この2年間、京友禅サリーや着物の展示会を何度となく開催してきた。場所もコンセプトも、それぞれが、似て非なる。ブランド・アンバサダーとしてお手伝いをしている京友禅サリーにせよ、個人的に1年半前に目覚めた日本のヴィンテージ着物にせよ、1枚1枚に物語がある。
そして、インドと深い結びつきを持つ。
「テキスタイル(布/衣類)」を通して、インダス文明からシルクロード、交易、大航海時代、明治時代の日本とインド綿貿易、第二次世界大戦……と、さまざまな歴史を映す。
我が家で展示会をするときには、さらに日本の伝統工芸品を展示し、その匠の技や美しさを披露する。すべてが、写真や映像では感じ得ない「肉眼で見つめ、手に触れてこそ」伝わる絶大なる魅力がある。だから、興味があるという友人らには、ぜひ見てほしいと思う。
今回の展示会は、日本への一時帰国を10日後に控えていることもあり、実施するかどうか、少し迷った。しかし、他に急ぎの用事はないし、タイミングを逸すると次はどうなるかわからない。みな、それぞれに多忙な人たちゆえ、今回は3日間にわけて新居で開催することにしたのだった。
初日の昨日は、オープン早々、ファッションデザインスクール(The Army institute of fashion and design)の学生ら40名が来訪した。先日MAP (Museum of Art & Photography)で開催されたテキスタイルのシンポジウムを訪れた際、同校の学生が参加していたのだが、そのなかの一人が日本語を学んでいるということで、浴衣姿のわたしに声をかけてくれた。
わたしが展示会に誘ったところ、彼女は先生にその旨を伝え、先生から訪問を打診された次第。もちろん歓迎だ。結果、40名(20名ずつの入れ替わり2部制)プラス先生2名がスクールバスでやってきた。完全に生きた授業状態である。ミューズ・クリエイションのメンバーやその友人各位もご来訪だったので、交流を図りつつ、ひととき楽しんでもらう。
途中からはテキスタイルを離れて、完全に若者向けセミナーモードに突入。月光ライブラリにて、手書きの旅ノートや絵葉書、地図の山を見せると、みな目を輝かせる。
写真を撮る前に、まず自分の目で見ること。バシャバシャと撮るのではなく、本当にこれだと思うシーンに絞り込んで、丁寧に撮ること。クリエイティヴな仕事につきたいのならなおのこと、オリジナリティを育むためにも、手作り、手書きという個性を大切にした方がいい……といったことを具体例を示しながら伝える。
わたしもまた、インド全国津々浦々からバンガロールに来ている彼女たちのバックグラウンドを聞き、インドの広さと多様性を改めて実感する。
書きたいことは尽きぬ。
怒涛のような数時間を経て、午後からは友人たちがポツポツとご来訪。展示物の説明をしつつも、ゆっくり話ができてよかった。
かつてのわたしの英語の先生Sibuと、その娘のSahnyaが来てくれたのは、特にうれしいことだった。実は彼女は、わたしが初めて、親身になって指導した「インターン生」なのだ。歴史や文学が好きな彼女は、当時からよく読書をしていた。企業でインターンをするのではなく、わたしのもとで勉強したいと言ってくれ、わたしの過去の旅の記録など、すべて日本語なのに、興味深く見てくれたものだ。
そして2018年の一時期、共に行動した。慈善団体訪問、日本からの視察旅行の同行、市場調査、ジャパン・ハッバ……。彼女が書いたレポートは、今でもミューズ・クリエイションのブログに残されている。その後、彼女は英国の大学に進学し、今は一時期、バンガロールに戻ってきているのだった。すっかり大人になった彼女との久しぶりの再会が、本当にうれしかった。
https://museindia.typepad.jp/mss/text-by-sahnya-mehra-2/
今回の展示会では、友人YashoのサリーブランドMrinaliniの、高品質なサリーも展示販売している。夕方、Yashoのお母様と娘のMrinaliniも来訪。サリーや着物を眺めたあと、彼女もまた、ライブラリのテーブルに散らかったままの本や手書きのノートを見て、強い関心を示す。
このごろはもう、国境を越えて、わたしはアナログ回帰の伝道者である。
ランチの写真は、近所に住むYashoからの差し入れだ。もう、料理などしている暇がなかったので、とてもうれしかった。そしておいしかった。
今日も今日とて、非常に楽しい1日だったが、明日もあるので、今日のところは、おやすみなさい。
⬇︎展示会の様子がリアルに伝わる動画を作りました。ご覧ください。
🎵このバックグラウンドミュージックは、1983年に発売された山口美央子の『さても天晴、夢桜』。高校3年のとき、部屋でラジオを聴いていたときに流れてきたこの旋律と歌詞に、たちまち心を奪われた。『夕顔〜あはれ〜』もこのときに聞いた。
DJが説明するミュージシャンの名前とアルバム(LPレコード)の名前『月姫』を急ぎメモし、翌日、下校時に、香椎のセピア通りにあった「ヨシダ楽器店」に立ち寄った。ミュージシャン名「ヤ行」に並ぶLPをパタパタとめくり、黄色い鮮やかなジャケットを見つけた。
彼女がすでに出していた『夢飛行』と『NIRVANA』というアルバムも買った。
もうずっと昔から、わたしはインドに来ることが定められていたのだと、しみじみ思う。