バンガロールは夏真っ盛り。日中の、太陽の下は確かに暑いけれど、木陰は風がそよそよと気持ちいい。朝晩は涼しく、過ごしやすい。
幾度か記したが、我が家には冷房がない。天井のファンだけである。庭から風が吹き込んで来るのと、天井が高いせいもあり、涼しいのだ。
最近では木製フローリングの床がはやっているようだが、暑い時期には従来からの大理石の床が好適だ。部屋の温度を下げてくれる。少し冷え込む時期には靴下&厚手のスリッパが必要だけれど。
庭が暑いときには部屋のなかがひんやりと涼しく、部屋が暑いときには庭が心地よい。この街が「ガーデンシティ」と呼ばれ続けてきた理由がよくわかる。庭のあるこの家に移って、以前より一層、この地の気候のよさを満喫している。
尤も、我が家の上階。2階、3階、4階の人たちは、冷房をひっきりなしに使っているようで、涼しい朝ですら、室外機を使っている。ペントハウスの住人は、夏の間、毎日がサウナのようだと言っていた。
同じ場所にあって、これほどまでに室温が異なるのだ。
樹々に囲まれた、緑いっぱいの広大な庭の中央に、ぽつんと邸宅(バンガロー)が立つ。そんな様子が至る所で見られた昔日のバンガロール。今や日ごと樹々は伐採され、年を追うごとに夏の気温が高くなっていく。
この物件を見つけられたのは、とても幸運だったけれど、いつまでこの緑の恩恵を受け続けることができるだろう。いつかまた、次なる「ホーム」を求めて移動するときが来るのだろう。
今夜は久しぶりにスジャータ&ラグヴァンがそろって遊びに来た。
わたしたちがニューヨークへ行く前から、ラグヴァンは米国の学会に出席するため2週間ほど不在だったのだ。
互いの近況報告や土産話。そして例のテレビ番組を、4人揃って見る。
すでに「エビが旬」発言が、ヴァラダラジャン家でも話題となっており、まだ番組を見る前から、アルヴィンドはラグヴァンに「で、今はエビが旬なんだっけ?」と突っ込まれていた。
お気の毒なハニー。
米国時代からよく作っていたお手軽ワイルド料理だ。
米国のチキンに比べると、インドのそれは小振りで脂身も少なく、味わいも濃厚だ。
いかにも「鶏臭い」においがする。
ところが今どきの、大多数の人々は、鶏臭い鶏肉とか、豚臭い豚肉を嫌う。
固いトウモロコシや、ピリリと苦いダイコンを嫌う。
一方、わたしは「野趣にみちた素材」を好むと同時に尊重してもいるので、歯ごたえやら苦みといった刺激が抑制されすぎた今どきの去勢された食べ物を歓迎しない。
灰汁は茹でればとれる。インドでたまに遭遇する、強烈すぎるナスの灰汁や苦みは、ちょっと困るけれど。
ともあれ、歓迎しないのは少数派だから、市場は「ゆるい食べ物」に席巻されてしまう。インドに来た当初、強い野菜が健在であることを非常に喜ばしく感じたが、最近では「アメリカンコーン」やら「スイートコーン」といった軟弱野菜の波が襲いかかって来ていて、個人的には由々しき事態だ。
ラッセルマーケットに足を運ぼうと改めて思った背後には、このような事情もある。この件については、書きたいことがごまんとあるので、いつかまとめて書きたいと思いつついつになるだろう。
話がそれたが、チキンと共に、タマネギやジャガイモ、ニンジン、ガーリックも焼く。オリーブオイル、バター、塩こしょうを両手を使ってしっかりとすりこんで焼くだけ。このほか、パスタやスジャータ持参のギリシャ風サラダで豊かな食卓だ。
食後は今が旬のアルフォンソーマンゴーを味わう。我が家にもあったのだが、スジャータが行きつけの農家で無農薬アルフォンソーマンゴーを仕入れて来てくれた。
これもまた、おいしい。アルフォンソーマンゴーの季節は間もなく終わり。
思い残すところなく、味わっておこう。