成田空港の売店で、ランチを買う。成田から福岡へのフライトはランチタイムにかかるのだが、インドのように機内食が出るわけではないから、持ち込みである。
並んでいるおむすびも、巻き寿司も、いなり寿司も、なぜか加工されすぎている様子で、おいしそうにはみえない。日本を離れて以来、冷凍食品や加工食品を食べる機会が激減した。インドに移ってからはよりいっそう。
丁寧に包装された菓子や名産の食品類も、まるで飾り物のような美しさで、でも、以前は「おいしそう!」と思えたものが、おいしそうに見えない。
ああ、いかん。のっけから、シニカルではないか。
それから流行っているとの噂を耳にしていた「伊右衛門」を買った。
ボトルがとても持ちやすく、キャップがほどよい握力であけられるところが「日本的」だと感じた。
どちらも、おいしかった。
機内で食事は出ないが、ジュース類とスープが出る。
スープ。
何度か飲んだことがあったが、機内販売のチラシに、「ANAオリジナル機内スープを使ったANAとびっきりビーフカレー」が紹介されていた。
ビーフコンソメスープを用いた、ビーフカレー。
インド人も真っ青である。
もしもインド伝来の料理をカレーと呼ぶならば、それは「カレー」ではなく、日本料理だ。
新聞や週刊誌を開けば、かなり重いニュースが目につく。不景気。ひき逃げ。そしてなぜだか「泰葉」関係。週刊朝日だったか、異なるライターによる「泰葉」に関するコラムが3つもあるのにも驚いた。
彼女のニュースはインターネットを通しても否応なく入って来ていたが、そこまで深入りするべきことなのか、不思議でならない。
ああ、いかん。どうしても、シニカルだ。この、日本に対する屈折しているとも言うべく愛憎入り乱れる我が感情。なじむまで、数日、時間がかかりそうだ。
飛行機は、かなり風にあおられたものの、無事に福岡空港に到着。なんでも今日から急に冷え込んで、冬のような天候だ。
出発前から「寒いよ」「寒いよ」「京都はもっと寒いよ」とのコメントが届き、「インドと比べればもちろん寒いが、ニューヨークの寒さを思えば大したことない」と自分を鼓舞しつつ、しかし防寒のための衣類を、早速買わなければとも思う。
さて、昨年3カ月をインドで過ごした母とは、1年数カ月ぶりの再会だ。とても元気で安心した。
夜には仕事を終えた妹も立ち寄った。妹とは2年ぶりだ。インド土産を広げて盛り上がる。どれも気に入ってもらえてよかった。
わたしの衣類をして、妹から、
「インド臭い」
とも言われる。わかっている。わたしに、衣類に、スーツケースに、しっかりとついてくる「インドの匂い」。「におい」ではなく「くさい」とは困ったものだ。数日で、とれるだろうか。
それとも、染み付いているだろうか。
さて、現在すでに深夜。今日はまだ、違和感ばかりの日本であるが、明日からは疲れをとって、もっとポジティヴにコメントしたいと思う。