今日は、終日、銀座界隈で買い物などをして過ごす。時間が瞬く間に過ぎる。本当なら、あと2、3泊したかったところだが、バンガロールに戻らねば、次のイヴェントが待っている。
夜は、我が「バンガロール生活黎明期」から親しい加奈子さんと、「バンガロール生活円熟期」から親しい恵美子さんとでディナー。二人はお互い面識がなかったのだが、今回、時間が限られていることから、一緒に食事をとお誘いした。
昨年、恵美子さんと夕子さんとは銀座の「鯖料理専門店」で食事をしたが、今年は加奈子さんが選んだところの「まぐろ料理専門店」。偶然にも、回遊魚つながりである。類は友を呼ぶのだろうか……とも思う。
実は加奈子さんは、1カ月前に自転車で大転倒して、顔に怪我をされた。今は回復期にあるというが、まだテーピングが痛々しい。そんな最中、怪我をして初めての夕べは外食だったらしい。笑ったら傷口が痛むといいつつ、のっけから会話が弾んで笑い続けて、涙を流している。辛いところ、口が開かないので「マイストロー」でビールを飲んでもいる。
そんな次第で、3人の写真は怪しい加工が施されているが、来年はチャーミングな彼女が復活しているに違いない。恵美子さんとは、バンガロールにいたころから、「姉妹風」。今年もまた、去年に引き続いて、似ている。
翻って料理。これがまた、かなりおいしかった。また来たいと思わされる、おいしさ楽しさだった。
食後、コーヒーを飲もうとふらり立ち寄ったカフェが、昭和、いや大正ロマン漂う家具調度品が味わい深い店だった。ここはまた訪れたい。
限られた時間。あちこちを出回らず、銀座に集中。伊東屋と、GINZA SIXの限られた店舗を眺めるだけで、瞬く間に日が暮れた。
原稿料が図書券で支払われる某クライアント。2万円近く溜まっていたので本を購入。重い。
買うものの選択の変遷に、自分の嗜好の変化を見る。
伝統工芸。日常的に使用できる芸術。時を経て味わいが増す。壊れにくい。
審美眼も磨かれる。歳を重ねることの醍醐味。
というわけで、今回、思いがけず購入したのが、玉川堂の銅製急須。店内に入るなり……いや、店の傍を通り過ぎようとしたが、通過できない魅力が店内からほとばしっていた。
伝統の技が、「ちょっと見ていきませんか〜」と声をかけてくるのである。
陳列棚の、どれもこれもが、芸術品だ。単なる銅食器を超越した、その形状の美しさ。渋く深い色の品の良さ。
アーユルヴェーダでは銅のポットやカップに入れた水を飲むのが身体によいとされていることから、我が家もいくつかの銅製ポットやカップ類がある。
当然ながら、それらとは比にならない麗しさ、だ。
実は「ほどよい大きさで使い勝手のよいティーポット」を久しく探している。一時期はガラス製のポットを使っていたが、割れてしまった。
わたしは料理は毎日、自分で作るが、洗い物はメイドに任せることが多々ある。これまでの経験上、なぜか大切な食器やグラスなどに限って、割られてしまうことが多い。
ゆえに、大切なワイングラスなどは、自分で洗い、キッチンとは別の収納棚に収め、彼女には触らないでと頼んでいる。
しかし、銅製であれば、たとえ高価なものであっても、割れる心配はない。
お店の人の説明を受けているうちにも、だんだん、欲しくなってくる。実用的なサイズと上品な風合いのものが目に止まり、俄然、欲しくなってしまった。
お茶が2杯分ほど入るこの大きさ。手早く茶葉を捨てて洗うことができる機能的な形。持ちやすい取っ手……。理想的だ。
急須にしては、かなり高価であるが、一生ものである。しかも、使っているうちに経年変化で、色合いが変わってゆくという。劣化するのではなく、渋みが増すのだ。なんとも言えず魅力的ではないか。
というわけで、思い切って、台座もセットで購入したのだった。
ちなみに玉川堂(ぎょくせんどう)とは、江戸時代から続く新潟の老舗で、その銅器は無形文化財に指定されている。ホームページにあった「コーポレートスローガン」がとてもすばらしいので、転載する。
打つ。時を打つ。
玉川堂の魅力は、その歴史や技術だけではありません。
玉川堂の真の魅力は、お客さまが世代を超えて銅器をご使用くださる、
その「時」にあります。
機械力によって生産された工業製品の多くは、
お客さまの手に渡った際が最も綺麗で、その後褪せていきます。
しかし、職人が何回も銅を叩いて製作する玉川堂の銅器は、
お客さまと出会った瞬間から美しい「時」を刻み始め、
色合いが深まり、艶や味わいを増していきます。
そしてその美しさは、子へ孫へ、受け継がれていくのです。
私は、「打つ。時を打つ。」という言葉で、
玉川堂の銅器の持つ魅力を宣言します。
一生ものと言うには短か過ぎる玉川堂の銅器は、
限りない未来へ向けて、時と共に成長する生きた器です。
初めて手にされた時、そして日々使う時、
百年後の輝く姿を思い描いてみてください。
玉川堂7代目 玉川基行