昨今、国際女性デーとは、ジェンダー論や女性の社会における不平等など、不都合なことを取り沙汰されることが多い。昨年も記したが、個人的には、これまでの人生「男に生まれればよかった」とか「女だからうまくいかなかった」といった事態に直面したことはあまりない。
「恵まれているからだ」と言われそうだが、まあ、そうかもしれない。ただ、物事の捉え方や視点の置き方など、「自分自身の心がけや努力」で好転させられることは少なくないとも思う。男も辛かろうと思う場面は多々ある。すなわち人間それぞれ、何かを抱えている。
わたしは子どもの頃から「体格のいいお嬢さん」と言われ、体育会系で非モテ女子だった。加えて、「女性ならでは」の出産の経験もない。それでも、女に生まれた今世を、楽しませてもらっている。
今年も昨年に引き続き、YPOのイヴェントに参加。昨年は、市内のお洒落なビューティーサロンを貸し切ってのビューティートリートメント三昧だった。
今年は、ボリウッドのセレブリティスタイリスト、アミ・パテル (Ami Patel)を招いてのトークとパーティが開催された。プリヤンカ・チョープラーやアーリヤー・バットなど、ボリウッドの名女優たちをスタイリングする彼女から、昨今のインド・ファッションのトレンドや提案などを聞く。
会場は、市街西部のPhoenix Kessaku。まさに日本語の「傑作」から取られた名前だ。久しぶりに高層から、バンガロール市街を見下ろして心地がよい。一隅からは、世界最大の給食センター「アクシャヤ・パトラ」の母体でもある「ハレ・クリシュナ」のイスコン寺院も見下ろせる。
なにかしら、シュルレアリスムな感覚にとらわれる。
🌻
誰もサリーを着てこないだろう……とは、思っていた。
かつては、日本人のわたしが一人だけサリー姿というのが居心地悪く、着る機会が少なかった。しかし、昨年より積極的な着用を始めた。何かと目立つが、着たいものを、着たいときに着る。そう決めた。
アミ・パテルのプレゼンの冒頭は、サリーがテーマだった。若い世代へ向けてのサリーの「新しい着方」の提案など。そのとき、彼女がわたしの方を見て名前を尋ね、着こなしを褒めてくれたのだった。
「このサリーはひまわりの花がモチーフです。ひまわりは、ウクライナの国花なのです。」
そう言うと、会場から「おお、なるほど〜」の声が上がった。
実は昨日の朝、もう聞くまいと思いつつも、ラジオでニュースを聞いていた。大勢の、ウクライナの妊婦たちが、地下鉄や避難先での出産を余儀なくされているという。泣けてくる。しかし、毎度記すが、元気でいられる人たちは、元気でいなければならない。過度な感情移入は世界を闇に包むばかり。
本当は水色のサリーを着ていく予定で準備していたのだが、ラジオを聞いた瞬間に、このひまわりのサリーを思い出した。今から14年前、コルカタへ出張に行った際に購入した。ハンドブロックが施された、綿と絹の混紡の、軽くてやさしいサリーだ。
黄色いサリーと、青いバッグという、ウクライナ国旗🇺🇦の組み合わせで、出かけたのだった。
1970年公開の『ひまわり』。20代のころ、心を揺さぶられた映画のひとつだ。マルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレンが主演、戦争によって切り裂かれた男女の悲劇を描いた名作だ。
米ソ冷戦時代に、イタリア、フランス、ソ連、米国の合作により、ソ連でも撮影された「稀有な映画」である。週末ともなると、ひたすらに映画を見ていた東京時代。個人的な経験と重なって、悲恋物にはことのほか、感情移入をしがちだった。この映画の遣瀬なさといったら、ない。戦争によってずたずたにされる人々のライフ……。
8月生まれのわたしは、自分のテーマとなる花はひまわりだと、子どものころから思い込んでいた。その実、百合のような清楚な花に憧れ、元気一杯の丸顔なひまわりを、あまり好きではなかった。しかし、この映画を見てから、ひまわりに対する印象が変わった。
「見渡す限りのひまわり畑を見たい」と切望した。実は、この映画のひまわり畑は、「ソ連時代のウクライナのヘルソン州」だということを、つい先日、知った。
知った上で、この映画を思い出すと、よりいっそう、今、彼の地で起こっている出来事の理不尽を思う。
……思いは尽きぬが、わたしは女性に生まれたことを大切に思いながら、これからも生きたい。
◉STYLE BY AMI
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◉語るブログ/音声付き 〜国際女性デーを愉しむ〜(2021年3月8日)
https://museindia.typepad.jp/2021/2021/03/beauty.html
◉コルカタ出張最終日。この街らしさを、買いに行く。(2008年10月17日)
https://museindia.typepad.jp/2008/2008/10/kolkata-e5b7.html