智さんより少しあとにインターンに来ていたなずなさんが、「ミューズ福岡」の学生向けイヴェントを企画してくれ、わたしは西南学院のキャンパス内で若者と座談会をする機会を得た。そのときに、満智さんはわざわざ東京から福岡まで来てくれたのだった。
数カ月前から社会人として働き始めた彼女と、おいしい食事を楽しみつつ語り合う。わたしが日本を離れたころに生まれ育った人たちから、今の若い世代の人たちの話を聞くのは、とても興味深く楽しい。
実は今回、旅先を奈良か京都か伊勢か、はたまた高野山か……と迷っていたときに、仏教にも詳しい満智さんとメッセンジャーでやりとりをした。なんだかんだで、最終的に伊勢を推され、今回、伊勢行きを決めたという経緯があった。
彼女の勧め通り、本当は早朝の内宮を訪れるのがよかったのだろうが、宿泊先が遠いなどの都合上、それは叶わなかった。しかし十分に、すばらしい経験ができた。ありがとう!