我が父が他界してからの20年間は、年に一度、一時帰国をしていた。しかし、パンデミック明けからは、年に2回、帰るようにしている。福岡に暮らす母になるたけ会っておきたいというのが理由だ。今日、10月20日で86歳になった母。少々、物忘れが増えたようだが、それでも元気で一人で暮らせていることを、ありがたく思う。
一方で、年に2回の一時帰国となると、数カ月に一度帰っている気がするくらいに、高頻度に思える。前回、買い込んできた日本の食料品(昆布や海苔、高野豆腐などの乾物系)を、つい1年分くらい買ってしまい、使いきれぬまま、まだ残っている。計画的に買わねばと心する。
さて、一時帰国の直前は、予定を入れていなかったはずが、諸々の波が打ち寄せてきて、To doリストが厚くなる。ともかくは、優先順位を明確に、自分にやさしく無理せずに……を心がけているのだが。ジャーナルをめくれば、書いておきたかった出来事やエピソードの□が☑︎されぬまま、過去に取り残されているのを眺めて、それも気になる。
先日は、カルナータカ州の伝統玩具「チャンナパトナ」の写真を発掘して記録を残したが、もう一つ、やはり看過できない出来事を、遅くなってしまったが、残しておきたい。
🇮🇳
10月9日、インドの大財閥タタ・グループを20年以上に亘って率いたラタン・タタ氏が死去した。86歳だった。
タタ氏は、インドで最も国際的に認知されたビジネスリーダーの一人でもある。
この訃報を知ったとき、わたしはモルディヴ旅の途中だったので、じっくりと向き合うことができなかったが、ぜひとも氏について、知っていただきたく、ここに情報源をシェアしたい。
2014年7月、日経新聞の「私の履歴書」にて、ラタン・タタ氏の生涯が30回に亘って連載された。彼自身のことだけでなく、インドの優れた大財閥であるタタ・グループの背景、パールシー(ゾロアスター教)コミュニティの人々の歴史などが、非常にわかりやすく記されている。
彼の幼少期から10年前の76歳になるまでの生き様が、極めて率直に飾り気なく、具体的に描写されており、取材、執筆された方の力量にも感銘を受けた。なお、明治時代の日印綿貿易の経緯はじめ、ご自身の日本や日本人との関わりについても、交友関係含め、触れられている。
ラタン・タタ氏自身が言及されている通り、あまりプライヴェートを語らない人物だったようだが、ビジネスだけでなく、「元カノ」の話なども忌憚なく記されていて(若干、ツッコミどころがあるところも人間味があって興味深い)、起伏に富んだ内容だ。
わたしは10年前当時、この連載すべてを印刷してファイルに綴じ、今でも書棚に置いている。今回、日経新聞がタタ氏の訃報を受けて、当該記事をオンライン上にまとめていることを知り、改めて読み返した。わたし自身が、この連載でのエピソードをもとにリサーチをして日本とインドのライフスタイルセミナーの資料に色を添えたことも思い出した。
そして何より、彼の、いやパールシーのコミュニティにおける「慈善」や「社会奉仕」の精神に、改めて、感じ入る。連載を読み返して、心新たに、わたしも学び生きようとの思いだ。新聞の写真は、2024年10月10日のTimes of India。紙面が追悼に溢れていた。
米国留学時に航空機の操縦を学び、優れたパイロットでもあったラタン・タタ氏は、ここバンガロールで2年に一度開催される「国際航空ショー」でも、自ら操縦桿を握ってきた。そのことについても、以下のブログに残している。
わたしはムンバイとバンガロールの二都市生活をしていたころ(2008-2010)、同氏をムンバイ空港でお見かけしたことがある。記事にある通り、取り巻きの方などつけておらず、おひとりだった。……にもかかわらず、群衆の中に立っていらしてなお際立つ、それはそれは強い存在感を放たれていた。オーラがあるとはこのことか……とも思った。
氏を巡る物語は尽きない。
ラタン・タタ氏のご冥福を、心からお祈りします。🙏
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インドに暮らし働く方には、ぜひとも読んでおくことをお勧めする内容だ。
🖋ラタン・タタさん「私の履歴書」まとめ読み タタ・グループ名誉会長(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOKC1054T0Q4A011C2000000/
🖋日経新聞[私の履歴書]連載を読んで。ラタン・タタ氏に、よりいっそうの敬意を覚えた。(坂田のブログ)
https://museindia.typepad.jp/indiamedia/2014/08/tata.html
✈︎国際航空ショーの中の戦争。お元気ラタン・タタ。(2011/02/12)
https://museindia.typepad.jp/2011/2011/02/tata.html
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