と、アルヴィンドが尋ねる。
「一風堂のとんこつラーメン」
と即答したら、嫌な顔をされた。当たり前である。なにしろ、彼は食べていないのだから。
今回、寿司をはじめとする日本料理、イタリアン、コリアンと、あれこれおいしい料理を楽しんだが、インパクトの強さでは、あのとんこつラーメンの右に出るものはなかった。
さほどラーメン好きというわけではないのだが、「ニューヨークで故郷の味」というのが、ポイントが高かったのだと思う。
それにしてもだ。旅の直後はいつも、旅の間の「食べ過ぎ」のツケに悩まされる。数キロの増量である。なにしろ新陳代謝がスローになりゆくお年頃。増量はたやすいが、減量は困難である。帰国後2日目。まだまだ身体が重い。
明日はアーユルヴェーダのマッサージに来てもらい、エクササイズをはじめるなどして、体調を整え始めなければと思う。
さて本日は、各所へショッピングなど。実は1年以上勤めてくれていたドライヴァーのラヴィが、このたび他社へ転職し、今日から新しいドライヴァーである。
ちなみに、我が家は未だ車を購入しておらず、タクシーというかハイヤーサーヴィスを利用している。不経済ではあるが、諸々のリスクが少ないのである。
従って、ドライヴァーはタクシー会社が雇用主であるため、ラヴィは我が家専属だったとはいえ、我が家から給与を支払っていたわけではない。
いくら優秀なドライヴァーだからとはいえ、引き止める訳にはいかない。ちなみに彼は今後、大手企業の専属ドライヴァーとなるとのこと。給与も上がるし、保険などの雇用条件がよくなるらしい。彼にとってはステップアップである。
そんなわけで、新しいドライヴァー。名前をルーペシュという。ラヴィと同様ケララ州出身の、歳の頃なら20代後半の男性。本日初日の運転及びコミュニケーションは「好印象」。ひとまずは安心した。
ところで、一年前に新居に移って以来、そして家政夫モハンが去りし後、ラッセルマーケットを利用するよりも、近所のスーパーマーケットを利用する機会が増えていた。
朝一番で魚介類を入手する以外は、近所のスーパーマーケットの方がなにしろ便利だ。
しかし今日、久しぶりにラッセルマーケットへ赴き、やはり頻繁にここを利用しようと思い直す。
野菜の種類はスーパーマーケットをはるかに凌いで多いし、新鮮だ。果物や花も豊富にある。
行きつけだった果物屋のお兄さんが、「どうして最近はあまり来ないのか?」と尋ねる。
引っ越して、少し遠くなったし……。それに近所にスーパーマーケットができたせいもあってね。
そう言うと、彼はおもむろに名刺を取り出して言った。
「果物も野菜も、無料で配達しますから、必要があるときには電話をください」
肉屋のBamburiesは、このごろほとんどが電話での注文で、ドライヴァーにピックアップしてもらっているが、果物も配達してもらえるとなると助かる。
とはいえ、今後はなるたけラッセルマーケットへ足を運ぼう。
毎度の如く、店頭で味見をさせてもらえば、抜群の味わいである。
他のマンゴーに比べるとかなり割高の450ルピー(約1200円)だが、大振りだし、どれもおいしそう。
それからアルヴィンドの好物ライチーも出ていたので、1キロ購入。
その他、季節を問わず手に入るところのザクロやパパイヤ、バナナなどを買い求める。果物がおいしい季節。またこの店へ、買いに来ようと思う。