取材のために、街へ出る。
この国では、必要以上を、見たくなる。
もう、そこまで行かなくてもいいのに、汚い路地に紛れ込む。
ゴミ溜めの悪臭や、どぶ川の汚臭や、そんなものをかきわけながら、
まったくほんとに、なんて国だ。
汚いってば。片付けろよ。ああもう、なんじゃこりゃ。
時に鼻を覆いつつ、時に悪態をつきつつ。
ヒトもウシもイヌもカラスも、渾然一体と風景に溶け込み、
ヒトの尊厳、どこ吹く風。
裸足ノープロブレム。
地べたノープロブレム。
神々は、街に溢れ。
何がそんなに楽しかろう。
子供のような顔をして笑ういい歳をした男らよ。
薄汚れた顔の、しかし白い歯は輝いて。
益々、益々、わからない。
わたしはいったいこの国に、
わたしはいったいなにしに来たか。
果たして今世でなにができる?
込み上げる熱情とは裏腹の諦観。