先週の火曜から木曜にかけて行われた我が家の庭の、芝生植え替え作業。作業を見届けることなく、途中でムンバイへ発ってしまったことは先日記した。
が、結論からいえば、きれいに、ふさふさの芝生が、植えられていた。
先日の「耕され、掘り起こされていた写真」を見た福岡の母が、
「あんなに掘り起こして、家が傾くんじゃないかしらって心配したわよ」
と、電話にて。
「傾くわけ、ないやろ!」
という話である。が、どうにも新しい芝生が気になる様子なので、ここに写真をあれこれと載せておこうと思う。
わたしが家を出て直後、芝生が届いたらしく、その搬入がまず、たいへんだったらしい。我が家の庭は、外につながっていないため、一旦、家の中を通過せねばならない。
メイドのプレシラが「通路」をきちんと確保してくれていたようだが、マットもなく、雨を含んだ芝生はボロボロと赤土を落としながら床を汚し、そらもう、後始末がたいへんだったようだ。
インドの床は一般的に大理石が用いられるが、大理石は色のついた液体を落とすと、たちまち吸い込む。放置していたら取れなくなるので、直ちに拭き取らねばならない。
インド駐在員の方々、注意されたし。
と、人に注意を促している場合ではなかった。プレシラは、その事情を知らず、最終日に掃除をしたらしい。
インドの大理石は白っぽいものが多いが、幸い我が家はイタリアの大理石で温かみのある色合い。従っては、言われなければ気づかないのだが、しかし、「通路」周辺が、間違いなく、ほのかに暖色に染まっていた。
時期外れの雨で搬入作業は大変だったが、耕す作業は速やかに進み、加えて芝生が土になじむのも早そうだ。
などと呑気に書いているが、プレシラはわたしの不在中、身体障害者の労働者を手伝うことにもなり、二重にたいへんだったらしい。
先日も記したが、一人は片足の甲から先がなく、一人は耳は聞こえるがしゃべれず、一人は病名は不明だが、身体が小さく、肌がかさかさで、目が非常に細く、成長不良疾患のようである。
その小さい人は、コミュニケーションを取れるし、それなりに動けるのだが、そもそもの力が弱そうではあった。休憩も多かった。
普通なら、「厳しい現場監督」の我で、うろうろと現場を徘徊しては、さぼっている労働者に圧力をかける視線を送るのであるが、彼らに対しては、そうもいかず。
時間制で働いているわけではないのだから、彼らのペースでやってもらう心づもりではあった。が、小さい人は暗くなると目が見えなくなるらしく、プレシラは彼の面倒を見るのがたいへんだったらしい。
「マダム。あのナーサリーは、研修期間は給料が出ないんだそうです。宿泊施設と食事が供給されるだけです。彼に聞いたら、ろくなものを食べていないようだったので、かわいそうになって、食事を買って来て上げました。
「マダム。でも、脚の悪い人は、すでに独立していて、いくつもクライアントを持っているみたいです。1カ月に10,000ルピーを得ているそうですよ」
などと、なにかと参考になる情報を教えてくれる。
庭師(マリと呼ばれる)のカーストは決して高くはなく、給与も低い部類に入るが、しかし、大企業オフィスの警備員をしているプレシラの夫が8,000ルピーに満たない給与である。
「ずいぶん、がんばっているみたいです」と感心している。
ナーサリーは数カ月に亘って、肉体労働ができる身体障害者を教育したあと、就職斡旋を手伝う仕組みである。
本来であれば、貧しい家庭に生まれた「小さな人」のような境遇の人は、インドではたちまち物乞いとなってしまう可能性が高い。
こうして、彼らに職業訓練を与えるNGOがあるだけでも、心強い。
なお、このナーサリーを運営する組織、The Association of People with Disabilityはじめ、ナーサリーについての記録は、下記『キレイだったブログ』に残している。改めて。
■身体障害者支援のナーサリーでハーブを (←Click!)
さて、気になるであろう値段を、参考までに記しておく。今回は最初からこのナーサリーを使う予定だったので、バンガロール随一の植物園、ラル・バーグ界隈のナーサリーの相場を確認してはいない。
購入したのはMexican Grassと呼ばれる芝生。ふさふさとしているので「カーペット芝生」とも呼ばれている。
これが1sqftあたり20ルピー。今回、庭の約3分の1である1,000sqft分を購入した。つまり20,000ルピー。これに土や肥料、輸送費、そして労働費を加えて15,000ルピー。合計35,000ルピー。
当初、見積もりをとる前に、ナーサリーの人から「1sqftあたり、すべて込みで30〜40ルピーが相場」と言われていたので、これは妥当な数字であろう。
これは、先進国に比すればもちろん安いが、インドにしてはどうなのかは、よくわからない。が、この庭の変化を見れば、手頃であったと認識している。
日陰で芝生が育たないエリア。ここは以前、あれこれと植物をランダムに植えた空間だったのだが、すべて一旦、引き抜いて、プチ遊歩道を作り、そこに植え替えた。
なお、日陰周辺、つまり芝生植え替え以外の作業は、我が家の庭師とわたしとで行った。
それはそうと、バンガロールの土は、赤い。多分、デカン高原全体が、赤い土で覆われているのかもしれない。そういえば、アンダルシアの大地も赤かった。
左側にちらっと見えているタイルの部分は、洗濯物干しのコーナーだ。
テーブルセットは芝生が育つまで、隅の木陰に配置。これはこれで、いい感じではある。なお、芝生の植えをゴロゴロとしたいところだが、しっかり根付くまで1カ月は立ち入り最低限にすべきらしい。
すでに裸足でうろうろしてしまったが。
夫の要望通り、セントラルパークのシープメドウの雰囲気満点である。規模はあまりにも、小さいけれど。
夫曰く、
「ハンモックもあるといいなあ」
はいはい。検討しておきます。わたしはデッキチェアーを買おうと思う。
ハイビスカスなどは、丈が伸びていたので、思いっきりバサバサと切り落としたこともあり、今、庭には花が少ない。が、週末には蓮華が開いてくれてうれしい。
開いたり閉じたりを4日間、繰り返して、終わる。
ベッドルームのバルコニーから見下ろした様子。隣の敷地の樹木がせり出していて、豊かな緑の借景なのだ。朝な夕なに鳥たちも訪れる。
芽吹いたばかりの瑞々しいインド菩提樹(PEOPLE TREE)の枝も。2月3月あたりは落ち葉が激しかったのだが、今は葉のゆらぎが美しい。
ところで下の写真。これは2006年2月。家を購入した直後に撮影した写真だ。まだ内装工事も、庭作りも始めていなかったころ。その下が今の庭。
この4年の間に、日なたに植えられたヤシの木がもう、どれだけ成長したか。
左下の写真はやはり、4年前の様子。日陰のあたりの植え込みを適当にデザイン。ナーサリーの人に植えてもらっている様子。
内装工事でいっぱいいっぱいだったので、庭は二の次であった。
とはいえ、自らレンガを購入して、レイアウトするなど、それなりに張り切った。
これは内装工事を終えたあと。
適当に600個のレンガを注文し、自分で庭に埋めていった。左下の写真がそれだ。
ちなみに以前も書いたが、インドでは、雇い主が自ら土に触れたりなどの労働をすることは、まずない。それは階級差の問題もあるし、職業の歴然たる差別化でもある。
だが、わたしは日本人だということで割り切って、土を触る。なにしろ、自分で作業をするのが好きなので。
が、例えば庭師を率いて訪れるナーサリーのマネージャー。彼は四六時中、付き添ってはいるものの、決して土に触ろうとしない。
わたしが自分であれこれと指示しながら土に触れているのを見て、
「マダムは、ご自分でなさるのがお好きなのですね」
と奇妙に気を遣った口調でいう。が、彼自身は、決して、手を出さず、口を出すだけである。
左上は4年前の図。右上の写真は、最近のもの。緑が生い茂り、レンガが古びていい色合いになっている。このあたりを「遊歩道」に変えたのだ。
庭を巡り、緑について、樹木について、自然について、あれこれと枝葉の広がる話を綴りたい気分なのであるが、今日のところはこのへんにしておく。
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