瞬く間に日々は流れ、パリ滞在最終日。今日は雨もやみ、傘を持たずに街へ出る。
明朝はもう帰国の途。インドに戻れば日常が待っていて、パリの余韻に浸る間もないだろうから、帰国前に急ぎ記録をまとめておこうと思う。
パリを訪れたことのない友人らから、パリに行きたくなったとのメールが届いた。特にはおいしいスイーツに反応する人々が多く。なので写真も多めに載せておこうと思う。
滞在しているサンジェルマン・デ・プレのホテル近くで見つけたベーカリー、GERARD MULOT。数日前に発見してここにも写真を載せたが、実は有名店だったということが発覚。サイトを見てみれば、東京や福岡にも支店がある。再び訪れて、スイーツを買う。
GERARD MULOTは「庶民的なベーカリー」だが、すでに数回訪れてたLADUREEは、エレガントな高級店。「マカロン発祥の店」として非常に有名らしい。
さて、サンジェルマン界隈からセーヌ河畔を歩き、シテ島に浮かぶノートルダム大聖堂へ。ワシントンDC時代、ナショナルカテドラル(国立大聖堂)の向かいに住んでいて、毎日圧倒的な大きさの大聖堂を見ていたこともあり、初めて訪れたときのような衝撃はなかった。
しかし、古びてこその味わい、外観も内観も、その薄暗さと重厚さがいい。にも関わらず、カテドラル内は、大勢のツーリストが焚くカメラのフラッシュでまばゆく、厳粛な空気が薄れていたのが残念だった。
昨日のルーヴルもそうだが、写真撮影を禁止した方がいいのではないかとさえ思う。自分自身も撮っている立場でこう言うのもなんだけれど。せめてフラッシュ使用を禁止してもいいのではないか。ことに美術品などはフラッシュの光で傷みそうな気さえするのだが。
ちなみにわたしは、フラッシュを使うことはほとんどない。フラッシュを焚かないと光が足りず、手ぶれが気になることもあるが、そこそこ撮れるものである。
ノートルダム大聖堂を出た後は、小さな橋を渡り、シテ島に並んでセーヌ河に浮かぶサンルイ島へ。この島を訪れるのは初めてのこと。古くからの建物が立ち並ぶ小さな島で、見るべき建築物も少なくないようだが、目抜き通りの食料品店やブティックをのぞきながら歩くだけで、満ち足りた気分だ。
有名なチーズ店、生ハムの店、フォアグラの店、オリーヴの店などが点在する魅惑的なエリア。評判のジェラート店もある。もう、胃袋が足りない。
チーズ店では「トリプルクリーム・ブリ」という特製のチーズを買った。真空パックにしてもらえたので、スーツケースに入れて持ち帰ることにした。
また、家族経営の農家で作られたフォアグラを売る店にも立ち寄った。甘いデザートワインとともに味見をさせてくれた。極めて美味! 「脂っこくなく、クリーミー」なのが決め手のようだ。これも一瓶購入した。
その他ジャムやマスタードなど、インドでは手に入らない質のいい食材を少しずつ。あとは空港でワインやグルメフードを買って帰ろうと思う。
あいにく料理はいまひとつだったが、こぢんまりと雰囲気は悪くなく。
ワインを飲まずしてランチタイムとは呼べない。
とでも言いたくなるほどに、毎日ワインをばかり飲んでいる。
なにしろインドじゃSULAだもの。
書いている先から、寂しくなるもの。
ともあれ、突然決まったパリの旅。何の準備もなく、計画も立てずに訪れたけれど、とてもよき5日間を過ごせた。3年間も欧州を訪れていなかったことが信じられないほど、街が身近に感じられた。
そして何より、食べ物のおいしいこと。ワイン、バケット、クロワッサン、コーヒー、チーズ、ハム、オリーヴ、バター……素朴な食材のひとつひとつが、この国ならではの強い個性で、引きつける。
デミタスカップに注がれたエスプレッソ、きめ細かな泡が表面を覆うそれや、ハラハラと、かじればこぼれ落ちるクロワッサン、ハムとチーズを挟んだだけの、風味豊かなバケットのサンドイッチの、なんと「暮らしに必要不可欠」な感じだろう。
ともあれ、綴りたいことは山とあるが、旅情に浸っているいとまはなく。明日からはまた、インドで新しい日々。
ともあれ、旅は、いいものだ。また、近々。