十日間の出張を終え、土曜の夜、ムンバイの自宅に着いた。3週間ぶりのムンバイは、思いのほか暑く、これがセカンドサマーというものかと肌で実感する。今、自分がどの季節にいるのか、よくわからないインドでの日々だ。
二度目のチェンナイ、そして初めてのコルカタ。思っていたよりも遥かに、それはビジネスというよりはプレジャーと思えるほどの、楽しみの多い仕事だった。
新しい人々と出会い。未知なる光景との遭遇。宝飾品やテキスタイルなど、美しいものとの対面。
途中でさっぱりとした料理が食べたくなったが、しかし地方ごとに特色のあるインド料理を日々味わい、チェンナイ&コルカタのグルメガイドでも作れる勢いであった。
クライアントの方々が、インドに対して好意的で、インドの食や文化に好奇心を持ち、積極的に試そう、見ようとしてくれたことが、旅をより豊かにしてくれたとも感じた。
同行しているわたしの方が、インド料理に辟易し、朝はフルーツとオートミールを食べているというのに、彼女たちは朝からドサやカレーなどインド料理を味わい、チャイを飲み、インドの味覚を堪能している。その強靭な胃袋にも感服した。
お二人とはこれまで3、4回、インド出張をともにしているが、特段の不調を訴えられたことはなく、それもまた頼もしいことであった。
土曜の朝、午前中の便に乗るお二人をホテルから見送った後、午後の便でコルカタを発つわたしは、チェックアウトの前に昨日訪れたニューマーケットへ足を運んだ。
焼きたてのガーリックブレッドとフルーツケーキ、そしてチョコレートブラウニーを購入した。
フルーツケーキはどっしりと重く、とてもケーキだとは思えない重量感だ。
さて、ホテルをチェックアウトしたあと、空港を目指す。
車窓からの景色を眺めながら、この街にはまた必ず訪れようとの思いを新たにする。
英国統治時代の首都であったこの地には、歴史的な建造物が点在している。
たとえば、ホテルの目の前には、ヴィクトリア・メモリアルという白大理石の優美な建築物があった。
これは英国女王の記念館で、内部は博物館になっている。
セントポール大聖堂やジャイナ寺院も興味深い。タゴールの生家や、オールドバザールなどにも行ってみたい。
市街を抜け、空港に至る郊外は、近代的なビルディングの建築ラッシュだ。ショッピングモールやビジネスコンプレックス、高級アパートメントビルディング群などが、広大な大地に続々と誕生している。
そもそも農業重視の共産主義勢力が牛耳る西ベンガル州は、開発が遅れていると聞いていた。しかし、わたしの目には、少なくともバンガロールよりも計画的に着実に、都市計画が進められているよう見受けられた。
今回の出張に際して、綴っておきたい所感は尽きぬ。ともあれ、改めて書くが「百聞は一見にしかず」。自分で体験したことをまずは寄る辺に、今後も仕事をしていきたいと思った。
インドで暮らす日々は、「日々是フィールドワーク(実地調査)」である。
さて、コルカタからムンバイまでは2時間半を超えるフライト。夫からもらっていたアップグレード券を利用して、ビジネスクラスにかえてもらった。
いい旅だったとはいえ、それなりに疲労している。機内ではゆっくり休みたい。食事もとらずに寝てしまおうと思ったが、食欲は健在。食べ過ぎてげんなりしていたはずなのに、インド料理を選んでしまう。
機内では、下手にサンドイッチなどを頼むより、インド料理の方が無難なのだ。
思いがけず、美味なるスープ。そしてメインはマトンとホウレンソウカレー(煮込み)とダル(豆の煮込み)。見た目はいまひとつだが、かなりおいしく、平らげてしまった。
ジェットエアウェイズ、まだしばらくは、機内食がコスト削減の対象にはならないようである。
予定よりも30分ほど遅れて到着し、タクシーに乗り込む。と、空港周辺から南ムンバイに入るまで、渋滞がひどい。今日はターバン姿でおなじみのシク教徒のお祭りらしく、延々と続く人波や櫓に遭遇。自宅に到着するまで2時間もかかってしまった。
お祭りシーズンのインド。今年はバンガロールだけでなく、ムンバイ、チェンナイ、コルカタと四都市のお祭り気分を体験して、インドの人々がいかに祭りに情熱を注ぐかを目の当たりにした。
来週は、そのお祭りシーズンのクライマックス「ディワリ」である。また、世間が花火と爆竹の轟音に包まれることだろう。
早速荷物をほどいて、お土産を渡す。
好物のスイーツに大喜びだ。
わたしの不在中、夫は二度、デリー出張に赴き、実家に数泊したようである。
そのたびに、義父ロメイシュが料理人ケサールの美味北インド家庭料理を持たせてくれたようで、冷凍庫にマトンのカレーが残っていた。
しかし、今夜はもう、インド料理はいい。久々に日本米を炊き、インスタントみそ汁を作り、あっさりと簡単な夕食を口にして、ようやく心身がほっとした。
我がソウルフードは日本米だな。と、改めて思う夜。
明日はご近所のTAJ PRESIDENTのビューティーサロンで、ヘッド&フットマッサージでもしてもらい、旅の疲れを癒そうと思う。