●華氏と摂氏のはざまで。クリケットで熱い夜。
月曜の夜、静かな夜。アルヴィンドは今朝、コロンボ出張へ。コロンボとは島国な隣国スリランカの都市(旧首都)だ。
夕べから具合が悪いと言い出し、就寝時には華氏99.8度ほど熱があったのだが、毎度おなじみアーユルヴェーダの民間療法にて、温かいミルクにターメリック(うこん)パウダーとはちみつ少々をいれたものを飲ませ、温かくして寝てもらった。
寝ている間にずいぶんと汗をかいていたようだが、今朝は99度になっていた。ちなみに体温計は、米国時代に購入したものゆえ、華氏表示なのである。
1泊とはいえ、そして近場とはいえ、熱を出しての出張はかわいそうだが、この程度の熱で出張に行かないというのもないだろう。仕方がないだろう。
ところでわたしは、2、3年に一度くらいしか熱を計らない。そもそも寝込むような熱を出したのは、いつだったかも思い出せない。明らかに覚えているのは、大学3年時のクリスマス。ついこの間のことだな。
クリスマスイヴの夜、友達のピンチヒッターで、バーのカウンターレディ(という呼び名がすごいな)をやったのだが、その翌日、高熱を出した。
普段はロイヤルホストやワールドコーヒーのウエイトレスをやったり、玩具店のクリスマス商戦要員となったり、「牛力」というステーキ&釜飯レストランで力仕事なウエイトレスをやったり、ウインドサーファーたちの集まるカフェ「パプア」でウエイトレスをしたり、シーモール下関のイヴェントで巫女さんをしたりと、比較的健全なアルバイトばかりしていたせいか、「夜のお仕事」は、向かないバイトだったらしい。
それにしても、なんて寂しいクリスマスイヴ&クリスマスだったろう。ちなみに当時のボーイフレンドは関東在住だったので「遠距離恋愛」だったのである。高熱の中、クロネコヤマトの宅急便で受け取った彼からのクリスマスプレゼントは時計だった。
ああ。自分で書いておきながら、なんだかとてつもなく、恥ずかしい。というか、どういう話題の飛躍だ。
そんなどうでもいい過去の話はさておき、わたしの場合、「具合が悪くなったな」と思った瞬間に「悪化防止態勢」に入るので、さほど悪化しないのだ。
ひょっとすると熱を出しているのかもしれない。でも、体温を測ったところで熱が下がる訳じゃなし、体温が高いとわかったら余計に具合が悪くなりそうなので、計らない。
だから実のところ、華氏99度が、摂氏何度なのか、よくわかっていないのだ。わかっているのは、「100度を超えたら、やばいかな」である。
……。
今、調べてみた。100度は、37.776度。99度は37.22度。
ま、微熱程度だな。100度と99度じゃ、えらい違いに思えるが、摂氏だと、ほとんど似たようなものだ。
それはそうと、今宵静かな夜。の静寂を時折破るは、どこからともしれぬ、近所からの、遠くからの、複数の歓声。今夜はクリケットマッチのファイナルらしい。
先ほど、スリランカなハニーに電話をした。普通なら、仕事が終わったら電話をくれるのだが、今日はない。具合が悪いのだろうかと心配していたのだが、晴れやかな声だ。
「今、クリケットの試合、見てるとこ!」
「熱は?」
「99.8度あるけど(体温計持参)、クリケット見てるとこ!」
「夕飯は?」
「今、ルームサーヴィス、頼んでるとこ。今、大事なところだから! ミホもテレビ付けて見たら? じゃ、またね!」
……。
心配には、及ばないようだった。
ちなみに99.8度とは、37.665度。
ま、そもそもが体温の高い男だし、たいしたことはないということだろう。
夫の精神衛生向上のためにも、そして明日のインドの平和のためにも、インドチームには勝っていただきたいものだ。
●今日もまた、聾学校で折り紙教室
本日は、「あじさい」と「蓮」をテーマの折り紙ヴォランティアである。子供たちは、相変わらず元気だ。
本日、わたしが担当したグループは女子ばかりだったせいか、いつもよりまとまりがよく、みな横道にそれることなく、きれいに仕上げてくれた。
いつもは、彼らが音を拾えないのだとわかっていても、ついつい大きな声でしゃべってしまう。けれど今日は、できるだけ、身振り手振りで伝えようと思った。かすかに聞こえる子どもがいるにせよ。
音のない世界を、少し共有するような気持ちで、と思うが、まったく想像ができない。
表情を大きくすることで、コミュニケーションを図る。
限りなくしんとした世界に暮らしている彼らのその世界を、わからないが、彼らが笑っているようすを見られるのは、うれしい。
彼らもまた、わたしたちと過ごすこのひとときを、うれしい思っていてくれたなら、よりうれしい。