月曜日の早朝にみほさんとまるおさんがニューヨークから戻って以来、瞬く間に一週間がたとうとしています。
その間、まるおさんはハイダラバードというところへ出張へ行ったり、重要な打ち合わせがあったりと、ご多忙で、疲労困憊のご様子です。
みほさんもまた、家事やお仕事、ミューズ・クリエイションの集まりなどをして、瞬く間にいつもの暮らしに戻っているのですが……。
みほさんは、NORAに振り回されて、睡眠不足の日が続いていました。ですから昨日の土曜日は、夜のお出かけを除いて、概ね「泥のように」寝ていましたよ。みほさんだけでなく、NORAもROCKYもJACKも、そしてまるおさんも。
たっぷり寝たので、今日は、少しずいぶんすっきりしたご様子です。お天気もよくて、空気も軽く、とても気持ちのいい日曜日ですよ。
ところで、疲労困憊の理由は、ほかにもあります。猫関係で、いろいろな出来事があったんです。
前回のレポートで、NORA姉さんが「第二次半野良生活」に戻ったことはお知らせしました。以来、本当に、一日に何度も、自由気ままに、外へ散歩に出ています。
NORAが外を出歩くようになってから、ROCKYは窓辺のベッドでくつろぐことが多くなりました。NORAの帰りを待っているみたいです。寝ているときに、NORAが帰ってきて、
「開けて。はやく網戸開けて」
と、みほさんにミャオミャオ催促します。
みほさんが不在のときには、網戸を開けたままにしておくのですが、蚊が入ってきたりして、不都合です。それにそのときには、ROCKYやJACKを書斎に入れないようにしなければなりません。網戸から逃げたら困りますからね。
それなりに注意が必要です。
NORAが外を出歩いているときには、ご近所パトロールや近隣猫への威嚇など、いろいろな任務があるようで、帰って来ると疲れのせいか、熟睡します。
そしてご飯をよく食べます。
ニューヨークから戻って以来、みほさんは時差ぼけがある上に、NORAが変な時間にベッドルームへ入ってきたり、ドアを閉めていれば「入れてください!」と外でミャオミャオとうるさく言ったりして、とにかく睡眠を妨害されていましたから、疲れがなかなかとれませんでした。
睡眠不足はみほさんが最も苦手とするところ。頭がクリアでなければ仕事が捗りません。ですから、毎日午後、30分ほど仮眠をとっていました。短い時間でも、仮眠をとると、頭の中がとてもすっきりするんだそうです。
ところが、仮眠を取っているときでさえ、NORAが入ってきて、みほさんの股間に横たわります。変態ですね!
と言いたいところですけれど、猫というのは、聞くところによると、人間の股間でくつろぐのが好きなようです。みほさんのお友達の猫もそうだそうです。股間デルタ地帯でくつろぐんだそうです。
デルタ地帯って、何ですか?
NORAはといえば、外に出て、野生の血が騒いでいた割に、一応、みほさんに対してのフォローもしているところが、ぬかりありません。「みほさんのことも気にかけてますよ」の意思表示のようです。
しかし、みほさんの上で寝るだけならまだしも、「毛繕い」を始めたりするので、みほさんの安眠を妨害します。
みほさんは、寝ている時にまるおさんの手などが少しでも自分に当たろうものなら、「じゃま!」と言いながら、はね飛ばす勢いで、ベッド中央にあるらしい、目には見えない境界線の向こうに、戻しますのに。
しかし,NORAに対しては、なぜか逆らえません。じゃまだと思いながらも、我慢するんです。健気ですね!
JACKは人間と接触するのが好きですが、特にミューズのお姉さんたちが集まる金曜日が、とても好きみたいです。この間なんて、お姉さんがちょっとしゃがんだ隙に、スカートに潜り込んだんですよ! 立ったままでも、長いスカートの人がいますと、潜り込んでいくんです。
変態ですね!
変態なのに、お姉さんたちにチヤホヤされて、いいご身分ですよ! まだ子どもだからって、甘やかされてますね!
とはいえ、JACKはもう、生後9カ月くらいになります。NORAがマルハンさんちに初めて来たときには、まだ7カ月ぐらいでしたから、当時のNORAよりはお兄さんのはずなのに、末っ子のせいか、まだまだ子どもっぽいです。
身体も、ROCKYに比べるとだいぶ小柄です。ROCKYはこのころ、すでに「デブロ」になり始めていた気がします。声変わりもしていました。しかしJACKは小柄なせいか、声もまだ子どもっぽくて、甘えん坊キャラっぽいです。だからお姉さんたちにもチヤホヤされてます。
実は先日、まるおさんが出張から帰ってきた夜、NORAが家出をしました。まるおさんが帰宅する30分ほど前のことでした。
まるおさんはNORAに会えるのを楽しみにしていましたのに、結局丸一日、戻ってきませんでした。
翌日、まるおさんは、帰宅するや否や、「NORAは帰ってきた?」と確認します。「まず最初に、ただいま、でしょ?」とみほさんは憤慨します。みほさんよりも、NORA優先なんですよ!
夕飯を終えたころに、ようやくNORAが戻ってきて、まるおさんもうれしそうです。
そんなNORAはといえば、どこまでお出かけをしていたのか、身体が埃っぽくて、足も汚れています。汚れきったNORAを見るのは、久しぶりのことです。
思えば、第一次半野良生活を送っていたころは、しばしば、埃だらけで帰ってきていましたからね。軽く叩くと、埃が舞うくらいに!
こんな汚い足でベッドなどに入って来られては困ります。NORAはきれい好きなので、たちまち毛繕いをしてきれいになりますが、半野良生活がはじまったので、ときどきシャワーを浴びさせねばなりません。
ちなみに今までは、シャワーなしです。猫らは自分たちできれいに毛繕いしますから、たまにノミ除けのスプレーをふりかけるくらいで、あとは放置です。
普段は、NORAがいるとROCKYは遠慮しているのですが、今日はNORAと一緒に過ごしたいのか、ジャンプして並んでいます。するとJACKも上りたがります。今までジャンプできませんでしたけれど、この日はじめて、本棚の上に飛びましたよ!
ところで、昨日の朝は、一つの事件がありました。また事件ですよ!
みほさんが寝ていると、書斎で寝ていたはずのNORAが、ベッドルームのドアの向こうでミャオミャオといってます。時計を見ると、まだ朝の5時ごろです。
NORAはといえば、どうやら外へ出たいと催促しているようです。前日の夜、雨が降っていたので、この日は3匹とも室内に入れて、みほさんたちは就寝していました。
外はすでに雨が止んでいます。みほさんは寝ぼけ眼で窓を開け、NORAを外に出しました。ところが、それから二度寝しようとしても、寝付けません。これが、時差ボケ、というものらしいですよ。眠れないけれど、仕事をする気にもならない。読書などもしたくない。というわけで、みほさんは、庭の掃除や草むしりを始めました。
そうすると、ROCKYやJACKも起き出して、庭を駆け回って遊びます。
みほさんは、実は庭の掃除が好きなんです。特に、石畳に降り積もる落ち葉やブーゲンビリアの花などを掃き清めるのが、好きなのだそうです。でも、インドには、使い勝手のいい庭箒がないので、なんとか日本から持ってきたいと思っているそうです。
棕櫚箒(しゅろほうき)というものらしいです。いっそインドで、日本の伝統的な棕櫚箒の作り方を伝授したい、とさえ思っています。
インドでは、大抵の住宅の床が大理石やタイルなので、掃除機よりも箒が実用的なんです。メイドさんも箒を使います。でも、どれも使い勝手が悪いんです。
【閲覧注意!】
さて、みなさん、ここから閲覧注意ですよ! 久しぶりですね! なんだかゾクゾクしますね!
諸々の描写において、「不快感」を与える可能性がありますから、心の準備ができてない人は、読まないでくださいよ!
みほさんが箒で庭の掃除をしていたら、塀の向こうから「ムワオ〜ムワオ〜」という鳴き声が聞こえました。この懐かしい響き! そうです。NORAが獲物をくわえている時に発する鳴き声です!
「ムワオ〜ムワオ〜」
の声に、ROCKYが興奮して塀に駆け寄ります。すると、NORAが例のパーティション伝いに帰宅して、バルコニーの屋根に上りました。
案の定、ネズミ(小)をくわえています!
あんなものを部屋の中に持ち込まれては困る! 書斎の網戸を閉めなければ! とみほさんは慌てましたが、NORAはどうやら、家に入るつもりはないようです。
口にネズミをくわえたまま、今までは飛び降りたことがなかったのに、このときはじめて、屋根からコンポストに飛び降りました。
そして、JACKにネズミを与えたら、「ひと仕事終えた」という感じで、ゴロリと横たわりました。
その様子を見て、みほさんはたいへん強く、心を打たれていました。
そして、NORAに対する諸々の感情に対して、反省さえしました。NORAは、自由を求めて外へ出たいだけではなかったのだ、ということに、気づいたのです。
思い返せばROCKYが小さいころにも、こうしてネズミなどを捕獲しては、与えていました。
小さいころからみほさんたちに保護されて、野生で生き延びる術を知らない弟たちへ、NORAは教育をしているのです。
ROCKYが来る前、まだNORAが一人だったころは、自分で捕まえた獲物を、みほさんやまるおさんに見せびらかしたあと、ひとしきり遊んで、そして食べていました。
しかし、思い返せばROCKYが来て以来、自分で食べることはほとんどなくなりました。
ROCKYはといえば、それを見守っています。ROCKYは弟に遊ぶ機会を与えようとしているのか、少し腰がひけているのか、そのあたり、微妙なんです。
そしてついには……JACKがねずみを食べ始めました! みほさん、朝っぱらから、胃が痛くなる思いだそうですが、我慢して近づきます。
「わ、マジで食べ始めた」
という顔をしています。
いつもなら、ねずみを途中で取り上げて処分をするのですが、これはNORAが時間をかけて捕獲してくれた、JACKへの初めてのプレゼントですし、JACKも一度くらいは、野生の味を知っておくべきだとみほさんは判断したので、今回は見守ることにしました。
野生の生き物には、病気などを持っていることもあるので、お腹を壊されても困るなとみほさんは思うのですが、少しくらいの免疫力は付けておいて欲しい、たくましく育って欲しいとも思うのです。
ROCKYは、「うひ〜」という顔をして、JACKの食事風景を眺めています。NORAは「よしよし、それでこそ、元野良だ」と、JACKの健闘を温かく見守っています。
姉であり、師匠ですね!
ROCKYは、いやそうな顔をしていましたけれど、最終的には、JACKが食べ残したネズミを、少しだけ、食べていましたよ。少しくらいは、男気があったようです。
初めて「生肉」を食べたので、ゆっくり消化しながら寝ているのだと思います。
この日はNORAも、夜まで外出することなく、ずっと寝ていました。ひょっとすると、ここ数日、なかなか自宅に寄り付かなかったのは、獲物を見つけるために、寝食を忘れて見張っていたのかもしれません。
実は、このネズミについては、みほさんには思うところがありました。
実はニューヨークからのお土産に、まるおさんは羽根のついたおもちゃの他に、ネズミのおもちゃを買ってきていました。
小さなネズミのぬいぐるみです。
このネズミは、動かすと小さく音がして、JACKは大のお気に入りで、毎日遊んでいました。しかし、NORAはといえば、その様子を冷たい目で見ていました。
思えば、NORAは、そんな「猫だまし」な玩具で盛り上がるJACKを見て、情けなく思っていたのかもしれません。
実は数日前、みほさんは、ネズミの玩具で遊ぶJACKの動画を撮影していました。まるおさんが出張から帰って来る30分ほど前のことです。まるおさんのお土産に喜んでいるJACKの様子を、まるおさんに見せて上げたかったのです。
ところが、このとき、NORAは超不機嫌でした。まず、みほさんが用意したごはんを、ROCKYとJACKが食べ終えたのに、NORAは知らん顔して食べませんでした。
なのに、ミャオミャオとうるさいんです。今まで、ミャオミャオとうるさいときは、ごはんを食べたいときか、家の外に出たいときかのいずれかでした。
今となっては、自由に外に出られるわけですから、みほさんは、「お腹が空いているのだろう」と思って、ご飯をたべなさい、と言うのですが、NORAは食べないんです。
この動画の中でも、みほさんはNORAにいらっとして、ずいぶんぶっきらぼうに対応しています。ちょっと、怖いんです。
でも、今思うと、彼女はごはんを食べたかったわけではないという風に、みほさんは思いました。
「わたしの弟に、あんな玩具で遊ばせるな」と、抗議していたように思うのです。猫を舐めるなよ、とでも言いたそうな、顔をしています。今思えば。
この直後、まるおさんを出迎えることなく、NORAは出かけて、結果24時間以上も戻りませんでした。そのときは獲物がありませんでしたが、その後、雨のあとに、ついにはネズミを捕獲した次第です。
思い返せば、モンスーンのころは、ネズミが多発します。特に雨のあとは、穴蔵から出てきたネズミがうろうろしているんです。
みほさんちもNORA以前は、この時期、庭に大中小のネズミが出て困っていました。今では猫らがいるので、ほとんど出ませんけれどね。
NORAは、雨後が狙い目。とわかっていたからこそ、みほさんたちを起こしてまで、猟に出たのでしょう。
本当に、賢い猫です。
ちなみに、昨日も、そして今日も、NORAはほとんど外には出ず、家の中ですやすや寝ています。よほど、疲れたのでしょうね。
それもこれも弟への教育のため。NORA姉さん、本当に立派です!
立派だけれど、これからモンスーンの季節に本格突入し、ねずみの季節にもなります。NORAがこれから、次々にお土産を捕獲してきたらどうしよう……と、みほさんはまた、新しい悩みに直面しているところです。
猫との生活は、本当に、いろいろありますね!
それではみなさん、ごきげんよう!