朝、目覚める。シャワーの前に、体重計にのる。
ん? ……ん??
38キロ???
ひと晩のうちに激やせ?!! そんなわけがない。
体重計が、壊れているのだ。
ああぁぁぁ。
このデジタル体重計。数カ月前、家電店の一隅で見つけて購入したのだった。中国製というのが気になったが、ここでは精密機械を得意とする国で製造された体重計を入手するのは困難だ。
体重計が精密機械かどうかは別として、バンガロール宅には米国で購入した日本製の体重計がある。しかし、ムンバイ在住が長いとあっては、ムンバイ宅にも必要だ。
今から遡ること12年前の米国移住当初、わたしは体重計を持っていなかった。ついでに服もさほどもっておらず、だから大きいサイズがたっぷりある米国で、楽々ショッピングを楽しんでいた。そして気がついたら、7キロほども太っていた。
そんな苦い経験から、こまめな体重測定をしつつ、自分を律する暮らしをせねばと思うようになった。無論、こまめに測定しても、増え続ける体重を止めるのは難しいが、ないよりは、ましである。
で、本日の体重38キロ。
実はこの体重計、買ったばかりだというのに、数日前、壊れてしまった(数字が表示されなくなった)ので、昨日、購入した家電店で取り替えてもらったばかりだった。
にもかかわらず、夕べは正しい数値を示していたはずの体重計が、ひと晩のうちに壊れてしまったようである。ああもう。どうしてこうも、面倒なことが次々と発生するのだろう。
このサイトを読んでいる方々は、我がインド生活がなんと豊かで充実したものであろうと想像されるに違いない。確かに豊かで充実した側面もあるが、それと同時進行で「恒常的なトラブル」は尽きない。
尽きないのでいちいちここには書き留めないだけで、実際には毎日毎日、感情の起伏激しく、交渉激しく、見事なまでに、さまざまが発生している。二都市生活なので、それが2倍である。
いや、遠隔操作の不便を思えば、2倍どころか、3倍、4倍かもしれん。
なぜ、かようなことを敢えて記しているかと言えば、敢えて記さねばならない出来事が起こるからで、その詳細についてはしかし、今、記すのは面倒なので、後日に譲るとする。
さて、体重計である。下手にデジタルなのがいけないのだ。もうこの商品はいらん。なんとか返品してもらおうと、本日アーユルヴェーダの診療所へ行った帰路、全身油ギッシュなまま、再び家電店へ赴いたのだった。
店のマネージャーらしきおじさんに、事情を説明する。
説明するだけでは説得力がないので、体重計にのってみればわかると促す。おじさん、靴を脱いでのる。42キロ。おじさん、首を傾げる。いつのまにか、2、3人のスタッフが集まっている。みな興味深そうに数字を覗き込む。
一人が靴を脱ぎ、体重計にのる。40キロ。おおぅ。一同、どよめく。
もう一人が靴を脱ぎ、体重計にのる。43キロ。おおぅ。一同、どよめく。
さらにもう一人が靴を脱ぎ、体重計にのる。39キロ。おおぅ。一同、どよめく。
さらにもう一人が靴を脱ぎ……
だから、もう、十分やろ!!
いったい何人分、検証すれば気が済むんだという話だ。
っていうか、この狭い店舗で、いったい何人が油を売っている、いや家電を売っているのだ。この有り余るほどの人手。ああ、もう、どこまでも、どこまでも、インドだ。
この男衆と自分の体重に、あまり差がないことに愕然としつつも、気を取り直して交渉し、返金の手続きをお願いした。近々小切手が郵送されてくるらしい。つつがなく届くとは決して思わないが、気長に待とうと思う。
気長に待とうで思い出したが、仰天ライフのDVD。インド国内のムンバイ送付分は3日後に届いたが、バンガロールには2週間かかった。その他、ニューヨーク、パリ、東京など世界各地へ送ったものについては、まだ誰からも届きましたとの連絡がない。
かれこれ3週間経ってしまった。
あとどれくらいかかるのか、そもそも届くのかさえ、もう誰にもわからない。
ただ、届くことを祈るばかりである。
お願い、届いて。