↑ホテルライフ最後のルームサーヴィスは久々にインド料理。美味なり。
ムンバイ新居は、土曜の午後現在、暮らし始めてもよい環境に整った。しかし今夜まではホテルに予約を入れている。長かったホテルライフも、明日で終わりだ。
今週の月曜に入居契約が成立し、火曜に家財道具の調達、水曜〜土曜で配達、そして片付け完了とは、なかなかに順調であった。
もちろん、すべてが揃っている訳ではない。
たとえばインターネット。電話回線は、本来バンガロールで使用しているAIRTELを利用したかったが、この界隈はMTNLという国営の会社が仕切っているということで、そこに依頼した。
「僕が子供のころは、電話回線を引くのに何カ月もかかってたんだよ。MTNLは作業が遅いだろうなあ」
と、懸念していたアルヴィンドであったが、取り合えず、昨日の段階でローカル電話回線だけは接続できた。尤も受ける方は、遠方からでも大丈夫だ。
さすが、国営の会社だけありフォーマットが封建的で恭しい。
さて懸案のインターネット回線であるが、これは来週に持ち越しそうだ。
しばらくインターネットに接続できないかもしれないが仕方なかろう。
来週早々にもバンガロールへ戻る予定であった。昨日、電話でユカコさんと話をしたのだが、電話回線を通してバンガロールの爽やかな風が伝わって来るようで、里心がついてしまった。
ムンバイはといえば、蒸し暑いのに加えて、街を行き交う人々の体臭に、さらには肉体労働者の汗が加わった力強い体臭に、敏感な自らの嗅覚を呪うような気持ちで、平和な家にいてさえも、ここ数日は出入りする肉体労働者の多いことに辛く、冷房よりも窓を開け放ちて天井のファンを全開にして、空気を入れ替えるばかりである。
写真では決して伝わらない、この匂い。どこを切り取っても混沌。ケイオスである。
とはいえ、今バンガロールに帰るのは賢明ではないだろう。来週金曜日まで、ムンバイで過ごすことにした。来週のうちにインテリア用品なども調達し、わたしがいない間のアルヴィンドのために「冷凍食づくり」などもしておこう。
● アルヴィンドのおつかいは、ガスの調達。
わたしがソファーの受け取りなどを待つ間、アルヴィンドにはガスシリンダーを手配してもらうことにした。インドでは都市ガスが通っていない。ガスの供給源はシリンダー入りのガスである。それを購入するのがなかなかに面倒。
バンガロールもそうだったが、本来は政府の機関にガス使用申請を出した上で、購入せねばならないらしい。が、そんな手続きを踏んでいると、何百年もかかるらしいので、人々はプライヴェートの商店でガスを買う。
コラバ地区の郵便局前にガス屋があるというので、アルヴィンドに買いに行ってもらった。と、数十分後に電話が鳴る。
「わざわざ汚いところを通って汚い店に行ったのに、ガスシリンダーの供給はやめたらしいから、今、別の店を教えてもらって、そこに向かっているところ。もう、いやになるよ。汚くて」
と、早くも挫折感をにじませている。
十数分後、再び電話が鳴る。
「ガスシリンダーはあったけど、初回購入時にはレンジも一緒に買わなきゃ売らないって言ってるけど、どうする?」
レンジはすでにキッチンに付いているが、買うしかないと言われれば、買うしかないのだろう。無駄だがしかたがない。
ガスが切れたときのために、シリンダーは2本手配してもらう。これらが無事に届けば、早速料理ができるというものだ。
果たしてソファーは予定通り午後3時ごろ届き、お掃除人も完璧に仕上げてくれ、まだまだ殺風景ではあるけれど、「住める部屋」に仕上がった。夕方6時頃にはガスシリンダーも届き、これで生活基盤が整った。
「今日は僕がガスシリンダーを買いに行ってよかったよ。みんなヒンディー語しか話せないから、美穂だったら無理だったと思うんだ」
よかった。彼にもなにか、家のことをやってもらえて。
●やたらとフレンドリーなムンバイの人々
ひとつひとつを書き上げられないほど、なぜか世間はフレンドリー。同じ階のジョイントファミリー一族の、今日は若くてかわいらしいお嬢さんと遭遇。家族が3つの家を行ったり来たりしている様子で、しばしば誰かに遭遇する。
早いところ、きちんと挨拶に行かなければ。
ところで今朝、エレベータで顔を合わせたインド人女性。わたしを見るなり、
「9階にも、コリアンの家族が住んでいて、わたしは英語を教えに行っているんですよ」
と、わたしをコリアンと断定した口調で話しかけて来る。エレベーターの動きがスローなため、9階に到達するまでにも、自己紹介をし合う時間はゆうにあった。
さて1時間ほどして、先ほどの彼女が我が家のベルを鳴らした。コリアンのご婦人にわたしのことを紹介したいから、9階まで来てくれないかと誘われる。
あいにく、家をあけられなかったので、名刺を数枚渡したところ、そのコリアン女性に渡してくれたようで、数時間後にコリアン女性から電話がかかってきた。さっそく我が家へお招きし、しばしおしゃべり。
早くも知り合いができて、なにやら本当に、暮らしやすいコミュニティのようである。
●二人でプチ・プジャーを執り行う
本日はとりあえず、自分たちでプチ・プジャー(儀礼)を行った。
ガスが届いたので、まずは牛乳をボイルしてキッチンの清めを行ったのだ。
移住当初のアパートメントでも、そして去年新居に移ったときにも行ったプジャーである。
やり方が正しいかどうかはさておき、ともあれ牛乳を力一杯沸騰させた。
そして飲んだ。
大家さんがあらかじめ置いておいてくれたガネイシャ像に手を合わせた。
大家さんはガネイシャ像を置いておくべきかどうか迷ったそうだが、置いておいてくれてよかった。
これもご縁であろう。
いよいよ明日からは、ここでの暮らしが始まる。
つつがなく、健やかなる日々を過せますように。