季節感がなさ過ぎる。もう、8月も終わろうとしているのに。我が誕生日の前後は、蒸し暑くてたまらん、という状況で迎えるのが習わしであったのに、爽やか過ぎる毎日だ。
日本の母と話すたびに、日本の暑さを語られるが、最早遠い世界の他人事のようである。
現在、金曜日の記録を書いてはいるものの、実は土曜の朝である。
夕べムンバイより戻って来た夫とともに、今朝はきちんとヨガ道場へ行き、ダリヤ(全粒小麦のミルク粥)、パパイヤ、パイナップル、ザクロ、バナナなどで構成されたいつもの朝食をとり、更には昨日、スジャータが焼いて来てくれたオニオンパンを食べた。これがまた、おいしかった!
それはさておき、この写真は、我がデスクに向かって左側を望んだ際の風景である。ちなみに書斎ではなく、ゲストルームのデスクではあるが。午前中はこちらの方が、環境がいいので利用している。
このように、緑が朝日にゆらゆらと揺れ、風はそよ吹き、トゥルシやミントはすくすく育ち、すばらしく心地がよいのである。
小鳥はちゅんちゅんさえずるし、オートはブンブン疾駆するし、それなりの情趣があって、すばらしいのである。
さて、話を金曜に戻そう。本日は、第6回目のクッキングクラスだった。
夏休みで一時帰国する人や旅行に出かける人が多く、参加者が少ないのでしばらく休もうかとも思ったけれど、しかし最低でも3人集まるのならば、やはり開催した方がいいと思われ、本日は4名に加えスジャータ師匠も参加しての、ほどよい6名での講習だった。
今日は、過去我が家でディナーを共にしたKさんが、そのときに食べたエビカレーに心酔し、開講の当初からエビカレーの講習を切望していた、そのエビカレーを作ることにした。
これは、モハンのかなりオリジナル色が強い料理であり、スタンダードなインド料理ではないので、後回しにしていたのだった。Kさんは、少々体調が悪そうだったのだが、「今回はエビカレーよ」と言うと、根性を出して来てくれた。
今回は、お隣のIさん夫人がバンガロールに一時滞在しているので訪れてくれ、また初めての方も参加してくれた。初心者向けスパイス講習を30分早めに来てもらって行った後、調理実習である。
ところで、前々回、マトン、ラムのことについて触れたが、これらのことを「羊肉」と書いていたけれど、インドでは、マトン、ラム、いずれも「ヤギ肉」つまり「ゴートミート」であるとのこと、先日判明した。
いや、あの講習をしたあと、しみじみ考えるに、インドでは、あのふかふかの羊は見かけたことがないのに、なぜこんなに普及しているのか、と素朴に疑問を抱いたのだ。
米国ではニュージーランド産のラムチョップなどが非常に高値で売られているのに、なぜインドのラムチョップはこんなにも安く、しかも結構おいしいのか。
その疑問をランジット伯父と話しているときに告げたところ、「ミホ、インドじゃ、肉と言えばヤギ肉なんだよ」と言われた。スジャータに確認したところ、同様の返事だった。
思えば、町でも田舎でも、あっちこっちでアルプスの少女ハイジみたいな情景を見ていたではないか。尤も、ヤギ以外の共通点は全くないけれど。
そうか、そうだったのか、紛らわしいな。と納得したのだった。
そんなわけで、インドの肉は、ヤギが主流。マトンもラムも、なぜかヤギ。細かな定義は気にしない。
さて、今回も、講習用の資料を一部抜粋してみたい。
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【ミューズ・クッキングクラス:第6回】
第5回にひきつづき、今回もマルハン家ゲストに好評のメニューです。まずは、風味豊かなエビカレー。バンガロールではなかなか新鮮な魚介類が入手できませんが、この料理ならエビをおいしく味わえます。
付け合わせの野菜は、インドで手に入りやすい野菜、カリフラワーを使ったソテー。伝統的なインド料理のレシピではありませんが、調理が簡単で、素材の旨味が生きています。
そしてインド版漬け物のチャトニー(チャツネ)。パイナップルとさまざまなスパイスを使って作ります。
●エビカレー
エビの風味がカレーに溶け込んだ、まるでブイヤベースのようにまろやかで濃厚な風味のカレーです。エビは頭、殻のまま使用します。
マルハン家では、通常ラッセルマーケットで売られている中サイズのエビを使用していますが、講習ではBamburiesのタイガープラウンを使います。ムンバイ直送の「高級品」です。
なお、ラッセルマーケットは早朝訪れると、ハエが比較的少なく、穏やかな気持ちで買い物ができます。行きたい方は、お勧めの店をお教えしますので、ご相談ください。
●カリフラワーのソテー
インドで最も一般的な野菜の一つにカリフラワーがあります。たいていはスパイスたっぷりのカレー風味に調理されていますが、クッキングクラスではエビカレーの味わいを引き立てるため、「控えめな脇役」として味付けます。
醤油を使うあたり、決して伝統的な調理法ではありませんが、日本人の口に合う料理です。
●パイナップルのチャトニー(チャツネ)
インドでは手軽に購入できる新鮮なパイナップルを使用したチャトニーです。ベンガル地方のレシピを紹介します。さまざまなスパイスと炒めて仕上げる、甘酸っぱいインド版漬け物です。エビカレーともよく合います。
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エビは、そのまま軽く塩焼きにしただけでおいしいのではないか、とも思われたが、もちろんカレーにしても、非常においしい。味の決めてはヨーグルトとミルク。特にミルクを入れるあたり、料理長モハンのアイデアが効いている。
ちなみに料理長、オリジナルレシピを行使しているわりに、エビには触れることができない。かつても書いたが、掃除をすることさえ、やりたがらず、従って背わたを取ったり髭や尾を切ったりは、マダムの作業である。もちろん、食べることすら、できない。
なのに、エビの旨味を生かしたおいしい料理を作れるところが、謎。謎過ぎる。
今回は、今日しか参加できない人もいたので、実習以外の料理もいろいろと多めに準備しておいたため、テーブルは一段と賑やか。ご飯とチャパティも用意され、あれこれと味わうことができた。
インド移住以来一年足らずのわたしが言うのもおこがましいが、わたしの場合、身内がインド人で、更にはスジャータのような食べ物に詳しい人が身近にいるので、インドの食材や料理の「いい部分」を確実にキャッチできるが、たとえインドに長く住んでいても、インドの食事情のいい部分に触れないまま過ごしている人も少なくない。
これは、無論、「食事情」に限らず、遍くインド全体の事情に言えることではあるけれど。
食事のあと、食生活だけでなく、健康について、暮らしについて、お互いに情報交換をできるのも、非常に意義があると思われる。クッキングクラスにとどまらない、いつかはもっと、インド生活全体の手引きのようなものを、少しずつまとめていければいいな、とも思う。
さて、夜はアルヴィンドも帰宅して、エビカレーの残りを食べて、久しぶりで二人の夕食。仕事はうまくいっているようで、彼も饒舌だ。去年の今頃に比べると、本当に成長している。いくつもの山越え、谷越え、二人とも、たくましくなって行かねばと思う。
そりゃそうと、ヨガをまじめにやりすぎているせいか、最近、二の腕に筋肉がついて、かなり、たくましい。体重は変わっていないのに、腕周りが太くなって、サリーのブラウスの袖部分がパッツンパッツンになってしまった。こういうところは、たくましくならなくてもいいのに。
アルヴィンドはまた日曜からデリー、ムンバイと出張だ。わたしもいくつかの原稿の締め切りが迫っているので、仕事に集中できてよい。だんだん、お互いの生活が、調子良く廻り始めてきたようだ。