今回は、ボストン滞在を挟んで実質7泊8日のニューヨーク滞在であった。いつもよりは短く、悪天候の日も多く、決してアクティヴに動き回ったわけではないが、もう、十分だ、という気分だった。
米国永住権(グリーンカード)を保持するための旅ならば、ニューヨークに限らず、米国のどの都市でもいいのだが、わたしたちが好きな場所であり、夫の仕事の関係上、最も重要な場所であるニューヨークに滞在するのは、毎年恒例のこととなってきた。
しかし、今回ボストンに滞在し、その快適さを実感。来年はボストンをメインにしてもいいかもしれない、という話も出ている。
などと言いつつも、なぜか恋しくなるニューヨーク。底知れぬ魅力がある街なのだ。
The Barnes & Noble bookstore in front of Lincoln Center where Arvind and I met 21 years ago, closed down a few years ago. The prosperity of the large bookstore chain that had expanded its stores nationwide was short, and nowadays it gives way to the online bookshop. One week ago, Amazon's bookstore opened in Time Warner Building. That's pretty odd.
Anyway, today I went to Kinokuniya book shop in Midtown. Previously Japanese books were conspicuous, but now English books of all genres are available including literature, art, fashion, cooking, culture, and Japanese animation. Recently the number of bookstores on the street corner has decreased, the presence of this bookstore seemed precious and unique.
21年前に、わたしと夫が出会ったリンカーンセンター前のバーンズ&ノーブル書店は、数年前に閉鎖した。全国に店舗を拡大していた大型書店チェーンの繁栄は短く、昨今は、オンラインブックショップに地位を譲っている。そんな中、先週、コロンバスサークルのタイムワーナービルディングにアマゾンの書店がオープンした。結構、奇妙だ。ちなみにレヴューで4つ星以上を獲得している書籍が販売されているらしい。
今日はミッドタウンの紀伊國屋書店へ赴いた。以前は日本の書籍が中心だったが、今は文学をはじめ、アートやファッション、料理、文化、そして日本のアニメ本など、あらゆるジャンルの英語書籍が取り揃えられている。Eコマースの普及で、街角に書店が減った昨今。この書店の存在は、貴重でユニークに思われた。
ホテルのチェックアウトをすませ、JFK空港へ向かおうとしたところ、ブリティッシュ・エアウェイズからメール。ロンドン行きのフライトが3時間も遅れるとのこと。
1週間ほど前、システムの不具合で大規模障害が発生、数日間に渡り多くのフライトがキャンセル、遅延のトラブルに巻き込まれていたがゆえ、その余韻かもしれない。
仕方がなく、セントラルパークを散歩することに。最終日は見事に空は晴れ渡り、格別に心地よかった。
お気に入りのシープメドウへ赴き、草の上に横たわる。心地よい。
ふと、2002年に出版された拙著『街の灯』に記した一節が思い浮かぶ。
「セントラルパークの草に寝ころびて 空に吸われし 三十五の心」
石川啄木の、「不来方の お城の草に 寝ころびて 空に吸われし 十五の心」をひねった短歌である。
まだ35歳だった。
ろくに英語も話せず、だから語学留学のために訪れたニューヨークで、現地採用で働き始めた。その1年後、出版・広告会社Muse Publishing, Inc.を起業。
就労ヴィザ(H1B)を自給自足して独立。足を棒のようにして営業し、仕事を得、そしてやがて、季刊誌muse new york(フリーペーパー)を自費出版した。
取材、写真撮影、執筆、デザイン、広告営業に印刷手配、車での配達、すべてを概ね一人でやっていた。マンハッタン及びニュージャージーなど周辺地域にある日本料理店や日系スーパーマーケット、美容院にクリニックなど何十軒もの。
1万部もの冊子が詰め込まれた、重たいダンボールを、レンタカーにいくつも詰め込んで、東奔西走した。
フリーペーパーは何の利益にもならない、仕事の傍らの「自己実現」のための、仕事だった。にもかかわらず、それをまあよくも、わずか2年あまりだったとはいえ、続けていたものだと思う。我ながら、本当にタフだった。
30代。十分に、青春だった。
15年後のわたしはまた、今のわたしを振り返って、「50代の自分もまた、十分に青春だった」などと、回顧するかもしれない。
Muse Publishing, Inc.の名を引き継いだ、Muse Creation。こちらは5月末で5周年を迎えた。
30代のころは、あくまでも自分のためだけに、だったけれど、今のわたしは、自分のため、そして周囲のためにも、自分なりに、誠意をもって、活動をしているつもりだ。
しかし、他者が関わるとなると、自分のためだけ、のときとは、勝手が違う。
試行錯誤を重ねながらの、決して順風満帆と言い切れはしない、しかしこの5年の経験は、本当に貴重だ。この歳になってようやく、「人との関わり」について、真摯に向き合い、学ばされることの多く。
ミューズ・クリエイションの5周年にあたっては、また後日、言葉を整理しようと思う。