初めてここで年末を過ごしたのは、2年に亘るムンバイーバンガロールの二都市生活を終え、ムンバイから戻った直後、2009年のことだった。あれから10年。ここで1年を締めくくることは、我々夫婦にとって、大切な「年中行事」となった。
「酒なし肉なし宴なし」の、あまりにも健全すぎる環境に身を置くことに、抵抗がなかったわけではない。しかし、今となっては心身を調えるに不可欠で、まさに「ただいま」と呟かずにはいられない、里帰り先のようでもある。
いつものように、ドクター・マンモハンのコンサルテーションを受ける。一年を報告しながら、自らの身体だけではない、心の動きを反芻する。
滞在中のプログラムは、のんびりとしているようで、実はあれこれとやることがあり、退屈する暇はない。
朝、まだ日が昇らぬ6時ごろに起床し、緑豊かな庭を歩く。そしてヨガのクラス。朝食後、食事が消化したころに朝のオイル・トリートメント受ける。昼、呼吸法(プラナヤマ)のクラスを受けたあと、ランチ。午後は読書や書き物などをして過ごしたあと、瞑想(メディテーション)のクラスを受け、その後、夕方のトリートメント。7時ごろに夕食をとり、午後10時ごろまでには就寝というサイクルだ。
ちなみに、日々、ヘルシーなヴェジタリアン料理を味わうのだが、どれもおいしいがゆえに食べ過ぎて、滞在中は痩せることがない。うっかりすると太る。昨年は思い切って「そこそこ本気なダイエットコース」を選択した。しかし、地味な料理だった割に、大して体重は減らなかったので、今年は「通常コース」に戻ることにした。
過去10年のうち、現在は「最デブ状態」ではあるが、代謝の悪いお年頃につき、減量よりもエクササイズを重視しようと思う。
朝のトリートメントを受け、ランチを食べたら、猛烈な睡魔に襲われた。瞑想のクラスに出ることなく、ベッドに横たわる。目覚めれば、午後のトリートメントの時間。
読もうと思って持参した本を読みきることなく、毎年、あっというまの1週間を過ごす。そんな時間の過ごし方をもったいなく思った時期もあったが、多分、それは、それでいい。
ここでは、「素」で過ごすのが一番だ。
素が外交的な夫は、早くも出会う人たちと自己紹介をし合い、楽しげに語り合っている。
素が内向的な妻は、早くも「貝」の如く口を閉ざし、目に見えない「繭」のなかで、極力、無口で過ごしたい。
自分を追い立てることなく。自分が過ごしたいように、過ごそう。