以前からわたしの記録をお読みの方はご存知の通り、わたしは前回の一時帰国時まで、着物をきちんと着たことがなかった。ところが昨年秋の福岡で、着物のすばらしさに開眼。実家で半世紀ほども眠っていた母の着物を発掘し、インドへ送った。
そして、この半年余りの間に、
①着物とサリーの比較展示会
②着物とサリーの比較展示会(追加)
③手工芸品バザール(A HUNDRED HANDS)での着物展示
④茶事と着物の催し
⑤老舗宝石店での日本の伝統文化に関するプレゼンテーション
……と、振り返れば実に5回も、イヴェントを実施していた。
いずれの催しも、多くのインドの人々に関心を持ってもらえた一方、わたし自身、自分の身体の寸法に合った着物を持っておらず、浴衣も高校時代に作ったものを含め2枚しかない。
インドでイヴェントを催す際、袷(あわせ)の厚みある着物は暑すぎる。ゆえに今回の旅では、浴衣、もしくは単衣(ひとえ)の夏用着物などを入手するつもりであった。もちろん仕立てるのが一番だが、予算も時間もかかる。まだまだ着物初心者ゆえ、「数多く見て審美眼を養う」ことを目的に、ひとまずは、たまたまこの時期、開催されていた着物のリセール展示即売会に予約を入れ、赴いたのだった。
写真は「たんす屋/夏の祭典」の会場で撮影したもの。会場の方々にあれこれと丁寧な説明を受けつつ、それぞれの着物の背景を学ぶ。学んだすべてを記録に残したいくらいだが、あまりにも情報量が多すぎるのでここでは写真を載せるにとどめる。
1枚目の写真は、会場でひときわ目を引いた「キモノアール KimoNoir」で試着させていただいた1枚。上質の古い着物を、熟練の職人が1枚1枚丁寧に、黒く染め上げて生まれ変わらせた芸術的な作品だ。一度着られたきり、タンスの肥やしになっている艶やかな振袖などをアップサイクル、全く異質の美が誕生している。
パーティなどにも映えそうだが、今回は「直球の伝統的な手工芸品」購入を優先すべく見送り。しかし、こうして写真を見るに、振袖でも問題なく似合っている気がする。
このほか、初めて実物を目にした「辻が花」に見入る。辻が花とは、安土桃山時代を彩った着物の技法で、「多彩な絞り染め」を基調としている。絞り染めに「絵」や「刺繍」などが施された非常に艶やかな着物だ。
1986年にダイアナ妃が来日された際に贈られたもので、その場でおもむろに羽織られている姿が写真に収められている。最後の写真がそれだ。これを契機として、「辻が花」が海外でも知られることになったとのこと。
会場では、テーブルランナーにリメイクできそうな豪華な帯や、自分のサイズにあった総絞りのカラフルな着物を購入。その後、スタッフの方のいざないで、展示会場の近くにある「MEGAたんす屋 浅草着物」へ場所を移し、そちらで羽織や単衣のリユースを購入した。
今回、目に留まったのは「銘仙(めいせん)」という技法。ヴィヴィッドな黄色い絣の羽織に目が釘付けとなり、そこにあったもう1枚と共に購入。いずれも大正から昭和初期にかけて作られたであろうものだが、そのデザインの斬新さがたまらない。調べてみるに、柄は従来の和風のものにとどまらず、アールデコやキュビズムなど西洋芸術の影響を受けたものが多いとか。その誕生の背景もまた、面白すぎる!
……と、諸々深みにはまっている。兎にも角にも「ストーリー性のあるもの」を見つけるのが楽しく、友人らから購入を頼まれて羽織を探していたにも関わらず、自分のコレクションにしたいと思うものばかり。インドに戻ってひと段落したら、目録でも作りたいくらいだ。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。