木曜の夜、夫とともに、コラマンガラのイタリアンレストランへと足をのばし、米国IVY, MIT, スタンフォードのアラムナイ(同窓会)イヴェントに参加した。
バンガロール市街南部のコラマンガラは、最近、スタートアップのメッカとして注目を集めているエリアだ。
欧米、インドでもそうだが、ゲストとともに伴侶も誘われることは一般的。わたしも折に触れて夫についてゆくのだが、今回のイヴェントは、食関連のスタートアップ(ヴェンチャー企業)のプレゼンを含めたネットワーキングのパーティだということで、いつもより少し関心高めにでかけたのだった。
主催者ほか、顔なじみの友人らもそこここに。バンガロールに赴任したばかりの米国系NRIや、米国人駐在員ら、夏休みで一時帰国している在学生などの姿も見られる。
グラス片手にしばらく数名と語り合ったあとは、レストランの中央に特設されたスペースで、スピーカートーク。その前に、スタートアップのCEOらによる自己紹介が3分ほどずつ。数社の起業家たちが、自社のサーヴィスについて語る。
なかでも興味深かったのが上の写真の彼ら。コーヒーの配達を行っている。彼らのサーヴィスは知っていたのだが、個人的には利用するタイミングがなく、その味わい、クオリティ含め、どんなものかと思っていたのだが、かなり反響高く、軌道に乗っている様子である。
現在はコラマンガラやインディラナガールなど市街南部地域にしかデリヴァリー網ができていないようだが、今後、拙宅エリアにサーヴィスが拡張されたら、ぜひ試してみたいと思う。
■DropKaffe.com (←Click!)
ご覧の通り、洗練されたサイト。カフェラテなどが50ルピーというのは、今のインド都市部ではリーズナブル。我々がインド移住したばかりの2005年ごろは、BARISTA(デリー拠点)や、CAFE COFFEE DAY(バンガロール拠点)がコーヒーショップの先駆けとして全国に広がり初めていたころ。カフェラテ1杯が20ルピー程度だった。
それが10年後の現在、100ルピーを超えている。
このごろは、インディラナガールのスターバックスをよく利用するが、コーヒー1杯、小さいサイズでも150ルピーを超える。つい最近までの物価との違いに、支払いのとき、いちいち「高っ!」と、思ってしまう。
左の男性は、CHAIPOINTのCEO。インドのチャイの歴史を語ると長くなるので、軽く触れるが、そもそも英国統治時代に育まれた文化である。英国が植民地下のインドやセイロン(スリランカ)において、当時は中国でしか栽培されていなかった茶の木を持ち込み、栽培を開始した。
良質の茶葉はすべて輸出用。残った茶の屑などを牛乳と混ぜて煮出し、たっぷりの砂糖を加えたチャイを、インド庶民に広げた。リプトンやブルックボンドなどが、大規模な広告を展開したと言われている。
従来、インドでは茶は「薬」という認識があったことから、実は一般に飲まれていなかったのである。ゆえに、チャイ文化はここ100年余りの新しいものだ。
そのチャイは、街角のチャイスタンドなどで飲めるのだが、なぜか大抵、男達ばかりが群がっている。その超ローカルな雰囲気の中に分け入ってでも、インド移住当初は、そのチャイの味が好きで、しばしば飲んでいたものだ。
彼が始めたCHAI POINTは、いわば、洗練されたチャイスタンド、である。CHAI POINTもまた、デリヴァリーサーヴィスを行っている。チャイワーラーが街角に立ち、手伝いの少年などがグラスを運んで配達しているのも、日常的な光景だが、その現代版、とも言えるだろう。
■CHAI POINT (←Click!)
右の女性は、Mast kalandarという北インド家庭料理店からデリヴァリー・サーヴィスを開始した女性。彼女の語るエピソードも興味深く、インド食文化の深さ広さを再認識する。
■Must Kalandar (←Click!)
スピーカートークが終わった後は、再びネットワーキングと各自夕食。会場となったSerafinaは、ニューヨーク発のイタリアン。ニューヨークでは一度も立ち寄ったことのない店であったが、インドで初めて食べることになるとは。
ノンヴェジのアペタイザー盛り合わせ。かなりインドテイストが効いている。つまり、辛いものがあって、我が夫、ややご不満。
レモンチェロソースのエビ入りパスタ。これは、とてもおいしかった。他のパスタも試してみたいと思われる。
ゲストの一人に、デリーを拠点に世界各国のビジネス・ウーマンによるグループ All Ladies League の代表、ハービーンがいた。来年の5月に、5日間に亘ってフォーラムが開催されるとのことで、早速招かれた。
現在まだ日本人女性がいないとのことで、スピーカーとしても登壇してほしいとも誘われる。
プログラムの内容も、非常に多岐に亘り、面白そうだ。ちょうどそのころは、年に一度のニューヨーク行き、であるが、なんとか都合をつけて訪れたいと思う。
■ALL LADIES LEAGUE (←Click!)
わたしが初めてインドの土を踏んだのは2001年7月。結婚式のときだ。以来、15年。インドの食事情の変貌ぶりは、実に、目まぐるしくもすさまじい。
折に触れて、こうしてブログにも記してきたし、日本のクライアントからの依頼でリサーチをして、個人的に記録を残してもいる。それらを、ときに紐解けば、わずか数年前が遠い昔のようにも思え、常に最新の情報で状況を判断せねばならないな、との思いも強くする。
ところで下に添付している日経新聞の記事。先週のものだ。
日本に生まれ、現在も日印間でビジネスをするインド人男性が、バンガロール郊外で無農薬野菜の栽培を開始し、最近オンラインでもサーヴィスを始めた、という話しだ。
この記事を読むと、住んでいる者からすれば、少々、情報が偏っているとの印象を受ける。拙ブログなどを久しく読んでいらっしゃる方なら、インドには確かに問題のある野菜なども普及しているが、しかしオーガニックほか、安全な食品を手にするルートがあることも、ご存知だろう。
そもそも、数十年前のインドは、「オーガニック」が一般的だった。この国に農薬をもたらしたのは、米国のモンサントを始めとする先進国の大企業だ。食する野菜だけでなく、木綿の農家が、どれほどの悪影響を与えられて来たことか。その件については、これまでも、過去のブログなどで幾度か記してきた。
昔ながらの農法を取り戻そうとする活動家を始め、多くの人たちが自然回帰を提唱し、オーガニックブランドが増え始めたのは、なにもここ数年のことではない。
わたしがインドに暮らし始めた当初から、そのような活動はあったし、ブランドも増え始めていた。ここバンガロールに限らず、ムンバイやデリー、チェンナイなど都市部でも、オーガニックなど安全な食品を販売するネットワークは増え始めている。
インドは広い国である。階級差も所得差も著しい。率直に言えば、貧しい人たちが露店で購入する野菜の中には、危険なものが含まれている可能性は高い。
一方、海外からの駐在員が利用する店舗で、著しく状態の悪い野菜が売られているとは、考えにくい。利用するべき店の情報さえきちんと入手しておけば、問題ないはずだ。
なにしろインドに暮らす10年間、生鮮食品に関してはほぼ100%インドで入手できるものだけを口にしてきて、健康被害などなく、むしろ元気で生きている我々である。日本から持参するインスタント食品や加工食品ばかりを口にする方が、よほど不健康だ。
なぜ、このようなことを記すかといえば、このような記事を読むとまた、「インドとは安心して野菜も買えない暮らしにくい国だ」と思う人が増えることを懸念したからだ。尤も、バンガロールに現在住んでいる駐在員やその家族にも、現代をしてなお、インドの野菜は買えないと言う人は、少なからずいる。
それはあまりにも、好ましい趨勢ではないからこそ、力を入れている『インドでの食生活と健康管理』のセミナーでもあるのだ。
長くなるので、話を戻す。
インドにおいては、オーガニック食品などを嗜好する人たちは、同時に環境問題にも敏感で、サステナブルなライフスタイルを心がけている人が少なくない。
ゴミ処理問題が深刻なインドで、過剰なパッケージに包まれたものを喜んで購入するのは、ゴミ事情の深刻さについてを、あまり考えていない人たちであろう。
たとえば、食のブログにもしばしば記しているが、毎週火曜と金曜の2時以降、オーガニック店数店舗に、近郊農家から無農薬野菜が届くのだが、そこに訪れる人は、ほとんど自分の買い物かごを持参し、ドサドサと野菜を入れて行く。もちろん、わたしもビニル袋など使わない。
BigBasket.comというオンラインのスーパーマーケットは数年前より利用しているが、オーガニックのブランドによっては、ビニル袋を使わず、紙袋に商品を入れているところもある。もちろん、野菜の種類によっては、劣化が早まるため、ビニル袋を使っているものもあるが、たとえばジャガイモやニンジン、玉ねぎなどは、速やかに自然に還る紙袋で十分だ。
そのようなブランドの方が、わたしは個人的に好感が持てる。
実は、Facebookにて、バンガロールの食情報をフォローしているのだが、あるインド人女性の投稿で、この新聞記事に紹介されているFirstAgroのことを知った
■FirstAgro.com (←Click!)
このブランドの食品については、数年前からNature's BasketやFoodhallといった高級スーパーマーケットほか、ファーマーズマーケットなどでも目にしており、購入したこともあった。
ただ、上記の通り、きれいにパッケージに入ったものよりも、梱包最低限を好むことから、敢えて購入してはいなかった。
今回、オンラインでのデリヴァリーサーヴィスが開始されたとのことを知り、試しにと注文したのだった。サイトはその名も、SAKURAFRESH.COM。日本的である。
わたしは、試しにニンジンや大根、チンゲンサイ、レタス、アレグラ(ルッコラ)などを注文した。すると翌日、現在日本に滞在中だというCEOのナヴィーンより直接メールが届き、他の日本の野菜などをサンプルで一緒に配達してくれるとの旨、記されていた。
もちろん、わたしが日本人の名前だからこそ、のサーヴィスであろう。
メールには、バンガロール郊外にある農場への見学のお誘いなどもあった。個人的にも非常に興味深い。ミューズ・クリエイションのメンバーと、ツアーを組むのもいいかもしれない。
届いた野菜は、注文したものの他に、ミズナ、ミツバ、コマツナ、エダマメ、シソなどがあった。金曜日にそれらを調理した記録を、のちほど、食のブログに残すので、関心のある方は、後日見ていただければと思う。
野菜は美味だった。しかしオーガニックをうたうにしては、しつこいようだが、パッケージが過多であること、またシソなどはは、2センチほどの小ささで、とても商品としては成り立たないサイズであったこと、など、改善点はあるように見受けられた。
たまたま、金曜日のサロン・ド・ミューズが行われたときに配達されたこともあり、ミズナ、ミツバなどを見たメンバーが歓声を上げていたが、しかし、日本を離れて20年のわたしには、これらの野菜のありがたさが、今ひとつよくわからない。何に使うんだっけ……という感じである。
一方、エダマメは、とてもうれしい。茹でてすぐにおつまみになるし、ヘルシーだ。
そんなこんなで、ナヴィーンより感想をとのメールを受け取っているので、近日中に率直な感想をお送りしようと思っているところだ。
いずれにしても、安全な食の選択肢が増えることはありがたく、またうれしいことだ。このブランドに限らず、多くの人が利用することで、よりいっそうマーケットが活性化することを願う。