写真上:ムンバイ郊外に5月にオープンしたばかりのOBEROI MALL。写真下:まさに崖っぷちなロケーションのスラム。その光景に南スペインのロンダを思い出してしまうのは、ロンダに失礼か。失礼だな。でも似てる。
午前10時にホテルを出動。本日は車を借り切っての行動だ。ムンバイ北部郊外を目指して、車は走る。途中、家電を調達するべく、老舗のVijay Salesへ。
目的地の大型ショッピングモールにも家電店は入っているが、老舗の方が商品を熟知しているスタッフが多く、配達にも融通が利くと判断したためだ。
老舗とはいえ、数年前に増築・改装されており、大規模家電店の趣である。冷蔵庫、洗濯機、電子レンジなど大型家電に加え、コーヒーメーカーや浄水器、ブレンダー、湯沸かしポット、オーブントースターなどを次々と選ぶ。
バンガロール宅の家電とお揃いで冷蔵庫も洗濯機もSamsungにしようと思ったが、洗濯機はLGを試すことにした。日本製の洗濯機もあるにはあるが、あれこれとコンピュータ制御の機能が多すぎるので、一番シンプルなものを選んだのだ。
でかでかとMade in Japanと書かれているところに、日本製品はすぐれているのだぞ、という気概が見える。
実際、これはバンガロールでも愛用しているのだが、結構な優れもの。
野菜ジュースやフルーツジュースを作るのに非常に便利である。
ジューサーの部分がプラスチックではなくガラス製であることも気に入っている。
さて、支払いをすませ、配達や取り付けの段取りを決めたあと、小物類のみ車に積み込んで更に北上。途中、大雨が降り出し、渋滞に巻き込まれつつも、なんとかマラド (Malad)地区に到着。
昨今では、郊外の随所にショッピングモールが誕生しているが、あれこれと比較検討している場合ではないので、すでに訪れたことのあるHyperCITYとInOrbitにて大半を調達しようという算段だ。HyperCITYは1階が大型スーパーマーケット、2階が家電や家具売り場になっている。
以前、日本からのクライアントとともに視察に訪れたときは、その規模の大きさに感嘆したものだ。あれから早くも2年。当時は陳列棚がどこかしら「閑散と」していたのだが、今やぎっしりと商品が詰まっている。
ざっと見たところ、家具類はあまりにも安っぽすぎるので却下。あとから食料品や洗剤その他を調達するために再び訪れることに決めて、InOrbitへ。
InOrbitは、LIfestyleとShoppers' Stopという、全国展開する二つのデパートメントストアを擁している。
前者はHome Centre、後者は Home Stopという家具やインテリアの店鋪があり、今日のターゲットはこの両店舗である。モールにの両端に位置する双方を行き来し家具を見たところ、Home Centreに軍杯が上がる。一方、食器や調理器具などは Home Stopの方が、若干好みに近い。
まずはHome Centreで、ソファーセット、ダイニングテーブルを購入。しかしデスクがない。先日訪れたフェニックスモールのHome Centreにはあったのに。仕方ない。ともかくはあるものを買う。
一番気に入ったものが品切れだったりと、なかなか思うようにはいかないが、なにしろバンガロールに家があるのだし、ムンバイ宅を理想的なインテリアにすることもないのだ。快適であればそれでいいのだ。と自らに言い聞かせて選ぶ。
Home Centreへ戻る前に、フードコートでランチをしようと思う。うろうろとしていると、東アジア的パン屋を発見。BreadTalkという店だ。シンガポールが拠点で、香港や台湾、中国、マレーシアなどに店舗を持つようだ。
このような販売形態は、そもそも日本発のコンセプトだろうが、中国圏風情が漂っているのと同時に、しかし並べられているパン類はインド的なアイデアの品揃えである。
特にパンが食べたかったわけでもないのに、ついつい二つ、買ってしまう。
鶏のキーマ(ドライカレー的)入りパンと、アップルパイ風パン。
しかしパンだけでは栄養のバランスが悪い。
こんなときに栄養のバランスなど考えずともよい。
と思うのだが、パンだけ、というのはどうも気分ではない。
と、インド料理店が目に留まった。店をのぞけば、ターリー(北西インドの定食)を食べている人々の姿が。
ついつい吸い込まれてしまう。
有無を言わさず、メニューもなく、ただひたすらにヴェジタリアン・ターリーの店である。「椀子そば」のごとく、つぎつぎにおかずやパン、ご飯類、バターミルクをついでもらいつつ、食べるのである。
こういう店に、一人で入る人はまずほとんどない。加えてわたしは外国人であり、さらには女性である。従っては、店の人がやたらと構ってくれる。
と思うのだが、それはそれで、やさしさである。
とはいえ食べながら、同時に「おかわりどうぞ攻撃」から身を守るのは、なかなか大変。
チャパティはもういらん、というのに、マネージャー自らわざわざやって来て、おかずの残り具合を一瞥するや、
「いや、もう一枚、召し上がってください」
と、勧める。
軽いランチのつもりが、どえらく満腹で店を出る。
満腹の我が左手には、先ほど購入したパンの袋。どうするというのだ。夕食にでもするというのか。
態勢を立て直して、向かうはHome Stop。食器や調理器具などを購入だ。20,000ルピー以上購入したら自宅まで配達してくれるというので、まとめてここで購入することにした。
ひとりのスタッフがつきっきりでアシスタントしてくれる。こういうあたり、人手過剰なインドのありがたさである。食器だグラスだ鍋だカトラリーだなんだと次々に選ぶ。途中、アシスタントのスタッフが2名に増え、こちらとしては非常に助かるが、しかし選ぶだけでも頭がくらくらしてくる。
ようやく買い物を終えて、支払いをすませ、その蛇のように長いレシートを折り曲げつつ、配達日時を確認。モール内の他のファッションブティックなども気になるところだが、今日は寄り道をしている場合ではない。再び、HyperCITYへ。
前述の通り、二つの建物は隣接してはいるのだが、間に川が横たわっている。しかもヘドロで悪臭のひどい川。通過するたびに「臭いっつ〜に!」と、悪態をつかずにはいられぬ川。
こういう環境汚染が改善されるのには、まだまだ何年もの時間がかかることだろう、ムンバイよ。バンガロールよ。インドよ。
さて、HyperCITYの1階で、掃除道具やバケツや洗剤や洗濯物干や保存できる食料品類などを山盛り調達。ここは家電や家具以外を配達してくれないというので、車に積み込むしかない。トランクはもう家電でかなり埋まっているので、後部座席に積み込むことになるだろう。
カフェでベリーヨーグルトを食べつつ、コーヒーを飲みつつ、気分転換である。
キャッシャーで会計をすませ、またしても帯のように長いレシートを繰り畳ね、荷物を車に詰め込んでもらう。
案の定、後部座席も満杯となり、わたしは助手席へ。
助手席。眺めはいいが、スリリングな助手席。
まるで自動車学校の教官のごとく、そこにないはずのブレーキを踏み込みたくなる衝動に、何度駆られることだろう。
ホテルへ戻る前に、FabIndiaに立ち寄ってリネン類を調達し、今日のところはこれで終了、と思ったところが、目の前に見慣れないショッピングモールが。
LIfestyleのサインが見える。
Home Centreのサインも見える。ひょっとすると先ほど見つけられなかったデスクがあるかもしれない。
もう、モールは十分だとの思いでいっぱいであるが、この際にまとめて買っておかねばならぬ。
足早にHome Centreへ直行すれば、あった! 欲しいと思っていたデスクがあった。ついでにベッドルームのドレッサーもいいものがあったので購入。
新しいショッピングモールの、じっくりと市場調査をしたいところであったが、なにしろ疲れているのに加えて時計は7時近くを指している。今夜は9時から新居カサブランカの役員会に出席せねばならないのだ。新人面接、といったところか。
なので、のんびりもしていられないのである。
帰路は案の定、渋滞。もちろんFabIndiaへ立ち寄ることなく、アパートメントに到着したのが午後8時半。大量の荷物を部屋に運び入れ、アルヴィンドと合流。
「オツカレサマ〜!」
と、にこやかに労をねぎらわれる。ほんと、疲れたよ。
やれやれ、これからこの荷物を開封し、それなりに家を整えて行くという作業が待っている。
予定通り、家電や家具は到着するだろうか。あれこれありそうだが、「平常心」を心がけ、怒りの沸点を高く高く設定して、今後数日間の怒濤に望みたいと思う。
我がことながら、健闘を祈る。