インドネシアは、世界で最もムスリム(イスラム教徒)が多い国。信仰の自由がある国ながら、人口の87.2%、約2億人がムスリム、次いでキリスト教約9.8%、残る1.6%はヒンドゥー教ほか他の宗教とされている。そこにごくわずかの仏教徒も含まれているという。
インドで生まれた仏教は、マウリア王朝以降、4世紀のグプタ朝の時期に隆盛を極めたが、しかしヒンドゥー教やイスラム教とのせめぎあいのなかで衰退してきた。インドネシアもまた、かつては仏教隆盛の時代があった。
8~9世紀のシャイレーンドラ朝時代がそうだ。大乗仏教に帰依していたシャイレーンドラ朝の王によって建設された世界最大級のボロブドゥール寺院は、カンボジアのアンコール・ワットと並ぶ、東南アジアの貴重な文化遺産とみなされている。
ジャワ島中央部。いくつもの活火山に囲まれたケドゥ盆地の、小高い丘の上に建立された、「立体曼荼羅」の如き壮大なボロブドゥール寺院。
5万個を超える安山岩のブロックが、セメント的な接着剤が使われることなく積み重ねられている。先日訪れたエジプトで見たピラミッドを彷彿とさせる基壇だ。全高は約35m、ほぼ正方形に近い基壇は一辺が約120m。内部空間を持たない6層の方形壇と3層の円形壇からなるピラミッド構造で、中央に大きな仏塔(ストゥーパ)が屹立している。
この中央の仏塔へは、一般人が入場することは不可能で、回廊となった下部の各層を歩くことになる。ここはまた、三界(欲界、色界、無色界、あるいは地下界、人界、天界)を表しているという説もあるとのこと。
回廊の壁にびっしりと施された2,672枚のレリーフには、仏陀の生涯やインドの説話が刻まれている。これらはインドのグプタ美術の影響を受けているという。また、独特な釣鐘の形状をした72基の仏塔には、仏像が1体ずつ、納められている。壊れたままにされている仏塔からは、まるで「入浴中」のような塩梅の仏像を見ることができる。
火山の噴火の影響で、この界隈は久しく人間の住まないジャングルであったという。ここが「再発見」されたのは1814年、19世紀になってから。シンガポールの創設者で知られる英国人のトーマス・スタンフォード・ラッフルズによって見出されたという。その後、荒廃した遺跡はオランダ人によって修復が進められた。
ちなみにラッフルズは動物学や歴史学に強い関心を持っていたとのことで、自ら率先してジャングルを探検。今回、調べていて知ったのだが、世界最大級の花「ラフレシア」 (Rafflesia) は、彼の調査隊によって発見されたことから、ラッフルズの名にちなんでつけられたという。
ボロブドゥール寺院は、昨今では、ユネスコにより修復工事や調査が行われてきた。結果、東南アジアの仏教建築の最高傑作とされ、1991年に、世界遺産として登録されるに至っている。
見学に際しては、あらかじめの予約が必要。寺院内の見学は1時間限定だ。入り口のオフィスで登録し、専用の草履をもらって履き替える。靴によって、遺跡を傷められないようにとの配慮だ。
折しも昨年、天皇陛下がインドネシアを訪問された際に、ボロブドゥール遺跡を訪れたとのことで、草履に履き替えて見学なさっている様子がニュース動画に映し出されている。
今回、ボロブドゥールを知ったのは、今年3月。友人のYuko Chikusa Fujita藤田夕子さんと、娘の杜さんが、弾丸旅でバンガロールを訪れた際に我が家へ立ち寄ったときのこと。夫が夕子さんと話をしているときに、ボロブドゥールの魅力を力説されたとのことで、彼は今回の旅に盛り込んだ。このときに話が出なかったら、今回の旅は実現していない。
昨夜、麗しき月夜を仰ぎつつ、「Yukoに感謝だね」と、夫がつぶやいた。本当に。夕子さん、杜さん、ありがとう!
💖うれしい知らせを携えて、毎度、弾丸旅の母娘がバンガロールへやって来た!
https://museindia.typepad.jp/2023/2024/03/mori.html
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