片隅の風景 インド

夕暮れ公園ノスタルジア

19park00_2

夕暮れ公園の、夕涼みの。
界隈に住む老若男女三々五々集まり。

遊具上り下りする子らの歓声。
ブランコ3人の老女が並んで座って揺れて笑っている。

遊歩道わざわざ中央にてのっそりと寝転ぶイヌ。
砂場わざわざ中央にて前足で穴掘り用を足すネコ。

子どもらと駆け回るメイドら痩身。
ベンチで歓談するマダムらの豊満。

反抗泣き叫ぶ10歳少年左手は母の右手を握っている。

クリケットボール。サッカーボール。少年らの声。
見守るドライヴァーの男たちの笑顔。

ボールが転がってくる転がってくる。
蹴って返せば、お門違いの方角に飛んでゆく。

高層ビルのネオン映して揺れる水面、水銀の如くたぷたぷと。
傍らの漁村スラムは闇に溶けてぽつぽつと頼りなき裸電球の点在。

目前は、テロリストたち上陸せし海岸。

Whatever Will Be, Will Be.
なるようになる。

2009/03/19 | 個別ページ

象徴

21taj

取り戻せるもの。
取り戻せないもの。
指折り数えてみるも虚し。

積み重ねて来た、華やぎの歳月は玉砕され、
刻印された拭えぬ傷は、
より深くこの国の有り様に添い寝しながら。

人々を、吸い込んでは、吐き出し。
人々を、吸い込んでは、吐き出す。

火傷を負った、ボンベイが象徴。

2008/12/31 | 個別ページ

さまざまで満たされ、あふれ、流れ落ちている。

01india02

混在する、暮らしぶりの無数。
あふれかえる、それぞれの常識。

「常識はずれ」の無意味。

新年を迎えたばかりは、パルシー(ゾロアスター教徒)の人々。
未明の花火響宴、ムスリム(イスラム教徒)は断食月ラマザンのはじまり。
街に象の像あふれてヒンドゥー(ヒンドゥー教徒)はガネイシャのまつり。

路傍のマリア像の傍らにクリシュナ神。

半径500メートル圏内に平気で同居しているさまざまの神。

* * *

いつのときも、そこかしこ、あふれかえる人々。
「歩行者優先」なんて、無理なことだったのだ。
いつまでも、目的地にはたどりつけない。

タクシーは、暴走せねばならない。
バスは、暴走せねばならない。
さもなくば、どこにも到達しない。

* * *

路上でクリケットの少年らの溌剌。
木漏れ日の下、チャイのグラス傾ける男たちの談笑。
路傍の石の上で洗濯をする女たちのぼやき。
路肩のコンクリート枕に横たわる男と犬の悠然と。

鍛えられた、汚れた足の裏が無数。


ひとひの終わりの、家族で眺む水平線の安らぎ。

ちっぽけな誤差を見逃して、
遍く、夕陽は降り注ぎ、神は手を振り、
毎日。毎日。毎日。


01india01

2008/09/01 | 個別ページ

GO AHEAD

Go

少々の障壁
なぎ倒して進め

だれが言う
なにを言う

惑わされず

少々の障害
踏み倒して進め

ひとが言う
なにを言う

掴むは我が手
踏むは我が足
食うは我が胃
笑うは我が胸
叫ぶは我が魂

たったひとつの
この我のみにて

2008/06/19 | 個別ページ

祈り。

03cross
今宵もまた、街は光を失い、
喧噪だけを残して、
樹々の梢も、家屋の輪郭も、人々の影も、
深く闇に溶けている。

裸電球照らす、陰翳の軒先にノスタルジア。

線路沿いの、馬小屋の、スラムのバラックのあたり。
裸足の少年も、片目の男も、乾涸びた老人も、
深く闇に溶けている。

小さな教会の、その十字架だけが、
茫漠の闇に浮かぶ。

あらたかな、神の力で。

いや、あきらかに、自家発電装置の力で。

2008/02/04 | 個別ページ

朝

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緑薫りたつ朝の庭
木の実をついばむ鳥らを眺め
自由に宙舞う蝶らを眺め
木枝のそよぎの彼方に青空

貴石のようにきらめく果実
かみしめるゆたかなひととき

2007/10/06 | 個別ページ

成長

18morning

小さきころは、
細い竹竿にまとわりつくだけで精一杯で、

ふらふらと、右に揺れ、左に揺れ、
ささやかな風にも行方を失い、

支えを頼りに、しかし頼りなく、
ときに望まれぬ場所に巻き付いてみたり。

やがては、進むべきが見えたとばかりに、
大きなものをも巻き込んで、

ぐんぐんと伸び、
ぐんぐんと自由に伸び、

いつしか見上げるほどまでに、
激しい風雨にひるむことなく、
毎朝いくつもの花を咲かせて、

天を目指さんばかりに、
ぐんぐんと。

2007/09/20 | 個別ページ

ただいま、の場所。

14bangalore


ぐっと高度が下がるまで、光がまばらな大地を見下ろしながら。
未だ街灯の少ない夜景に、なぜか少し安心した。

大雨の夜。束の間の小降りのころに空港を出た。
道路は随所で濁流で、泳がんばかりに車は走り。

昼間は死んだように寝ている野良犬らが、
水を得た魚のように駆け回っている。

がたがたと、路面は荒れ果て。
自ずと身体が上下する。

やれやれ相変わらずなんてところだ。
しかしおかしさがこみ上げて来て、
一人でくすくすと笑っている。

こんな街に住んでいる。
好き好んで住んでいる。

5年後は、どうだろう。
10年後は、どこだろう。

春夏秋冬。異なる国に住みたいと思っていた20代のころ。
東西南北の人であり続けたいと願った。

ひどく曖昧な志で。
これといった、何があるでもなく。

未だ焦点は、定まらず。

しかし、気づかぬうちに、遠かった未来が近づいている。
叶えられることが、少しずつ増えている。

少し遠い先のことを思いながら、
もっともっと、駆け巡りたい、とだけを願う。

薄汚れた格好で、
バックパックを背負っていたあのころから、
あまり変わってはいない。

2007/09/14 | 個別ページ

近道

24where_2

ちょっと、どこに向かってるの? 
インディラナガールに行きたいんだけど

マダム、こっちが近道なんです
……

ちょっと、こんな道、知らないわよ。
それに、こんな未舗装路を通ることもないでしょ?

ここをまっすぐ行って、突き当たったら右に曲がって、
そうしたらすぐです
……

いつもより、
倍以上の距離を走り、
倍以上の時間をかけて、
見慣れた通りに合流する。

不思議な近道。

2007/07/25 | 個別ページ

天仰

01moon

この世の、

遍く空に、

今宵、満月。

2007/07/02 | 個別ページ

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