インドで生活していると、触れ合うことの多い「アーユルヴェーダ」という言葉。今後、このブログで頻出するキーワードになるであろうアーユルヴェーダについて、数回にわけて説明しておこうと思います。
日本ではオイルを使ったマッサージのことだと捉えられているようですが、それはあくまでも療法の一部にすぎません。
アーユルヴェーダ(आयुर्वेद aayurveda)とは、5,000年以上前からインドに伝わる伝統的な学問で、日常生活に於ける「自然の法則」を説いたもの。心身を疾病から防ぐをこと、あるいは病んでしまった心身を癒すことを目的としています。
サンスクリット語のアーユス(生命、長寿)とヴェーダ(科学、知恵)が語源であることからもわかるように、医学だけでなく、生活の知恵や生命科学、さらには哲学の概念も包摂、インド占星術との関わりも深いそうです。
アーユルヴェーダの専門医になるには、相当の勉強が必要で、わたしが以前かかっていたドクターも、アーユルヴェーダ学を10年に亘り学んだとのこと。彼曰く、
「アーユルヴェーダは、病気を治すことよりも、まずは病気にならない身体作りを目指しています。仕事や生活の人生設計を立てるのと同様に、身体も5年後、10年後を見据えて、今の生活習慣を整える必要があるのです」
とのこと。身体の5カ年計画。それまでのわたしは、考えたこともありませんでした。
若くて元気なうちは、具合が悪くなって初めて病院や薬に頼るなど、自分を追いつめてしまいがちです。以前のわたしも、慢性的に患っていた腰痛を治すことだけを考えていて、とても10年後の自分を想像してはいませんでした。
しかし、日々、自分の身体の声に耳を傾けながら、病気を防ぐべく健康的な生活習慣を身につけることが大切なのかもしれないと、ドクターの話を聞いて思い至りました。
さて、「自己治療の科学」とも呼ばれるアーユルヴェーダは、体内の治癒力を活性させ、免疫力を高めることによって、病気になりにくい身体を作ります。
食事や栄養のバランス、睡眠時間、リラクセーション、瞑想、エクササイズ、呼吸法など、さまざまな側面から心身にアプローチします。
人間を精神面、肉体面からホリスティック(総合的)に捉えつつ、心身ともに健康的な状態へと導くのです。心身が正しく調和・維持されたとき、それは「健康な状態」と見なされます。
いずれにしても、大切なことは、「自分の身体の特長を知ること」です。
わたしがアーユルヴェーダに出合って一番、新鮮に思ったのは、「人それぞれに、身体によいものが違う」ということです。当たり前のように聞こえますが、これが実は、意外におざなりにされている事実です。
たとえばテレビ番組で「唐辛子がダイエットに効く!」とか「朝食にはバナナのみ!」とか、「納豆を食べまくれ!」みたいな情報が流れると、日本人の多くは、つい影響されてスーパーマーケットに走りますよね。
かくいうわたしも米国在住時代は、それなりに影響されていました。日本人の友人が「激やせした」との情報を得て、キャベツをひたすら食べてみた時期もありました。
しかし、このように食習慣は、決して正しいことではありません。
人それぞれ体質が異なるのですから、自分の体質に合っているかどうかわからない食品を大量に摂取することは、好ましくないのです。
刺激物は合わないのに、タンパク質は控えた方がいいのに、過剰にとりすぎた結果、身体のバランスを崩して、むしろ不健康な身体作りをしてしまうことになります。
少々ややこしい話になりましたが、アーユルヴェーダには「おばあさんの知恵」のような、たやすく暮らしに取り入れらる生活へのアドヴァイスもたくさんあります。
それら知恵についても、これから少しずつ、紹介していく予定です。
アーユルヴェーダのマッサージに使われるオイルなどが入ったトレー。アーユルヴェーダの発祥地であるケララ州の診療所にて。
アーユルヴェーダの治療に用いられる薬草、薬木類の数々。アーユルヴェーダの治療薬の特長は、副作用が一切ないこと。
ヤシの葉に刻まれたアーユルヴェーダの処方箋。古来から伝わる処方箋はサンスクリット語(梵語)で記されているらしく、専門医になるにはサンスクリット語の勉強も必要なのだとか。
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