2日立て続けに、うさぎのアリスです。
実は昨日の夜遅く、NORAが帰って来たんです! みほさんとは18日ぶりの再会でした。
夜、寝る前や不在時、マルハンさんちのメタルの鉄格子は閉められているのですが(防犯のため、低階層の住居では一般的だそうです)、ダイニングルームから庭に通じるドアだけは、小さく開けられていました。鉄格子があるので、人間は入れませんが、猫らは隙間から入れるのです。
NORAが帰って来たときのために、ダイニングルームには、餌も用意されていました。
11時を過ぎたころ、とてもか細い鳴き声を立てて書斎に入って来る猫がいます。みほさんは、ROCKYが甘えているのかと思い、ROCKY! と声をかけながら立ち上がったところ……
そこには、NORAがいたんです!
「NORAは、もう戻らないかもしれない」と、気持ちを入れ替えようとしていた矢先だけに、みほさんは、とても驚きました。うれしそうな反面、少し心配そうな顔をしています。
というのも、NORAがすっかり、痩せていたのです。旅行で栄養をつけてきた飼い主の姿とは、ずいぶん異なっています。
革製の首輪はなくなっていて、鼻の頭には擦り傷がいくつかあります。顔つきもとても険しいです。そして、鳴き声が、まるで「蚊の鳴くような声」なんです。
身体はあまり汚れてはいませんでしたが、見るからに衰弱しています。早速、水と餌を与えましたが、いつもの乾燥したキャットフードは、あまり食べようとしません。
そこでみほさんは、冷凍庫の奥にあった、大きめの丸ごとの魚を取り出し、お湯につけて解凍、夜中に魚を捌き始めました。体調が悪い時には、新鮮な料理が一番だと思ったからです。
フィレの部分をフライパンで蒸し焼きにして、風味付けに「茅乃舎のだし」というのをふりかけていました。日本からわざわざ持って来たものだそうです。NORA、ぜいたくですね!
いつだったか、食べ物に関しては非常に拘りの強いNORAが、せっかく与えた魚を食べなかった時(味が薄い魚だったようです)、このだしをふりかけたら喜んで食べていたので、かけてみたようです。
ちなみに猫は塩分を控えめにしなければならないので、あらかじめ塩味がついているこのだしは、少量に留めなければならないと、みほさんは言っていました。
いろいろ、ありますね。
火が通った魚を、今度は冷ましながら身をほぐし、小骨を取り除いてツナ缶のようにフレーク状にしたものを与えたところ、これは喜んで全部食べていました。水もひとしきり飲んだので、一安心です。
みほさんが、温めたタオルで身体を拭いてやると、少し落ち着いたようですが、でも挙動不審なんです。ROCKYの匂いがする場所に近寄っただけで、フ〜ッと怒った声を出して威嚇します。よほどROCKYがいやになってしまったのでしょうか。
いつもは決してしなかった行動を取ったりもしました。たとえば、食器棚の上にジャンプしたり、やはり書斎の書棚の上にジャンプをしたり。中空を見つめて、見えない何者かに向かって、威嚇したりもしていました。怖いですね。
きっと神経が高ぶっているのだろうと思い、みほさんは、NORAを膝の上に載せました。いつもは嫌がってすぐに降りるのですが、この日は大人しくしていました。なんだか弱ってますね。
ところで、まるおさんですが、ムンバイへ出張中です。みほさんが電話をして、NORAの帰宅を報告したところ、
"Wow!! Amazing!!!"
と大喜びでした。
それから、まるおさんは、いかに自分がNORAを心配していたかを語り出し、次いでNORAの様子を細かに知りたがり、更には、「ROCKYとは当面、隔離するように」とか、「水をたくさん与えなさい」とか、「外に出さずにしばらく家で養生させておいて」とか、「明日、病院に検査に連れて行きなさい」とか、もうあれこれあれこれ語り出します。
みほさんは、たいへんげんなりしています。だいたい、まだ時差ぼけが残って、本調子じゃないし、早く物事をすませてしまいたいに違いないんです。
ですので、いつものように、「じゃあね」「じゃあね」と電話を切ろうとするのに、まるおさんは、いろいろと畳み掛けます。
NORAのことが、相当、心配なんですね!
夜は、みほさんの寝室のカゴの中に寝せることにしましたが、NORAはすぐにみほさんのそばに寄って行き、落ち着きません。
足下にもぐったり、お腹の上に乗っかったり、股間に寝そべったり……。その度に、みほさんは目が覚めますが、この日ばかりは、そばにいたいと思い、我慢していました。
夜中、突然、悪い夢でも見たのかミャアと鳴いてみほさんの顔に近づいてきました。そして、みほさんの眉毛をぺろぺろと舐めるんです。毛繕いをしているつもりでしょうか?
みほさんの眉毛、薄いのに!
アハ!
そんなこんなで、一度は、「よその快適な環境のもとに移住してしまったのだろう」と寂しく思っていたみほさんですが、NORAがこのおうちと、みほさんのことを慕ってくれていることがわかって、うれしくなりました。
でも、だからって、すぐに心が晴れるわけではありません。これから、どうするか、を考えると、やれなければならないことがいくつかあるからです。
ともあれ、朝を迎え、NORAはやはりキャットフードを食べないので、新たに魚フレークを作りました。
これだけたくさんの量をほとんど食べたので、まずは一安心です。けれど身体はすっかり軽くなって、ROCKYの方が重いくらいです。だからって、急にたくさん食べさせるのもお腹によくないかもしれないので、徐々に回復させた方がいいようです。
みほさんは、猫のこと以外にも、旅行中やデング中に滞っていたいろいろなことをせねばなりませんから、ROCKYのことを構っている時間がありません。メイドのマニさんには、「ROCKY BOY!」と呼ばれてかわいがってもらっていますが、マニさんもお仕事がありますから、一緒に遊んではあげられません。
ROCKYはNORAが帰って来ていることに気づいているので、とても会いたいようでミャオミャオ鳴きます。けれどNORAは、その鳴き声を聞くたびに、顔をしかめます。
ROCKYが、少し静かになったなと思ったら、ROCKYはみほさんたちのベッドルームにいました。
それが証拠に、新聞紙がとっ散らかっています。ROCKYの仕業です。
ペットを飼うことはたいへんなことだ、ということを、みほさんは、頭では理解していましたが、手がかからないはずの猫でさえ、こんなにたいへんなんだということを知り、やっぱり経験してみないとわからないことだらけだと痛感しています。
NORAが不在の間に何が起こったのか、わかりません。しかし、彼女の衰弱を見ていると、危険なトラブルに巻き込まれていたことには違いありません。自ら突入して喧嘩をしたりしたということも考えられますが、首輪がなくなっているというのが、気になります。誰かが外したのか、それともなにかに引っかかってしまい、それを外すのに苦心したのか……。
取り敢えずみほさんが決めたことは、
1.外は戦場なのだ、自由を奪うのとは違うのだ、と心に決めて、庭と室内で飼う。
2.普通の首輪は危険なので、ゴム製にかえる。屋内にいるときは外しておく。
3.ROCKYの去勢手術が終わるまでは、なるたけ2匹を隔離する。
4.NORAを病院に連れて行く。
1を実行するためには、庭の柵を更に拡張せねばなりません。見た目が悪くなってしまうかもしれませんが、この際、仕方ありません。今日の午後、早速、いつもの大工さんに来てもらい、見積もりを出してもらい、前払金を渡して、来週、工事をしてもらうことにしました。
大工さんに仕事を発注したあと、みほさんはNORAを病院に連れて行きました。近所の牛や鶏やヤギらが集うゾクゾク動物ランドな病院ではなく、NORAがかつて避妊手術をしてもらったこぎれいな動物病院です。車で30分以上はかかるのですが、きちんと検査をしてもらったほうがいいとのことで、遠出を決めたようです。
ここは猫の待合室です。病院は清潔ですが、隣の犬の待合室にいる犬たちが吠えるたび、NORAがおびえます。かわいそうですが、仕方がないので、カゴに手をいれて、みほさんが撫でてあげます。けれど、鼓動は早いままです。普段は強気のNORAだけれど、怖がりでもあるんですね。
この病院は、アポイントメントを入れるのではなく、緊急時でない場合は、順番を待つしかありません。けれど10分程度で順番が回って来たので、時間がかからなかったほうだと思います。
何人かの専門ドクターがいる病院なので、回転が比較的早いのだと思います。今日は、女医さんがみてくれました。
熱もないし、心拍数にも異常がなく、外傷もないとのことで、見る限りは大丈夫そうです。ただ、毛が抜けていること、食欲がないことなどから、食事やサプリメントのアドヴァイスを受けました。
体重は、1月には3.7キロあったのが、3.2キロになっていました。500グラムも減っています! みほさんがデング熱になったときに、ちょっとだけ減っていた体重と同じくらいです!
でも、みほさんの体重の500グラムと、NORAの体重の500グラムとでは、占める割合が違いすぎます! みほさんの場合は減ったうちに入りませんが、NORAの場合は、相当の減量です。
不在の間、ほとんど食事をしていなかったのでしょうか。本当に何があったのか……。ただ、戻って来てくれてよかった、としか、いいようがありませんね。
病院から戻って、声も出るようになり、少し元気になってきたNORAの様子を、出張中のまるおさんにも見せようと、みほさんはまた、iPhoneを片手に、不得意なセルフィーに挑戦です。
閲覧注意、だそうです。
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NORAの表情もよく、結構、うまく撮れた一枚、だそうです。ところでみほさん、短髪です。実は今朝、時間の合間を縫って、ヘアサロンに行っていました。バンガロールが暑いので、中途半端な髪の長さが鬱陶しく、ばっさりとショートにしたそうです。こんなに短いのは19年ぶりだそうです。
"Scary selfie :-) "
との返事が届きました。
やっぱり、ちょっと怖いですね!
夜には、動物病院から、血液検査の結果が、Eメールで届きました。ほとんどは正常値内ですけれど、SGPTというのだけが、正常値を離れてかなり高いです。
SGPTってなんですか?
と、みほさんがつぶやきながらインターネットで調べたところ、
「血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ」と出てきました。益々、わかりません。が、この数値が高いと、肝臓などに問題があるケースが多いそうです。
検査結果に基づき、問題があれば治療法や投薬を考えましょうとのことでしたので、明日の朝、みほさんはドクターに電話をかけるそうです。
NORAを飼い始めた直後は、「猫に健康診断? 必要なのかしら?」などと笑っていたみほさんですが、この10カ月の間にすっかり変わりました。
自分や家族の数値を見るときと同じように、検査結果を目で追っています。ペットは家族みたいなもの、だとよく言われるけれど、本当にそうなんだなあ、厄介だなあ、とみほさんは思います。
ちなみに女医さんいわく、オス猫の去勢の時期は生後6カ月か7カ月がいいとのこと。インターネットで調べると、1歳近くまで待った方がいいなど、いろいろな情報が錯綜していて、わけがわからないそうです。ともあれ、ROCKYはまもなく生後半年になるので、近々検査に連れて行くそうです。
MOCHAのこともありますし、このごろはJULIEやMADAMEも加わって、いったいどうなることでしょう。
マルハン家はこれからも、猫まみれの日々が続きそうです。
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