霧が立ちこめるレイン・フォレストの朝。絶景を眺めながらのヨガ。
朝、3キロ余りの散歩。霧に煙る山道の静かにやさしい。
小道さえ、叙情的な様子で横たわる。この丘には、12年に一度、Neelakurinjiという青紫色の花が、辺り一面に咲き乱れるという。ケララ州のムナールでは、見渡す限りの丘に、この花が咲き乱れる絶景が見られるのだとか。夢のようであるに、違いない。
途中でコーヒー&ビスケット休憩。甘いミルクコーヒーが、五臓六腑に染み渡って、おいしい。
樹木にまとわりつく苔の様子は、ワシントン州のオリンピック国立公園を思い出させる。もちろん、彼の地のスケールの方が圧倒的ではあるけれど。同じ、レイン・フォレスト。
小さな小さな、野生のハイビスカス。
朝食は、眺めのよいテラスにて。
自家製のジャムの麗しく。クールグはまた、ハチミツの産地でもあり。
ムサンビ(スイートライム)にスイカにパイナップル……インドでは一般的なフルーツジュースはもちろんのこと、クールグでは、これらに「アイスコーヒー」が加わる。懐かしのコーヒー牛乳を思わせる味わい。
昼ごろになると霧が晴れて、青空が広がる。
起伏に富んだホテルの敷地内。バギーで移動しなければ、どこへ行くにもやや、遠い。ともあれ、散歩には好適だ。
NORAみたいなアヒルを発見! 名付けてNORAダック。
敷地内には、オーガニックのハーブ園。
パイナップルの赤ちゃん。
元気のよい葉野菜もたっぷりと。
蝶々が乱舞する一隅。
「どうぞ好きなだけ、いちごを摘んでくださいな」と言われる幸せ。
青空とよく似合ういちご。
外のプールに入るには、少し肌寒い。
クールグの伝統を伝える小さなミュージアム。
右端は、昔ながらのサウスインディアン・コーヒーを楽しむためのポット。ポタポタとコーヒーを濾過して、「デコクション」を作るのだ。ステンレス製は持っているけれど、この銅製が欲しくなった。
濾過する穴で、模様が描かれている。かわいらしい。
兵士の血が流れるクールグ男子の衣装。
クールグ女性は、後ろにプリーツを寄せてサリーを着る。独特の着方だ。
かつて軍人だったという男性が、このホテルでクールグの伝統を伝えている。夜の踊りの案内も、彼がしてくれたのだった。夫はしばらくの間、クールグ出身のインド軍事史の英雄、KMカリアッパ陸軍元帥の話をしている。
我が夫は、子供のころ、家族でクールグを訪れた際、義父の知り合いのつてでKMカリアッパ陸軍元帥の邸宅を訪問する機会があったという。子供の夫にとっても彼は英雄であり、威厳に満ちた存在であった一方、とても人当たりがよくやさしく、ポケットにはいつもたくさんのキャンディーを入れていて、子供に分け与えていたという。
「カリアッパ元帥からもらったレモンキャンディーのことが、忘れられない」と、しみじみ、話す夫。
やさしげな水辺。二人して、「ダンバートン・オークスみたいだね」と、ワシントンD.C.に暮らしていたころ、よく訪れていたジョージタウンの庭園を思い出した。あのころは、二人で本当に、よく歩いたものだ。
なぜ、今、ここで、カステラ道なのか、夫よ。
ブッダ・ガーデンと名付けられたままに、ブッダの頭部が配された場所。木漏れ日が水面に降り注いで、静謐の中の温もり。
心霊写真ではありません。
本を読みながら、スパークリングワインを飲みながら、摘んだばかりのいちごを食べる。
眺めのよい館内のプールは温水にて。妻が部屋で読書をしているころ、夫はぐんぐん、泳いでいた。
屋外のプールサイドには、ブランコのように揺れるベッドが配されており。
タージグループのホテルのスパ、JIVAスパも、もちろんある。
アーユルヴェーダのトリートメントも受けられる。
クールグの伝統的なバスを体験できる施設も。
薬効のあるオイルなどで身体を洗ってもらうのだとか。
我々は、普通に、アロマの香りがやさしいディープティシューのマッサージを受けた。
夕方からの、トレッキングツアーに出かける。
ホテルの敷地から外に出ると、そこは神々の宿るGROVE。杜。ヒンドゥー寺院があり、杜は神に捧げられている。クールグにはそんな杜が数百も点在しているのだという。
SACRED GROVE〈聖なる杜〉だと記された看板。この一帯に生息するすべて、人間が手を加えてはならないという。もちろん、樹を切ったり、植物を摘んだりすることも。
無数の植物、無数の葉、無数の緑が生い茂る。これは野生のタバコ。有毒なのだという。
この地で採れるコーヒーは、ロバスタ種とアラビカ種の2種類。
ロバスタ種の方が、葉っぱが大きい。
一つの赤い実のなかに、コーヒー豆が二つ。このままだと、ただ青い匂い。ローストしてこその、コーヒーの芳香。
ムンバイから訪れている家族連れ。夫曰く、見覚えがあるという男性と話をしていたところ……。
10年前、我々がワシントンD.C.に暮らしていたころ、ヴェンチャーキャピタル会社に勤めていた夫が、初めてインド市場に投資した先の、なんと彼が担当者であった。
電話やメールでのやりとりは何度も、そして10年前にはバンガロールでも何度か会ったらしいが、お互いすぐには思い出せなかったらしい。こんなところで、10年ぶりに遭遇するとは、奇妙な、偶然だ。
夫がインド市場への投資について本腰を入れ、インドに移住する契機にもなった投資先である。彼の携帯電話には、夫の米国時代の電話番号がまだ、残されていた。
光景を眺めるよりも、語り合う二人。
得も言われぬ、長閑な情景。
農家を横切って歩く。
愛らしすぎる女の子。
緑の中で過ごした3泊4日。もっとゆっくりしたいとも思うけれど、しかしこの時期、インド的「大家族連れ」も多く、ダイニングなどの公の場では、あまりくつろげない。最後の日の朝などは、家族親戚合わせて35人でムンバイからやってきた一族もいて、彼らと朝食のテーブルが近かったこともあり、それはそれはもう、激しく賑やかで。
彼らの様子をただ、録画して編集するだけで、ドキュメンタリーのコメディ映画になりそうであった。
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さて、本日はクリスマス・イヴ。
いつもより、少し手の込んだ夕飯を準備して、ワインで乾杯をして、しかしいつものように過ごす夜。2014年も残すところ1週間。諸々、去来する思いを飲み込みながら、日々、深呼吸をして、まっすぐに歩いてゆこう。