夫は、風が吹き込む心地の良い居間で、
クリケットの試合を見ている。
いただきものの柿ピーを携えて庭へ。
スローモーションで大樹の揺らぎと、
灰色の陰翳の空。
高く高く舞う鳶の様子を、
惚けたように見つめるひととき。
流れる雲のはやさ。
いのち尽きた蝶の亡骸が、
芝生の上を、ふわりと軽く翻る。
いつのまにか、
黄色い花の季節が過ぎて、
紫色の花の季節が過ぎて、
赤い花の季節。
バンガロールの、夏の花。
夏。
黄金色したたるマンゴーの季節も、すでに訪れており。
一人の午後や、
二人の夜や、
家族の夕餉。
週末は、スジャータが遊びに来た。
ラグヴァンは、米国へ出張中なので。
「スジャータ、週末に一人だとかわいそうだから、うちに泊めてあげようよ」
と、夫。
つくづく、素朴にやさしい人なのだ。
3人で、食べて、飲んで、語り合う夕べ。
久しぶりにRAIN TREEに赴けば、あたりの交通事情が混沌。
一方通行が逆行していたり、通行止めになっていたり。
それもこれも、あちこちでの工事のせい。
怒濤のように、風景が変わりゆく。
埃っぽい。
見上げれば未だ生い茂る鬱蒼の緑を。この緑をいつまで。
それからやはり久しぶりに、THE TAJ WEST ENDへ。
渡印当初、しばらく暮らしていたこのホテルへ来ると、あのころの心持ちが蘇って来る。
あれから2年半。お試し期間の半年をはるかに過ぎて、わたしたちはいつか、米国へ戻るときが来るのだろうか。
カプチーノでも、カフェラテでもない。South Indian Coffeeのデコクションを注文する。
ミルクとコーヒーを、別々のポットにいれて。と頼んで。
敢えての、南インドコーヒーの注文に、ウエイターがうれしそうに微笑む。
丁寧に、注いでくれる。
添えられたクッキーも、おいしい。
しばらくは、ここで本を広げ、書き物をして過ごす。