日曜日。今日のブランチは飲茶である。先日、訪れたROYAL CHINAのフォート本店へ予約を入れておいたのだった。自宅からタクシーで15分ほど。ジムカーナクラブのフィールドが広がる目前に、その店はあった。
一般のメニューもあるが、白菜と干しエビの炒め物を除き、今日もまた点心メニューから選ぶ。蒸し物、揚げ物、焼き物、いずれも素材から「清潔感」が漂っていて、本当においしい。本場香港のカントニーズに、かなり近い気がする。
「SHUN LEE(ニューヨーク時代の行きつけ)の点心よりもおいしいかもね」
「このポーク・パフ、最高!」
「ムンバイは、やっぱりバンガロールとは違うね」
「でも、食べ過ぎるのはよそうね」
などと言い合いながら、追加で一皿、もう一皿、と注文し、「今日は晩ご飯抜きにしよう」と言って、またもう一皿。
美味ランチを終え、ちょっと腹ごなしに歩こうと、レストランを出て界隈を散策する。平日は、人ごみ多く喧噪のビジネス街だが、日曜の今日はのんびりと静まり返っている。
写真右は、レストランに隣接する白亜の建築物。見ればドイチェバンク(ドイツ銀行)。大げさな構えの銀行である。20世紀前半にタタ財閥が建てたビルとかで、創始者のジャムセジ・タタ他界後、ドイチェバンクに売られたとのこと。写真左は、ドイチェバンクに隣接する映画館。映画館ばかりは日曜の今日、賑わいを見せている。
と、道を渡れば途端に汚れた感じの歩道。木漏れ日のもと、ヤギが3頭、たたずんでいるもをかし。なにゆえ、その小さなブロックの「お立ち台」にひょろりと屹立するのか茶色いブチのヤギよ。なにゆえ、前脚をバスケットに突っ込んで立ち尽くすのか黒いヤギよ。
普段なら、汚い街を歩きたがらない夫であるが、今日は「心に余裕」があるらしく、ヤギを見て大笑いしながら写真を撮るわたしを、冷めた目で一瞥したりはしない。たいてい、忌々し気な顔をされるのが常なのだが。
ムンバイのビジネス街、目抜き通りであるMGロードを歩く。交通量の少ない日曜は、サトウキビジュース屋のおじさんたちが、平日に備えて、サトウキビを適当なサイズに切るなどの下準備をしているようである。なにやら呑気である。
右の写真は、海賊版DVDを物色するアルヴィンド。
先日、わたしが一人で映画館に見に行ったところの "SEX AND THE CITY" のDVDもある。
海賊版は、売るも買うも、基本は違法である。インドで違法かどうかは、よくわからん。よくわからんが、取りあえず、よいことではないので、買ったかどうかは書かないが、夫は興味を示している。
「クオリティはどうなの? 画像や音は、どう?」
「サー、ノープロブレム。100%ギャランティー」
問題ない。100%保証する。更には、問題があったら返品してくれとまで言い切る。ここまで返品しに来る方が、車代がかかるというものである。
と、店の兄さん、急にアルヴィンドの耳元で、なにやら囁きはじめる。アルヴィンドは聞き取れず、「え? なに?!」と何度も聞き直している。
「セクシャルなDVDもあるよって、言ってるんでしょ、きっと」
とわたしが言うと、苦笑いの兄さん。なんだそういうことか、と納得して笑うアルヴィンド。間抜けな男たちの光景。
途中、FABINDIAに立ち寄り、海賊版ではないちゃんとしたDVDやCDを売っている専門店に立ち寄りしばし過ごす。十分に腹ごなしをして、帰路へ就いた。
灰色の雲間から太陽の光がこぼれ落ち、あたりが黄金色に見える夕暮れ時、ワインを飲みつつ、DVDを鑑賞する。ムンバイで過ごす週末も、こうして少しずつ、日常の中に溶け込み慣れていくようである。
夜には、デリーの義父ロメイシュから電話。遊びにおいでと誘っていたのだが、さっそく来月、義継母ウマと二人でやってくるようだ。
わたしがムンバイに滞在している間の十日余り、彼らも滞在するとのこと。十日など、長いようで、短いのだ。このごろはもう、殊更にそう思う。
同じインドに暮らしていても、そう頻繁に会えるわけではないロメイシュパパやウマとも、会えるときに会っておきたい、一緒に過ごせるときに過ごしておきたいと、このごろはそう思うだ。
みんなでまた、おいしいものでも食べにいこう。