わたしが、もしも「書くこと」を生業としていなければ、あれこれと考えることなく、空いた時間を利用して、書きたいだけ、書くだろう。しかし、わたしはライターであり、「書くこと」によっても収入を得てきた。
ホームページに限られた情報を載せているときは、まだ折り合いをつけることができた。ホームページを通して仕事を得ることも多く、それは「営業ツール」にもなったからだ。
しかしブログは、性質を異にする。書いていく先から、大切な言葉も、そうでない言葉と一緒に海の藻くずと消えていく。我ことながら、それは非常にもったいないことのような気がする。
書いていることによって、なんらかの報酬を得ているのであれば、自分のなかで「仕事だ」と折り合いを付けることができる。しかしそうではない。
無論、「お金」の問題ではない。「お金」に象徴される「仕事」という定義の問題である。情報は、文章は、こんなにも「無料」であっていいのか。書き手としての、あるかなきかの矜持の問題でもある。
本心からいえば、サイトを有料化し、たとえ購読料を払ってでも、わたしの文章を読みたいと思ってくれる人に向けて綴るのが理想だ。
しかしそれは、知名度の高いライターや作家、あるいは人気のある芸能人に有効な話であり、わたし程度の立場で門戸を狭めるのは、間違っている気もする。自ら、可能性を閉ざしているようにも思う。
同業者の方々であれば、この逡巡は説明するまでもなくご理解いただけようし、そうでない方にとっては、あまり関心のないところであろう。だからこれ以上、くどくどと、ここに心情を吐露するのはよそうと思う。
今年に入って十日余り。このインドという国で暮らすわたしの周囲では、相変わらず気になることが連発で、書きたい、記録に残したい、と思うことが尽きない。
「新しく、異なる形で」
と、年末年始にかけて、あれこれと考えた。考えた挙げ句、いいアイデアが思い浮かばなかった。
結論としては、従来のスタイルを続けることにした。年末年始の節目に拘らず、なにか思い立ったときに、軌道修正をしていくことにした。
ところで、読者の方々のコメントは、非常に参考になった。うれしい意見、考えさせられる意見、思いもよらない視点からの意見……。自分と自分の文章の間にある誤差についても、他者からの視点を通して認識することができた。
そして、一時はやめようと思っていた日々の記録を、やっぱり続けるべきだと思い直させられた。
わたしはブログという媒体を借りて、日々を表現しているが、一般的なブログのように読者とのコミュニーケーションを望んでいるわけではない。わたし自身の経験するインドを、ともかくは吐露することが精一杯だ。
感想をいただくのはとてもうれしい。励みになる。しかし一方で、過度に親近感を持たれて、知らない人から友達のように接せられることにも戸惑いを覚える。
そんなわけで、「ブログ的」なコメントのやりとり、それからトラックバック(仕組みが未だにわからない)などについては今後も排除し、ただわたしが綴るばかりの「サイト」として、続けて行こうと思っている。
なお、わたしが使用しているこのTypepadは、有料のブログサーヴィスで、従っては広告も入らず、気に入っている。
当初は有料の割に許容量が小さく、その点においてもブログのこれ以上の存続を難しいと考えていたのだが、先日、急にサーヴィスが向上し、許容量が格段に大きくなり、いくつものブログを新設できるようにもなった。
そんなこともあり、このサーヴィスを有効に利用しながら、当面は表現を続けるつもりだ。
遅ればせながら、2008年も、どうぞよろしくお願いします。
坂田マルハン美穂