先日、2日間に亘って開催した着物とサリーの比較展示会。わたしの予想通り、多くの友人知人に関心を持ってもらえた。日本とインドの、時空を超えたテキスタイルの結びつき。交易の歴史を映す類似の意匠。熟練の技術を持つ「職人」が創る芸術的な「衣」……。それらを直に見て、触れて、堪能できる稀有な展示会である。
当初は2日間だけで終える予定だったが、年の瀬の28日、日本から訪れるインターンの学生たちに向けてセミナーをすることになっている。せっかくなので、彼らにもこの展示を見せようと考えた。さあらば、年末は旅行に行くわけでもなくバンガロールで過ごすので、展示会に来られなかった友人たちに、再度、声をかけて、さらに2日間の展示会を開くことにしたのだった。
今日は5名のゲストがご来訪。友人Kanikaは、昨年の京友禅サリーの展示会に長女と二人で来てくれたが、今回は次女と一緒に来訪。11歳の彼女も、サリーと着物の共通する美に関心を持ってくれた。彼女は折り紙も大好きで、部屋の壁に折り鶴をディスプレイしているという。
ところで絞り染めの羽織と、久留米絣の羽織を羽織って、記念撮影。先日も記したが、羽織はサリーの上に着るのにぴったりの上着だ。南インドではさほど寒くはならないが、北インドは冬になると冷え込む。サリーの上にパシュミナを巻いたり、カーディガンを着たりする人が多数だが、この羽織、サリーの意匠とも調和して、非常によいと思われる。
その後は、女性の勉強会のメンバーである女性が、彼女の友人を2人連れて来てくれた。パールシー(ゾロアスター教徒)だという二人。個人的にわたしが強い関心を持っているコミュニティで、これまでにも幾度となく記して来た。パールシーの友人知人らとは、衣食住全般において、嗜好が非常に似通っており、わたしの前世はパールシーだったのではないかと、常々思っている。
パールシー刺繍のサリーや、Ashdeenの刺繍のすばらしさなど、衣類の話に止まらず、パールシー料理の本なども引っ張り出して来て、月光ライブラリのなかにも話題が尽きない。多くの人に見てもらいたい一方で、こうしてゆっくりと眺めてもらい、お茶とお菓子をお出しして、語り合うもまた、稀有なひととき。
ところで今日、わたしが着たのは、やはり半世紀前の母の着物。躾糸がついたままの新品だ。加賀友禅の着物と、京友禅の帯。少し渋い色合いなので、帯揚げと帯締めの色を明るめにしてみた。このコーディネーションがまた、楽しい。去年、京友禅サリーのプロモータをお引き受けしたときには、まさか自分がこんな展示会を開くことになろうとは思わなかった。
この帯は羽織(これも新品で躾糸が付いている)もセットになっている。手描きの精緻な絵柄が、上品で美しい。
着物もまた、渋い中にも麗しき陰影。写真を撮るまで気づかなかったが、ぼかしの部分が、あたかも光の反映、陽だまりのようにも見えて、静かな美しさを湛えている。
インドの友人たちの多くは、着物は簡単に着られるものと思っている。ゆえに、着物の丈の長さを示し、帯の長さを示し、サリーよりもはるかに着用が困難なのだと説明する。みな、一様に驚く。
以前も記したが、着物とサリー。どちらも面積はほぼ同じなのだ。反物は幅が狭いが長いが故。この共通項にもなにかしらの歴史的な関わりがあるのだろうか。関心は尽きず。
さて、明日はどの着物を着ようかな。