モンスーンのころ、ことに夕暮れどきの、空が麗しい。モノトーンの空。雲間からこぼれる白い光。薄暮の空はどこかまだ、グレイの先に、ほのかに青空が残っていて、それが透き通るように見えるあたりがまた。
肩こりとも、腰痛とも違う。
さっそくアーユルヴェーダの診療所を訪れたところ、コンピュータに向かっているときの、姿勢などを指摘された。
姿勢は悪い方ではないのだが、思えば利き手の負担は大きい。
ホームページを作るために、『キレイだったブログ』から過去のデータを移植するなどしているうち、集中しすぎていたようだ。
昔、『muse new york』を制作してる時もそうだった。
文章を書くときよりも、地図などのグラフィックを制作するときのほうが、もちろんマウスを多用し、画面を凝視してしまう。
気がつけば、息を詰めている。
瞬きを忘れている。
コンピュータに向かう方々。集中すればするほど、かような事態に陥りやすいので、数分に一度は身体を伸ばしたり、15分か20分に一度は席を立ってうろうろすることがお勧めです。
ちなみに、診療所では1週間の集中トリートメントを勧められた。主には右側を集中的に、背中をオイルマッサージのあと、薬草入りの温められたタンポで、患部を叩いてもらう。
毎日は無理なので、1日おきで訪れているのだが、今はほとんど治った。アーユルヴェーダの治療を気軽に受けられる境遇にあることを、実にありがたいことだと思う。
ここしばらくの雨のせいだろうか。ヤシの木が異様に育ち盛りだ。細くて頼りなかった木が、今や恐ろしいほど、どっしりと。
ここ数週間のうちに、直径が軽く10センチは拡大している。というのも、まっすぐに生えていたはずの根元のスパイダーリリーが、踏みつぶされているからだ。
という、スパイダーリリーの悲鳴が聞こえてきそうである。
しかし、この状態になっても、天に向けて蕾をつけているところ、大した根性だ。
ところで、このヤシの木の根元の形状が、かなり恐ろしい。
樹皮から根が溢れ出ているのだ。見ていると、ぞわぞわとする。
そんなこんなで、根元のスパイダーリリーには、まんべんなく育って欲しいのだが、もう、だめかもしれない。
完全に踏みつぶされる日は、そう遠くないとみた。
興味のある方、ゾワッとするのを覚悟で、右の写真をクリックして拡大してご覧あれ。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』に出てくる、ベロンベロンの海の妖怪を思わせる。うぅぅぅ。
バンガロールにもついにはモンスーンが到来し、ときに激しい雨が降る。
雨だけでなく、ここ数日は風も強い。
6つあった蕾のうち、一つは落伍してしまい、今は5つ。
これらには、すくすくと育って欲しいものである。
せめて雨にはやられて欲しくないと、傘の下に運び込んだ次第。
ところで、先日予測していた開花日。あれはもう、大間違いであった。
月下美人には「新月の夜に咲く」とか、「一年に一度しか咲かない」とか、いろんな噂が飛び交っているが、どれも定かではないようだ。
去年、新月の翌々日に開花したので、それに沿って予測していたのだが、どうにも今週末ではない。どうやら来週末の開花のようだ。
なんてこったい。
というのも、来週の金曜&土曜の夜は、外出の用事が入っているのである。
金曜は、夫が企画したイヴェントに夫婦同伴で参加。土曜日は、バンガロール日本人会総会。
「もしも金曜に開花しそうだったら、一人で行ってくれる?」
と夫に言ったところ、
「なに、ばかなこと言ってるの? 花と僕の企画のパーティと、どっちが大事なんだ?!」
と叱られた。
「花。」
とは、さすがに答えられんかった。
いっそ鉢植えをパーティ会場に持参して、みんなで観賞しようかしらん。むしろ、ワンダフルな企画かも。しかしそうなると、我が家での鑑賞会ができなくなってしまう……。嗚呼、悩ましい!!
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去年の、クールなほどに無関心だった自分がむしろ、懐かしい。
蕾が大きくなるのを何気なく見守り、
「いつ咲くんだろうね〜」
とお気楽に構えていた日々。特に注意を払うこともなく月日は流れ。ある夜、しかも9時ごろに庭に出て、
「わ! 咲いてる!」
と気がついて、その麗しさに心を奪われたのだった。
あの、年に一度の、一夜限りの美しき開花を見たら、そらもう、「もう一度見たい」と切望するものである。
なんとか、来週の金曜、土曜は避けて欲しいと仏像に祈る日々である。